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\かやぶきシンポジウム2025参加!/(2025.2.14)

2025年2月14日(金)、近畿大学工学部と東広島市が主催の「かやぶきシンポジウム2025」に参加しました。これは茅葺きコモンプロジェクトの一環で、地域課題の解決を目指す東広島市・近畿大学Town&Gown(タウン・アンド・ガウン)構想の新たな取り組みだそうです。
シンポジウムの目的は、ユネスコ無形文化遺産である「茅葺き技術」を次世代に継承し、茅葺き古民家を保存再生するため、若手の茅葺き職人を招聘し、茅葺きのこれまでとこれからを語り合うことで、案内があった瞬間、NPOスタッフ3名専門員1名ですぐさま参加を決めました。
最初の上野弥智代さん(日本茅葺文化協会事務局長)からは、日本の茅葺きと草原のこと。
日本茅葺文化協会のスタートや、取り組みも改めて聞くことができ、特に各地で実施されている茅葺フォーラムのタイトルを見ると、その時期ごとのキーワードから潮流が見えてきました。
全国の茅場や草原の状況、国際的な情報なども有益で面白いお話しでした。
オランダの職人のコメントの紹介で「日本の茅葺きはエコとユイから学ぶものが大きい」という言葉がとても印象的でした。
次は、東広島市地域おこし協力隊の櫻井さんから話題提供。大学生の頃から茅葺きに魅せられた櫻井さんが、地元(志和エリア)で広げてきた活動をたっぷり教えてもらいました。「藝州流」という茅葺き手法の紹介があり、櫻井さんの今後の展望とも関連していますが、足元の地域に加え、広島県内全体で茅に関わるネットワークを作ることで茅の魅力や活用に取り組んでいこう!という呼びかけがとてもよかったです。2月も茅刈りが続くようなので、ぜひ参加してみようと思います。
そして、沖元太一さん(アースビルディング)からは、茅葺きのこれまでとこれからというタイトルでボリュームある発表がありました。社名は訳すると「地球人具」となるそうです。「地球」という規模で人の技術を継承し、素材に対して敬意を払う姿勢が感じられました。深い!
東日本大震災でのエピソードや、エコサイクルの考え方、世界や日本の茅葺き建築の紹介などを聞いているとあっという間に時間が経ちました。
未来へのヒントは、茅葺きのように過去や足元になるのではないか、という投げかけにも頷いている参加者が多かったように思います。
最後の茅葺談義では、企画者の市川先生(近畿大学)の進行で、会場とのやりとりが始まり、全体でつくっていくような時間になりました。
会場には100名近い参加者がおり、茅葺きに住む人、茅葺きをする人、茅に関心がある人、これから関わってみたい人などなどがいました。
指名があったお一人は、熊野町で茅葺きに住まわれている方でした。ご自身のおうちの維持のことに加え、近くの熊野第二小学校の水車小屋の茅葺き葺き替えについての紹介がありました。
茅葺きにこめられた想い、そしてつないでいきたい気持ちをとつとつとお話しされ、来場されていた校長先生にマイクが渡り、葺き替えについてのバトンを受け取った経緯などをお話しされました。
実は、この小学校の葺き替えについても芸北茅プロジェクトが関わっており、その旨もご紹介いただきました。
会場で芸北茅プロジェクトからは、茅刈りをする人を増やしたいとコメントをしましたが、閉会後にいろいろな方が声をかけてくださいました。
私たちは連携やつながりをもって、茅葺きや草原保全をすすめていきたいと考えていましたが、このシンポジウムを機に、そのことが夢のようなことではなく、確実に進めていける手応えが持ちました。
そういった機会をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。
一方で、茅場の持ち方や継続していく体制などにも課題は残ります。
さまざまな方の知見や経験をつないでいきながら、芸北茅プロジェクトを進めていく新たな力が湧いてきました。
シンポジウム後の懇親会も大変楽しかったです。
企画いただいた主催者のみなさん、素敵な場をありがとうございました。
(スタッフこうの)

櫻井さんのお話しのグラレコ。

民家から万博の茅葺きまでもりだくさん!

北広島の話題もたくさん!
ちょうど中国新聞で報道された浄土寺(豊平)の茅葺き替えのホットな話題も。
イラストがさすが。

茅葺き談義では、茅葺職人の紹介から。
春から入社の大学生の自己紹介。

茅ソファが置かれた壇上。
そしてグラフィックレコーディングをするのは、茅文協理事の方!

沖元さんの想いが込められた社名の説明。

平日にもかかわらず約100名の来場。
関心の高さが窺える。
受付などを手伝っていた学生さんの多さにもびっくり!
ホールも素敵。

 

【活動報告】「ひろしまの自然史博物館のこれから」レポート(2025.1.26)

2025年1月26日。
ひろしま環境ミーティング2024(似島歓迎交流センター)の分科会として、「ひろしまの自然史博物館のこれから」をテーマに集まりました。
企画者7名に加え、広島以外にも京都・滋賀・大阪からの参加があり、総勢24名で、考えを深める時間となりました。
最初は、各施設・団体を知ってもらうため、出張博物館の時間です。それぞれブースごとのテーマを持ち、学芸員やスタッフが解説します。
(1)芸北 高原の自然館(北広島町)「せどやまのいきもの」
(2)さとうみ科学館(江田島市)「里海の宝~カブトガニ~」
(3)三段峡ビジターセンターLoupe(安芸太田町)「三段峡の絶滅危惧種~ヤマセミとオオサンショウウオ~」
(4)広島大学総合博物館(東広島市)「自然史博物館ってどんなところ?
(5)オオサンショウウオと暮らすまちづくり会(東広島市)「保全を考えるボードゲーム」
解説に耳を傾けたり、活動を聞いたりといきもの好き、博物館好きの方は十分に楽しんでいただけたのではないでしょうか?
そして、みなさんに席についていただき、司会の黒島さん(広島大学総合博物館)より登壇者の紹介がありました。この分科会の発起人の河野(芸北 高原の自然館)からは、なぜこの分科会を持とうかとおもったこと、どんな会にしたいか、ということをお話しし、各施設からのリレートークに入ります。河野(芸北 高原の自然館)に続き、西原直久さん(さとうみ科学館)、井上 嵩裕さん (三段峡ビジターセンターLoupe)、山崎大海さん(オオサンショウウオと暮らすまちづくり会)、清水 則雄さん(広島大学総合博物館)の順番です。
それぞれの施設・団体から特色や強み、課題、これから実現していきたいことなどを5分という短い時間ですが、紹介しました。
この時点でキーワードがたくさん出てきました。
・学芸員不足(守り手の不足)
・地域まるごと博物館(エコミュージアム・キャンパスまるごと博物館・野外博物館)
・多世代(人材循環)
・フィールドワーカーの減少(育成と支援)
・企業連携
・資金不足(官民問わず)
・高齢化(活動の衰退,守り手の持続可能性)
・第三の学び場
・ネットワーク型
・地域資源の維持
・パートナーシップ,相互協力
・県標本(6万点の標本群)
・地域活性化に資する施設
その後、意見交換では、
・学芸員(人手)の不足について,クリアしていくには何が必要か?
・自治体が博物館の設置者の場合の話をいただいたが,そのほかではどうか?NPOの場合には?
・フィールドワーカーの減少について。自然史博物館はフィールドベースの博物館。その活動を支えるフィールドワーカーの減少にどう対応するか?
などがあがりました。
ここでは、長年野鳥の調査をしているフィールドワーカーの上野 吉雄さん(NPO法人西中国山地自然史研究会)からもコメントがありました。
最後に、「自分たちができるアクション」として参加者からの声をいただきました。時間不足で、2名にしか発言してもらう機会がなかったのが悔やまれますが、貴重なコメントがありました。
・県標本を活用したイベントを実施してはどうか。標本解説会を定期的に開くのが良い。自分の専門分野で実現可能。
・はく製師のような標本を作る人の仕事がないため,標本を守る前に作り上げることができない。海外同様に,そういう職種を認めてもらうことが重要。ワークショップは,機器や設備の関係からまずは大学での実施が現実的。ワークショップ等の活動を,専門家とコラボしながら,行政が認めるまでやり続けることが必要。
その後の立ち話では、キャラバンカーでの出前博物館のアイデアもありました。
みなさんの自然史博物館に対する熱い思いや、自然史に関する危機感、新しいことへの期待やわくわくを強く感じた分科会となったように思います。
昨年の夏にこの分科会を「やってみよう!」と思い立ち、幾度かの打ち合わせを経てこの機会を持てたことに感謝します。
(素敵な写真を撮ってくださった中井さんにも感謝!)
次の動きも予定しています。仲間も増えそうです!
以前河野が寄稿した中国新聞オピニオンの記事では、このように文章を締めています。
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「広島県内の自然史を後世に残すには?」。大きな問いに答えるためにも、牧野博士のように地をはう研究者たちの努力の成果に触れることができ、市民が自然への関心を高め、保全・活用に関わりを持てる場が急がれる。自治体間パートナーシップの広がりに期待したい。
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自治体間(行政)ではないものの、県内4ヶ所の施設や団体がつながったことは間違いなく、ここからのネットワークの広がりと、「広島県内の自然史を後世に残す」というおおきなうねりを作っていくんだ!という決意をもった「ひろしまの自然史博物館のこれから」となりました。
(スタッフ 河野弥生)

新年のご挨拶(2025.1.6)

新年明けましておめでとうございます。
本年も新たな気持ちで活動に尽力します!
2024年は、認定NPO法人認証の失効、高原の自然館の学芸員不在という変転があり、みなさまからの温かいご支援やご協力をいただきました。
西中国山地自然史研究会の大きな軸である自然観察会にも、たくさんの方に参加していただきました。保全活動では、新たに若い世代の参画もあり、活動の継続や発展に期待を寄せています。
標本作成や保存や活用を検討し実践する専門員グループも立ち上がりました。
また、芸北せどやま再生事業や芸北茅プロジェクトを通じて、地域のコモンとは何か?を都度考え、対話し体現していく年になったように感じます。
地域の魅力を探り、伝えることでまちづくりの支援にも注力し、企業や団体との連携にもチャレンジしました。
2025年も「地域と自然の輝きを未来へ」を目指し、里山文化の継承と持続可能な地域社会実現のために邁進します。 本年もぜひ共に進んでいただければ幸いです。
引続き、西中国山地自然史研究会の活動を応援いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

NPO法人西中国山地自然史研究会
理事長 上野吉雄
スタッフ一同

 

【活動報告】チェンソー安全講習STEP2伐倒編(2024/9/28・29)

林業舎 雨と森のみなさんをパートナーに、毎年安全講習会を企画しているのですが、中級編を企画してみよう!ということになり、ひろしまの森づくり事業のご支援をいただき、STEP2伐倒編を実施しました。
今回の参加者は、せどやま市場を運営するスタッフを含めて5名です。
・・・
参加の理由は
・仕事や自分の家庭用で薪作りをしているため、広葉樹の伐倒方を知りたい
・自宅の薪ストーブ用にせどやまを伐っている。掛かり木の処理や大きな木の伐り方が知りたい。
・地域で木を伐り玉切りにして薪作りをしている。枝が降ってきて危なかった経験がある。
・仕事で広葉樹の伐倒をしている。重心の見極めなどを知りたい。
・自宅用の薪を作っている。目立ても課題だが、樹種による伐り方の違いなども知りたい。
というもので、「薪をつくっている」という共通点がある参加者たちでした。
全員STEP1を受講しており、伐倒の経験もあり、知りたいことやお悩みが具体的でした。
・・・
1日目は座学です。 一般財団法人セブン-イレブン記念財団の助成金を活用し、林業舎雨と森の監修で作成した力作!!のテキストを使います。
テキストの目次に添い、後藤さんが解説をしながら、田丸さんがイラストを使い補足をしてくれます。
とにかく「安全に勝るものはない」ということで、基本中の基本である、服装やチェンソーの準備から入ります。もちろん心構えも必要です。
参加者は雨と森のおふたりの経験からの注意点やアドバイスも真剣に聞いています。
どの木を伐るかという「選木」「伐倒木や周辺の観察」、そして「伐倒方向の決め方」と続きます。
安全な伐倒のためには、ロープやハンドウインチを使うことも必要で、そのレクチャーもありました。
受け口・追い口・ツルの作り方のおさらいをした後は、伐倒のポイントをいくつか聞きます。
質問の多かったかかり木についても学びました。
1日目の最後は、実習として目立てのおさらい、そして立木を固定したものに受け口・追い口をつくり、狙った方向に実際倒れるかを講師に見てもらいました。
・・・
2日目は朝から実習です。(雨と森の藤山さん、下刈りありがとう!)
とてもユニークだったのは、まず伐倒する場所をみんなで歩いて、気づきを共有したことです。「枯れ木があった」「つるが巻いてある木があった」「けっこうな斜面だった」など口々にコメントします。そこでは、危険な植物や生き物がわからない、見たことがない、という参加者もいたので、テキストに反映したいと思います。
お手本を見せてもらったあとに、各自選木をし、伐倒します。チェーンがはずれていたり、チェンソーのトラブルがあったりもして、実際の現場でも起こりうることが体験・対処できました。
また、自分の癖や忘れがちなことも講師にコメントをもらえます。
午後は、牽引伐倒も体験しました。安全帯を身につけハシゴを使い、ロープもかけ、滑車も使います。参加者たちは真剣に取り組み、実際の現場でも使えるよう講師に質問を重ねていました。
・・・
里山での整備作業は、毎日違う危険がさまざまなところに潜んでいます。林業のプロの視点で解説・体験できるこのSTEP2伐倒編。参加者の声は次のようなものでした。
・STEP1から待ちに待ったSTEP2でした。経験をある程度積んだことで、講習会の内容についての理解が深まった。
・少ない参加者でマンツーマンに近いことで、疑問もすぐ解決できてよかった。
・牽引を使った伐倒、重心(大きな要素)の動かし方が勉強になった
・基本が学べてよかった
・実践的でよかった
・牽引伐倒の仕方がうよかった。受追口の作り方の理解が深まった
・ロープワークをもう少し復習して欲しかった
テキストにもありますが「こう伐れば必ず安全」というものはないそうです。小さな木を伐ることからはじめて、経験を積み、毎回振り返りをしてほしい、という言葉がとても印象的でした。
これからも、芸北せどやま再生事業を進めていく上で一番大切な「安全」を講習会という形で支援・実施していければと感じた二日間でした。