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【活動レポート】8月8日は“はっぱの日”―知的好奇心がかけめぐる吾妻山

2025年8月8日(金)、庄原市立比和自然科学博物館が主催する「吾妻山グリーンラリー」に参加してきました。
高原の自然館の活動に活かせるヒントがあるのでは?と期待を胸に、スタッフ・専門員あわせて7名で挑戦しました。グループ申込ということで、私たちは「研究会チーム」と「スミレチーム」に分かれ、集合場所の博物館へ向かいました。

スタートからすでに楽しい
博物館では、宮永学芸員からイベント趣旨の説明がありました。
オリエンテーションとして「検索表を使った葉っぱの探し方」をインストラクターがレクチャーしてくださいました。
丁寧かつテンポの良い進行で、実際に木本を検索表で追いながら正解にたどり着く爽快感を味わいました。
普段なんとなく見ていた植物も、「部位を丁寧に観察する」という新鮮な視点を得ることができました。
午後は標高1000mのフィールドへ
午後からはいよいよ吾妻山へ移動しました。
草原、青い空、澄んだ空気…それだけで気持ちが高まりました。
黄色いネッカチーフと代表者ビブスを身につけると、競技感がぐっと増しました。
チェックポイントごとに番号札のついた樹木があり、検索表を使って種名を記入していきました。
グループだからこそできる視点の補完や、途中で出会った生きものとの触れ合いも楽しく、吾妻山の自然を満喫できました。
継続37年という重み
このグリーンラリーは、故・中村慎吾先生が小学生や先生方と考案し、37年も継続しているイベントです。
競技性と学びが自然に融合し、インストラクターとの会話や予期せぬ発見が「今だけ・ここだけ」の体験を生み出しています。
そして結果は…
全ポイントを回りゴール、採点を終えてドキドキの結果発表。
なんとスミレチームが1位、研究会チームが2位でした。
帰り道も「あの木は難しかったね」「ヤマナメクジの通り道があった」「草原の草刈りの頻度は?」と話題が尽きませんでした。
継続の背景にある“遊び心”という理念
比和自然科学博物館は「遊びは研究の母」という理念を掲げています。
博物館は研究の場であると同時に学習の場であり、遊び心は知的好奇心と置き換えることができるといいます。
この考え方がグリーンラリーの原点であり、37年間続いてきた理由ではないかと推察します。
単なるレクリエーションではなく、フィールドの中で“遊びながら知る”仕掛けこそが、このプログラムを特別なものにしていると感じました。
フィールド型学習イベントのヒント
検索表を“楽しみ”に変えるしかけ
単なる同定作業ではなく、クイズ形式や制限時間を設けることで没入感が増します。
フィールド+人の力
インストラクターが立ち、参加者との会話を生むことで、知識以上の“記憶”が残ります。
「遊びは研究の母」という視点が、企画の方向性と継続性を支えています。
おわりに
来年の開催日は2026年8月8日(土)です。
この記事を読んでくださったみなさんも、ぜひ予定を確保して“はっぱの日のフィールドの学び”を体験してみてください。
きっと新しい発見とときめきがみつかるはずです。

意気込みはナンバーワン!目指すは一位、スミレチーム。

どんなイベントか、あまり考えずに誘われるままに参加。こんな楽しい時間になるとは!!

インスタラクターさんたちのオリエンテーションも熱い!!

検索表グッズ

チーム紹介タイム。

ネッカチーフが似合う!

どれどれ・・とインストラクターさんを交えての検索タイム。

子どもにもわかりやすい解説で、種名を導くインスストラクターさんたちの話術!

草原にたつ。

スタートを待つ研究会チーム。

1番。手強かった。

2番。小坊主という場所で。

3番。

4番。

5番。

6番。実が長く垂れていた。

7番。

8番。

9番。

10番の写真を撮り忘れ。11番。

 

チェックポイントにもインストラクターさんが。

迷わずブナ!

 

元館長さんもインストラクターとして活躍。

13番の問題。

13番には危険ないきものが近くに・・

カエンタケだ!!

14番。

15番。ラストです。

研究会チームで。

 

景品つき!

表彰式。スミレチームが真っ先に呼ばれました。

記録証。

\千町原 夏の装い/(2025.7.7)

快晴が続く八幡高原。日中の強い陽ざしに、そろそろ一雨ほしいところです。
そんな中、千町原では夏の草原らしい風景が広がってきました。今、とりわけ目を引くのがハンカイソウ。大きな葉を広げ、鮮やかな黄色の花を高く咲かせています。道沿いにも多く見られるため、車の中からでもその存在感がはっきりわかります。
対照的に、その隣で静かに、けれど力強く背を伸ばしているのがススキです。いまはまだ穂が出る前。茎も葉も青々とし、夏の光を受けて風にそよぐその姿には、凛とした美しさがあります。秋には黄金色に染まるススキ原ですが、この季節の「青さ」は、いまだけのもの。
広い空の青と、風にそよぐ草原の緑。そして、ところどころに咲くハンカイソウの黄色。その取り合わせが、千町原の夏の装いを見せてくれています。

 

\水口谷湿原散策記/(2025.7.5)

高原の自然館の開館前の短い時間を利用して、水口谷湿原を歩きました。
高原の自然館の「いきもの伝言板」にどれくらいの種類が書けるかな?と予想しながら、歩き始めました。
日々、ニュースは暑さの話題であふれていますが、湿原では木々の陰や風の通り道が心地よく、場所によっては体感的に涼しさを感じられました。ノリウツギやヒヨドリバナ、ノアザミ、オトギリソウなどが花を咲かせており、湿原の植生が季節の進行を伝えてくれます。
6月に花をつけていたオオナルコユリはすでに結実し、植物たちがそれぞれの時間を歩んでいることを実感しました。
鮮やかな黄色のハンカイソウの周りでは、カラスアゲハが吸蜜する様子も観察できました。
また、ハンノキ林に入ると空気が一段と冷たく感じられ、木漏れ日がやさしく差し込んでいました。林床に目をやると、オニスゲのトゲトゲの棍棒のような実が見えました。
耳を澄ませるとカッコウやアカショウビンがないています。
帰り道では、オカトラノオやワルナスビも確認できました。
散策は短時間ではありましたが、夏の入り口にある湿原の変化をしっかりと感じることができました。
もしお時間があれば、ぜひ水口谷湿原を歩いてみてください。季節の移ろいや小さな生きものの気配に、ささやかな発見があるはずです。

 

つぼみから花へ〜ウリノキ観察〜(2025.6.27)

初夏の八幡高原。雨あがりの朝、歩いていると、葉のかげにひっそりとつぼみをつけたウリノキを見つけました。
それから数日後、同じ場所を訪ねると、美しい花が咲いていました。
今回は、そんなウリノキのつぼみと開花の様子をレポートします。

ウリノキは、湿った森の中や川沿いなどのやや暗い環境を好む落葉低木です。
6月ごろになると、葉の付け根から細長く白い花を咲かせます。
この日見つけたのは、まだつぼみの状態でした。葉のかげに隠れるようにして、静かに咲く準備をしているように見えました。
咲くと花びらは外側に巻きこみ、雄しべ雌しべがよく見えるようになります。

ウリノキの葉はとても特徴的で、掌(てのひら)を広げたような形をしています。
広い葉にへこみがあり、3つか5つに切れ込んで手のひらのように広がります。
食用のウリの葉に似ていることからウリノキと名付けられました。
この独特な葉の形は、ウリノキを見分けるときの大きな手がかりになります。

また、ウリノキの樹皮は、若いころは滑らかで薄い灰色をしていますが、成長すると縦に細かな割れ目が入り、少しざらついた質感になるそうです。
木の成長とともにその様子も変わっていくのが観察の楽しみですね。

それから3日後の朝、同じ場所を再び訪ねると、ウリノキの花が咲いていました。
ウリノキの花は細く巻いた花びらの奥に、長く突き出すようにおしべとめしべが垂れ下がっています。
その姿は七夕飾りのようにも見え、花全体が重力に逆らわずぶら下がるような構造になっています。
風にゆれるこの形には、受粉のしくみに関係する意味があるのかもしれません。

花は大きな葉の下に垂れ下がるように咲き、地面には落ちた花がいくつも見られました。
拾い上げて触ってみると、花びらのカールは思った以上にしっかりとしており、形が崩れにくいのも印象的でした。

白い花弁に、ほんのり黄色がアクセントとして入っており、楚々とした美しさがあります。
その造形はまるでアクセサリーのようで、自然の造形の巧みさに感嘆させられます。
花の下には鮮やかな緑の葉、そして雨上がりのやわらかな光。
そんな情景が広がっていました。この一瞬の美しさを、いつまでも見ていたくなる——そんな朝でした。

ウリノキの花は、ひっそりと咲き、知らなければ通り過ぎてしまいそうな存在です。
しかし、観察してみると、その生態や造形の一つひとつに驚きや発見があり、自然の奥深さを感じることができます。
次は果実の季節にいってみようかな。

雨がくるまえに(2025.6.22)

朝8時30分、水口谷(むなくとだに)湿原を歩いてみることにしました。梅雨とは思えない晴れ間が続いていましたが、天気予報では11時ごろから雨が降るとのこと。そんな予報を気にしつつ、どうしても“バイケイソウ”だけは見ておきたくて、足早に木道を目指しました。木道に入った途端、耳に飛び込んできたのは鳥たちの鳴き声でした。ホオジロ、ホトトギス、そして遠くからカッコウの声も聞こえてきます。雨の前だからか、鳥たちはいつも以上に活発で、森の中はにぎやかな雰囲気でした。ほんの数日前には見られなかったスイカズラやノアザミ、サワヒヨドリの花が、しっかりと姿を見せていました。反対に、前回は満開だったウツギの花は落ち着いていて、季節がまた一歩進んだことを感じさせます。湿原の花たちは、まるでバトンを渡すように、次々と主役を交代しているようです。目的のバイケイソウは、ハンノキ林の中に咲いていました。花は淡い緑色で、背丈があるため遠くからでもよく見えます。光の少ない林床にすっくと立つその姿には、静かで落ち着いた存在感がありました。「バイケイソウ(梅蕙草)」の“梅”は、花の姿が梅に似ているから──そんな説があるそうです。本家の梅の花びらは5枚ですが、バイケイソウは6枚。ひとつ多いだけで印象がずいぶん変わります。花の形はシャープなのに、実際に見るとやさしく感じられ、控えめながらもどこか気品のある佇まいでした。なお、バイケイソウの花には「異臭がある」とも言われています。今回はその香りを確かめる余裕がありませんでしたが、次に訪れるときには、そっと近づいて、静かに香ってみようと思います。

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サワヒヨドリ
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ノアザミ
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水口谷湿原のバイケイソウ
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バイケイソウの花