林業舎 雨と森のみなさんをパートナーに、毎年安全講習会を企画しているのですが、中級編を企画してみよう!ということになり、ひろしまの森づくり事業のご支援をいただき、STEP2伐倒編を実施しました。
今回の参加者は、せどやま市場を運営するスタッフを含めて5名です。
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参加の理由は
・仕事や自分の家庭用で薪作りをしているため、広葉樹の伐倒方を知りたい
・自宅の薪ストーブ用にせどやまを伐っている。掛かり木の処理や大きな木の伐り方が知りたい。
・地域で木を伐り玉切りにして薪作りをしている。枝が降ってきて危なかった経験がある。
・仕事で広葉樹の伐倒をしている。重心の見極めなどを知りたい。
・自宅用の薪を作っている。目立ても課題だが、樹種による伐り方の違いなども知りたい。
というもので、「薪をつくっている」という共通点がある参加者たちでした。
全員STEP1を受講しており、伐倒の経験もあり、知りたいことやお悩みが具体的でした。
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1日目は座学です。 一般財団法人セブン-イレブン記念財団の助成金を活用し、林業舎雨と森の監修で作成した力作!!のテキストを使います。
テキストの目次に添い、後藤さんが解説をしながら、田丸さんがイラストを使い補足をしてくれます。
とにかく「安全に勝るものはない」ということで、基本中の基本である、服装やチェンソーの準備から入ります。もちろん心構えも必要です。
参加者は雨と森のおふたりの経験からの注意点やアドバイスも真剣に聞いています。
どの木を伐るかという「選木」「伐倒木や周辺の観察」、そして「伐倒方向の決め方」と続きます。
安全な伐倒のためには、ロープやハンドウインチを使うことも必要で、そのレクチャーもありました。
受け口・追い口・ツルの作り方のおさらいをした後は、伐倒のポイントをいくつか聞きます。
質問の多かったかかり木についても学びました。
1日目の最後は、実習として目立てのおさらい、そして立木を固定したものに受け口・追い口をつくり、狙った方向に実際倒れるかを講師に見てもらいました。
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2日目は朝から実習です。(雨と森の藤山さん、下刈りありがとう!)
とてもユニークだったのは、まず伐倒する場所をみんなで歩いて、気づきを共有したことです。「枯れ木があった」「つるが巻いてある木があった」「けっこうな斜面だった」など口々にコメントします。そこでは、危険な植物や生き物がわからない、見たことがない、という参加者もいたので、テキストに反映したいと思います。
お手本を見せてもらったあとに、各自選木をし、伐倒します。チェーンがはずれていたり、チェンソーのトラブルがあったりもして、実際の現場でも起こりうることが体験・対処できました。
また、自分の癖や忘れがちなことも講師にコメントをもらえます。
午後は、牽引伐倒も体験しました。安全帯を身につけハシゴを使い、ロープもかけ、滑車も使います。参加者たちは真剣に取り組み、実際の現場でも使えるよう講師に質問を重ねていました。
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里山での整備作業は、毎日違う危険がさまざまなところに潜んでいます。林業のプロの視点で解説・体験できるこのSTEP2伐倒編。参加者の声は次のようなものでした。
・STEP1から待ちに待ったSTEP2でした。経験をある程度積んだことで、講習会の内容についての理解が深まった。
・少ない参加者でマンツーマンに近いことで、疑問もすぐ解決できてよかった。
・牽引を使った伐倒、重心(大きな要素)の動かし方が勉強になった
・基本が学べてよかった
・実践的でよかった
・牽引伐倒の仕方がうよかった。受追口の作り方の理解が深まった
・ロープワークをもう少し復習して欲しかった
テキストにもありますが「こう伐れば必ず安全」というものはないそうです。小さな木を伐ることからはじめて、経験を積み、毎回振り返りをしてほしい、という言葉がとても印象的でした。
これからも、芸北せどやま再生事業を進めていく上で一番大切な「安全」を講習会という形で支援・実施していければと感じた二日間でした。
「活動報告」カテゴリーアーカイブ
【報告】自然と地域の関わりを考えたい 大学生のためのスタディーツアーin芸北
2024年9月13日・14日に受け入れをしました。
このツアーは、学生団体の「緋熊と黒潮」(通称:くましお)が運営するもので、北海道から福岡まで全国の大学から16名の大学生が2泊3日で実施され、その中の2日間を西中国山地自然史研究会が担当しました。
募集要項には「開催地となる広島県北広島町は、中国山地のふもと、広島県と島根県の県境に位置します。地域経済の活性化と環境保全を両立する「芸北せどやま事業」や、自治体による生物多様性地域戦略の策定などの取り組みが高く評価されています」という案内が掲載され、それを体験したい、学びたいという大学生が集まってくれたようです。
最初に、原さん(北広島町環境生活課)の案内で、おーいの丘、高原の自然館、霧ヶ谷湿原にてフィールドワークを行いました。土砂降りに遭い、濡れながらも八幡の自然や環境に触れていただきました。
その後、山麓庵で、学生も受け入れ側も自己紹介をします。
大学生たちの学んでいる分野は「プログラミング」「建築」「化学」「農業と観光」「都市と農村のデザイン」「地学・地理」「ライフサイクルマネジメント」「まちづくり」「グリーンインフラ」「雪崩と森林」「昆虫の行動」「理科教育」「世界遺産学」「ブナ林の回復」「景観と郷土愛」など多岐にわたって、これを聞くだけでもわくわくしました。
今回の芸北での滞在で期待していることとしては、「現代での自然資源の活用法」「里山の復興や持続性」「自然と人間の共生」「この場所のファンに会う」「湿原の生態系の復元」などがあげられてました。特に、「オオサンショウウオに会いたい」というリクエストの多さにびっくりし、その人気の高さは活動のヒントになるなぁと感じました。
こちらからは、原さん、上野理事長、スタッフ河野も自己紹介をしました。
どんなメンバーで二日間すごすのか共有したところで、原さんより北広島町の自然と環境の取り組みのレクチャーがありました。
生物多様性条例やカーボンニュートラル宣言、森林ビジョンなど北広島町の取り組みを広く紹介いただきました。
芸北での1日目は、周囲の自然環境を体験し、自治体としての取り組みを知ってもらうところで終了しました。
芸北での2日目は、芸北支所会議室からスタートしました。
受け入れメンバーが少し代わり、上野理事長・スタッフ河野に加え、スタッフ八木・山岸専門員、芸北出身大学生の河野小雪さんの5名です。
西中国山地自然史研究会の取り組みの紹介、具体的な事例として「芸北せどやま再生事業」「芸北茅プロジェクト」をスタッフ八木から説明しました。
また、専門員の役割紹介を山岸専門員(昆虫分野)が担当し、生物多様性の保全(資源の利用と循環・観光・教育・景観の保全・暮らしの豊かさ)の根拠や土台となる自然史研究を専門員が中心となって行っている、という紹介がとてもよかったです。
そして、せどやま教室や茅プロジェクトの一期生となる河野小雪さんからは、授業で学んだことの紹介がありました。小中学生だった当時の思い、そして現在振り返ってみると感じたことが等身大の言葉で紹介され、参加の大学生にも響いたようです。
座学が終わると、芸北オークガーデンにて、食事をしました。ゆっくり話せる機会で、大学で学んでいること、これからのことなど対話することができました。本気で里山の再生や地域の魅力づくりに取り組む姿、そしてその原点となる出来事などを聞くと、これからの社会で活躍する世代に期待が高まりました。
せどやま市場では、担当スタッフの曽根田が案内役となりました。「価格変動などがある中、なぜ買取額をずっと一定にしているのか?」という質問に対して「木を集めるために必要なことだし、NPOがやっているという意味がそこにあるから」という回答がありました。この言葉が一番印象に残った、という大学生もいたようです。
一通りの見学が終わると、会議室に戻り、二手にわかれて座談会となりました。最終日に、①芸北の里山の現状を踏まえた上で予想される未来と芸北の里山の理想的な未来について考える②二つの未来を比べて、そのギャップを埋めるためにしなければいけないこと、できることを施策を発表する、という時間があるそうなので、その材料になる疑問や質問を座談会形式で1時間ほど話しました。
最終日の発表は、大学生だけで行なったようですが、後日動画や成果物を見せていただきました体験したことや、自分たちの経験やアイデアを盛り込んだものとなっており、もっと深掘りして聞いてみたいなという感想を持ちました。
二日間という短い期間でしたが、芸北での取り組みや、活動を実際のプレイヤーを交えて紹介、そして交流できたことは、私たちにとっても大きな学びでした。
里山の課題はたくさんありますが、このようにフォールドワークや対話を通じて、専門的な視点、多様なアイデアを出してもらい、実践者を育てていく取り組みにも力をいれたいと思います。
今回、くましおの事務局を担う大朝出身の大学生掘田まる美さんの企画でしたが、「私の仲間たちに地元を紹介したい!」という情熱で実現したスタディツアーです。「郷土愛」というテーマをこれからもしっかり追いかけてほしいです。
【活動報告】里山自然講座レポート(職員研修)
6月2日、ひろしま自然学校(北広島町豊平)で行われた「里山自然講座」に職員研修として、参加しました。
「里山自然講座」は、森の整備や木材の活用、生きもの調査など、子どもたちが楽しむ森を一緒に作ることを目的とした、里山保全ボランティアの育成講座です。
今回の講座では、ひろしま自然学校オリジナルの「里山いきものカード」「おさんぽMAP」「発見シール」という3つの教材を使い、子どもたちに自然に親しんでもらう自然体験を行いました。
研修を体験して、改めて気づいたことは「ビジュアルの強さ」です。カードも、地図もシールも、わかりやすい写真や、親しみやすい色、デザインであり、子どもの好奇心や探究心をそそり、自発的に学びたくなるような作りとなっていました。またカードをコレクションするという、シンプルですが、のめり込みやすい仕掛けもあり、小道具やビジュアル一つで、自然体験活動をより楽しめるものに出来るということを実感しました。
午前の座学では、「教材をどのように使うの」「どのような仕組みか」を中心に学びました。教材は、子どもたちに、周囲に様々ないきものがいることを実感してもらう、やる気を高めてもらう、一歩踏み込んで、生態系の仕組みをしってもらう、を目的に作られているそうです。
今回使う「里山いきものカード」は、春・夏版の16枚で、表にはいきものの写真、裏には説明が書いてありました。16枚、あるいは32枚という数字はカードをプリントする場合にちょうどいい数字だそうです。子どもは虫が好きだから、虫を多くした。見つけやすいいきものを選んだなど、周辺に生息・生育するいきものから16種を選ぶときの苦労とコツも伺いました。
午後は、ひろしま自然学校のフリースクールに参加している1家族に講座の参加者が1人か2人が付き、一緒に生きもの探しに出かけました。
約2時間のおさんぽの後は、屋内でまとめをしました。このときにはカードをもらうというだけでなく、色ごとにグループ分けをして「もらったカードを2枚使ってつながりを考える」という発表も行いました。「木はチョウのおうち」「イモムシは草を食べる」など、ただ単にカードを集めるだけでなく、いきものを可愛いと思うことから一歩踏み込んだ発表会です。
子どもたちの発表を受け継ぐように、カードの制作者のお一人でもあり講師の大丸さん(ひろしま自然学校)による「カードのいきものたちの仲間は、実は全て繋がっている」という、模造紙を使ってのお話もありました。かわいいイラストでわかりやすい語りでしたが「生態系」のお話であり、まさしく教材の「一歩踏み込んで生態系の仕組みを知ってもらう」という目標に繋がっていて、カードのお話から自然に生態系のお話へと繋げていくスムーズさに私は驚きました。
子どもたちも最後までしっかりと聞いていたのも印象的でした。フリースクールの子どもたちとお別れのとき、みんなとてもいい笑顔で、今回の自然体験は、子どもたちにとってもとても楽しく、勉強になったのではないかと思います。
今回は子ども対象の自然体験でしたが、研修で参加させてもらった自分自身がとても楽しく、わかりやすい学びでした。
西中国山地自然史研究会では「自然観察手帳」というフルカラーの冊子を毎年制作しています。当会が主催する自然観察会で、会員に資料として使ってもらうものですが、この手帳以外にも、ビジュアルを生かし、初心者や子どもたちにも、自然に親しみを感じてもらえるようなツールがいつか作れたら、より深みのある機会になりそうです。
研修の機会を設けてくださったひろしま自然学校さん、ありがとうございました。
今回の研修で使われた教材の1つ、「里山いきものカード」。
写真やイラスト、解説がとてもわかりやすく、子どもたちの好奇心を引き出すようなデザインとなっている。
「カエルおった!!」。おさんぽ時間で見つけたモリアオガエル。綺麗に擬態していても、子どもの目を欺くことはできなかったようだ。
トンボ、捕まえたよ!トンボのシールが貼れる!!
シールを貼っていったおさんぽMAP。こんなにもたくさんのいきものが見つかりました。
【活動報告】水口谷湿原の清掃を行いました(2024.4.12)
2024年4月25日(木)の、高原の自然館のオープンまであと約2週間となりました。
昨日4月12日(木)に、北広島町観光協会芸北支部、芸北トレッキングガイドの会、芸北高原の自然館の3団体共同で、高原の自然館近くの水口谷湿原の木道の清掃を行いました。
秋と冬の落ち葉が積もり、コケも生えてで大変滑りやすくなり、周囲から伸びた枝や木々で歩きにくくなっていた木道ですが、約3時間の作業で綺麗になりましたよ!!
これから木々が芽吹き、新緑が綺麗な季節になります。
是非、足をお運びくださいね♪
落ち葉が積もった木道。
ブロワーを使って落ち葉を吹き飛ばす。
あっという間にこんなに綺麗に。
木道を覆うように茂っていたササや、枝も綺麗になりました。
【参加レポート】深入山山焼き2024(2024.4.8)
2024年4月7日(日)におとなり安芸太田町の深入山山焼きが実施されました。深入山は毎年植物観察会を行なっている場所であり、西中国山地自然史研究会の専門員の先生たちは、昆虫・野鳥などのモニタリングを行なっている思い入れのある草原でもあります。
「未来に残したい日本の草原(未来に残したい日本の草原100選運営委員会編)」によると、深入山は1749年に山焼きを行ったという記録が残っており、ワラビ山・肥草山として利用するために山焼きが行われてきたようです。1971年から深入山の山焼きは旧戸河内町が松原自治会に委託されたものの、2017年に受託辞退があり、再編し、2018年から町職員を中心とした新体制となり、自然を活かした観光の推進の観点から「草原の維持・再生」を目的とし、火入れを行なう中、2023年より一般ボランティアの募集がスタートしました。その際、西中国山地自然史研究会では、ボランティア募集について情報提供を行ったご縁もあり、関係者がボランティアに参加しています。
2024年の今回は専門員3名、スタッフ1名がボランティアに参加(+観光参加)しましたので報告します。
※ボランティア参加要件には、SNSなどでの発信が推奨されています。よって感想には個人見解も含まれています。
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●A班担当
初めてボランティアとして参加しました。雲月山と比べて焼く範囲が広いため、数人の点火係の方が、山頂から斜面や谷を降りながら火を付けなければならないことが、危険を伴う大変な作業だと思いました。山全体が見えないことも雲月山とは異なる点かと思いました。安全に作業を行うための事前の話し合いや当日の連絡体制など、山焼きはチームワークだなぁと改めて感じました。
●B班担当
昨年に続き2度目のボランティア参加でした。今回は火付け役という責任のある役目でしたが、植生や地形、人員の配置等をみながら火付けのタイミングをある程度イメージできました。これまでに携わってきた深入山、蒜山や雲月山などでの山焼きの経験が活きたのではないかなと思います。怪我や事故なく終わったのであれば成功と思います。
●D班担当
火が思うように燃えずあせりが感じ取れました。私は南登山道脇に火をつけて7合目くらいまで登りました。本来の火付けルートでは無くイレギュラーなものでした。ほとんどササ草原になっており、前夜の降雨もあったのか、ほとんど燃えませんでした.観光目的で行われている山焼きであり,あまりに燃えないので途中で帰る見物の方が多かったです。できれば、ササを刈ってススキ草原にするともう少し燃えると思います。
●E班担当
初めての参加でどきどきしましたが、待ち時間の多い配置だったため、グループのみなさんと話をしたり、観察したりという時間が長くもて、交流することができました。可能であれば、ボランティアだけでなく職員のみなさんにも名札があれば、話しかけやすかったかもしれません。途中、各班の様子を見に来られた 橋本博明 町長とお話しできたのは、大きな出来事です。職員のみなさんと町長とのやりとりを見ているととても和やかで、いい町なんだろうなぁと想像しました。
深入山の一番東側を担当するグループだったため、火が入る山容は見えなかったものの、山裾や林縁に火をつけていく体験は初めてで、文字通り燃えました!深入山の山焼きを自分が担えたという充実感いっぱいに帰路につきました。
●観光参加
駐車場周辺にはキッチンカーや地元のお店の出店もあり、まさにお祭り気分。また、頂上部の点火、麓からの点火についてはしっかりとアナウンスがあり、観光客に優しい山焼きだなという印象を受けました。
少し残念だったのは、曇り空となり肌寒さが増したことに加え、昨夜の雨の影響もあってか山焼きの燃え方が激しくなく、ゆっくりじわじわと焼けていくという状態だったからか、麓からの点火、最初の頃の激しい延焼が終わると、多くの観光客が帰ってしまったということです。ボランティアの方々が下山して戻ってくるころには、観光客の姿はまばらという寂しい状況に…。
とはいえ、山焼きを楽しみにされている方との交流もでき、楽しい1日となりました。
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このように大きな行事を安全に実施された安芸太田町に敬意を表します。
西中国山地自然史研究会では、9月21日に深入山の植物観察会を予定しています。
今後もたくさんのいきものの観察や保全、いこいの場所、四季のある気持ちのよい風景などを楽しみに深入山を訪れたいと思います。
はらっぱーも、深入山の山焼きに行ってきました!!
橋本町長の熱のこもった挨拶からスタート。
班ごとに仕分けられた火入れグッズ
山焼き時の服装はこれだ!!
おべんとうタイム
キブシと消防車。後ろでは火が走る。
E班のようす。
軽快に班を回る橋本町長。ボランティアにも声をかけてもらえた。
少しずつ燃え上がる
B班のようす。
D班のようす。
山焼き後の深入山