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【イベント報告】芸北の水辺のいきもの〜北広島町学術調査結果から〜

まだまだ雪の多い中,30名の参加者が文化ホールに集まってくださいました.内藤順一先生による水生生物の勉強会も3回目を迎え,今回は「芸北の水辺の生き物たち」と題し,多くの種類の水生動物の紹介から始まりました.スナヤツメ,ゴギ,サツキマス,アマゴなどの北広島町での分布域を地図で見ながら解説していただきました.またアカザ,イシドジョウ,アブラボテ(石鮒),カジカ,オヤニラミ,カワムツの写真を見ながら,北広島町の川には希少な魚が生息していることを実感しました.川だけでなく,湿地やため池にすむ生き物もいます.クサガメ,イシガメ.モ
リアオガエル,ヒキガエル,シュレーゲルアオガエル,そしてサンショウウオ類です.見たことある種類からそうではない種類まで,参加者は興味深く話を聞いていました.なかなか見ることのできないサンショウウオ類の卵のうの写真が映し出されたときには,びっくした様子もうかがえました.それから1986年に発見されて以来,内藤先生が調査や保全に関わってきたカワシンジュガイのお話も聞きました.最初は33個体だったものが,現在では約1,200個体ほどに増えているそうです.カワシンジュガイの繁殖に欠かせないアマゴとの相利共生の関係,そしてアブラボテとカワシンジュガイの片利共生の関係が,調査が進むうちに解明されたおかげで,芸北の川の多様性が守られています.内藤先生がお話しされた「当時の地元の方の生物に対する意識の高さが今につながっている」という言葉がとても印象的でした.さらに「命のうけわたしができないと,川からいきものがいなくなる」という言葉の重みがひしひしと伝わってきました.参加者からもたくさんの質問が飛び出し,現在でも「生物に対する意識」が高いことを感じました.
今回学んだことをしっかりと自分たちの財産にして,地元や愛着のある場所で,生き物の環境を見守りたいと感じた,生き物勉強会となりました.[こうのやよい]
「芸北の水辺の生き物たち」と題した勉強会の始まり.さて,どんな生き物が登場するのだろう?
「芸北の水辺の生き物たち」と題した勉強会の始まり.さて,どんな生き物が登場するのだろう?アブラボテはカワシンジュガイの貝の中に産卵する.産卵期のメスは長い産卵管を持っていることも教えていただいた.
アブラボテはカワシンジュガイの貝の中に産卵する.産卵期のメスは長い産卵管を持っていることも教えていただいた.2年前に行ったカワシンジュガイの保護活動も紹介された.
2年前に行ったカワシンジュガイの保護活動も紹介された.川にすむ色々な生き物の写真を見て.「これはみたことある!」「昔はようけおった」などと会場からも声があがった.
川にすむ色々な生き物の写真を見て.「これはみたことある!」「昔はようけおった」などと会場からも声があがった.内藤先生の著著である「太田川水族館」の紹介もあった.高原の自然館で絶賛発売中.
内藤先生の著著である「太田川水族館」の紹介もあった.高原の自然館で絶賛発売中.日本初のスナヤツメの繁殖行動を撮った写真も紹介.
日本初のスナヤツメの繁殖行動を撮った写真も紹介.内藤先生の熱心なお話に参加者は熱心に聞き入り,質問も多く飛びだした.
内藤先生の熱心なお話に参加者は熱心に聞き入り,質問も多く飛びだした.

【イベント報告】大潰山の春植物観察会

1週間前の天気予報では雨の予報でしたが,幸運にも予報が外れ集合時は快晴となりました.今回で4回目となった大潰山の春植物観察会,参加者は28名です.ダイセンミツバツツジの満開に逢うのはむずかしく,今回も講師の佐久間先生による里山の植物全般の観察会となりました.集合場所の大佐スキー場では,もう一人の講師である暮町先生によるタンポポ類の説明がありました.続いて,白川学芸員より,タンポポ調査のリーフレットが配布され,その主旨や参加方法の説明もありました.駐車場脇には,セイヨウタンポポと日本産のタンポポが自生しており,区別点や種子の採集方法について説明を受けながら,実際に参加者で比較し観察をしました.その後車で水越林道の登山口(標高710m)に移動しました.佐久間先生から「大潰山のスミレ」の資料が配布され,スミレの仲間には5種が基本型であることや,開放花と閉鎖花の繁殖戦略の説明がありました.参加者より,「この資料はわかりやすい」との声が多くあがりました.登山口から800m付近までは谷筋を進み,渓流ではオオルリの姿を見たり,鳴き声を聞くことができました.また,伏流水の噴出口ではタゴガエルの抱接を観察することができました.産卵の様子を見ることができたのは,貴重な機会でした.大潰山山頂(標高997.5m)で,昼食をとり,恒例の記念写真を撮りました.ここではガマズミの仲間やカスミザクラなどを見ることができました.北西登山道を下山し,鞍部(960m)付近では,マムシグサ・アケボノスミレ・コタチツボスミレなどを観察しました.今回の観察会で印象に残ったことは,佐久間先生からの「コナラとミズナラの違い」の説明です.見分けかたのひとつに,コナラは標高の低いところ,ミズナラは標高の高いところに分布するということがあるそうです.しかし,展葉の時期は,標高の高いところにあるミズナラが先で,コナラが後だそうです.この違いについて,とても興味を持ちました.山頂付近では蕾であったダンセンミツバツツジも大潰山を下るに従って,北西部の林床では満開で,ツツジも満喫することができました.今回確認できたのは,ツツジは4種類,スミレは10種類でした.最後に,内藤研究員が駐車場付近の湿地(745m)で採集した,カスミサンショウウオの越冬幼生や今春孵化した幼生の説明をしました.来春の成体確認が課題となりました.

大佐スキー場駐車場で,本日の行程と目的を確認した. 大佐スキー場駐車場で,本日の行程と目的を確認した.
集合場所の大佐スキー場駐車場で,在来のものらしいタンポポが見つかったので,早速観察. 集合場所の大佐スキー場駐車場で,在来のものらしいタンポポが見つかったので,早速観察.
登山道に入って,すぐに迎えてくれるのは「距が白い」オオタチツボスミレ. 登山道に入って,すぐに迎えてくれるのは「距が白い」オオタチツボスミレ.
ハウチワカエデの赤い花が,まだ残っていた. ハウチワカエデの赤い花が,まだ残っていた.
湿地に生える子のう菌類,カンムリタケ.浅い水の中からも生えている. 湿地に生える子のう菌類,カンムリタケ.浅い水の中からも生えている.
ダイセンミツバツツジの特徴,葉の裏の毛を観察した. ダイセンミツバツツジの特徴,葉の裏の毛を観察した.
登山道のダイセンミツバツツジは,まだつぼみが多かった. 登山道のダイセンミツバツツジは,まだつぼみが多かった.
山頂にあってもフモトスミレ. 山頂にあってもフモトスミレ.
エゾユズリハの花は地味だが,これだけ集まると遠目に美しい. エゾユズリハの花は地味だが,これだけ集まると遠目に美しい.
大潰山では山頂付近に多いメギ.今年もしっかり花が付いていた. 大潰山では山頂付近に多いメギ.今年もしっかり花が付いていた.
山頂では山並みを見ながら昼食.暑くも寒くも無く,休憩するのに良い気候. 山頂では山並みを見ながら昼食.暑くも寒くも無く,休憩するのに良い気候.
気持ちの良い山頂に,みんなニッコリ. 気持ちの良い山頂に,みんなニッコリ.
なぜか山頂にあるキシツツジ. なぜか山頂にあるキシツツジ.
日当たりが良いからか,山頂尾根のダイセンミツバツツジはたくさんの花を付けていた. 日当たりが良いからか,山頂尾根のダイセンミツバツツジはたくさんの花を付けていた.
展葉が始まり,様々な緑を見せる雑木の山. 展葉が始まり,様々な緑を見せる雑木の山.
昔草原だった名残か,ニオイタチツボスミレも多い. 昔草原だった名残か,ニオイタチツボスミレも多い.
一つの個体でも,開花が同調しないものが多かった. 一つの個体でも,開花が同調しないものが多かった.
アケビもたくさんの花を付けていた.このうちいくつが実になるのだろう? アケビもたくさんの花を付けていた.このうちいくつが実になるのだろう?
下りは少し急になる. 下りは少し急になる.
ふもとの駐車場に咲いていたスミレを見て,観察会終了. ふもとの駐車場に咲いていたスミレを見て,観察会終了.

【イベント報告】山焼き後の植物観察会

早朝はマイナスの冷え込みでしたが,観察会の始まる頃には太陽も高く青空で,気持ちのいい雲月山の植物観察会の始まりとなりました.あいにく今年の山焼きは中止になりましたが,人が手を加えることで維持される草原の重要性について,まわりの山々を見ながら,和田先生に説明していただきました.広島県で火入れがされている雲月山・千町原・深入山の植物の種数について佐久間先生から,今回は調査結果の初資料について説明していただき,貴重な植物が生息する環境だと言うことを改めて実感できました.そして,登山の始まりです.まずヤマヤナギの雄花・雌花,キジムシロ,センボンヤリ.草丈の低いこの時期に一生懸命咲いている花.オトコヨモギ・リュウノウギクの新芽を観察しました.以前参加した山焼きの経験談などを話しながら,稜線づたいに散策しました.タイムスケジュール通りに山頂で昼食をとることができました.放牧準備の電柵用の杭が所々においてありました.牛が放牧されることで,畑の草がびっしり生えてきている所,緑の色が違いました.ショウジョウバカマがずら〜と咲いている所はショウジョウバカマの小道と名付けて歩き,ニオイタチツボスミレのにおいをかいだり,ゆっくり山歩きを楽しんだ観察会でした.

佐久間先生から初公開の資料を使って,説明があった.
佐久間先生から初公開の資料を使って,説明があった.
晴天に恵まれ,いざ出発!
晴天に恵まれ,いざ出発!
キジムシロに出会った.
キジムシロに出会った.
おなじみ,旧芸北町のマーク.「北」に見えるかな?
おなじみ,旧芸北町のマーク.「北」に見えるかな?
山肌の横線についての説明.たたら製鉄かんな流しの跡を見る.
山肌の横線についての説明.たたら製鉄かんな流しの跡を見る.
カラマツの枝振りは,風の吹く影響を受けている.
カラマツの枝振りは,風の吹く影響を受けている.
昼食後山頂で記念撮影.
昼食後山頂で記念撮影.
山焼きをされているところ・されていないところの違いを比べる.
山焼きをされているところ・されていないところの違いを比べる.
いろいろな色のショウジョウバカマ.
いろいろな色のショウジョウバカマ.
「三本でもセンボンヤリ」(和田先生)
「三本でもセンボンヤリ」(和田先生)
車道の脇にも様々な植物があった.
車道の脇にも様々な植物があった.

【イベント報告】冬を生きる動物たちの生態

前日から雪がよく降り,道路の凍結などの心配がありましたが,当日は久しぶりによく晴れたとても良い観察会日和となり,17名の参加者が高原の自然館前に集合しました.今回の講師は,上野吉雄先生です.まずは事前勉強のため,高原の自然館の中で,どのような生きものが冬に活動しているかを学びました.タヌキやテンなどの剥製を見ながら,毛触り,指の数,どのような生活をしているのかを学び,姿や足跡を見ることができるといいなと思いながら,参加者の皆さんとカンジキを履いて,千町原をめざして出発しました.連日雪が降り続けていたため,積雪は80cmを超えており,道がわからないほどの雪景色!雪を積もらせたカラコギカエデやノリウツギなどが枝を曲げながらも耐えていました.少し歩いて行くと,ウサギが活動した痕跡を見つけました.足跡や木をかじった痕,フンなど,姿は見えなくともウサギがどの方向に移動し,どのような事をしたのかを,上野先生の実演を含めた説明があり,とてもよくわかりました.句碑のある方へしばらく歩いていくと,キツネの足跡を見つけました.足跡の先には,尿をした痕跡があり,臭いをかいでみましたが,とても甘くしばらく鼻に付くような強烈な臭いでした.雪上には,トビムシやガガンボなど雪での生活をしている小さな昆虫も見つかり,動物以外にも冬を生活している生きものが見られました.冬が教えてくれる生きものたちの生態は面白く,動物の姿を見ることはできませんでしたが,どのように生活しているかがわかり,冬だからこそ楽しめる観察会となりました.[しんぽゆうすけ]

アナグマの毛をおそるおそるさわってみる.
アナグマの毛をおそるおそるさわってみる.
カンジキ作りの先生である坂井さんに教えていただき,カンジキを履く.
カンジキ作りの先生である坂井さんに教えていただき,カンジキを履く.
鳥声に耳を傾ける.
鳥声に耳を傾ける.千町原へ向かって丘を登る.ふかふかとした新雪だった.
千町原へ向かって丘を登る.ふかふかとした新雪だった.
足跡や食痕を探すと生きものの存在が感じられる.
足跡や食痕を探すと生きものの存在が感じられる.
木の下に落ちていたオオウラジロノキの実
木の下に落ちていたオオウラジロノキの実
まっすぐ一直線についている足跡はキツネ.
まっすぐ一直線についている足跡はキツネ.

【イベント報告】サツキマスの観察会

冷え込んだ朝の高原センターに,32名の参加者が集まりました.その顔ぶれは親子連れや,釣り好きの人達が多いようです.今日の講師,内藤先生は,サツキマスという魚が,昔の芸北で,どのように認識されていたのか,近縁種との分類がどのように進んだのかなど,プロジェクターを使いながら,分かりやすく丁寧にサツキマスのことを教えて下さいました.特に,北米などにも遡上するサクラマスに対し,サツキマスは世界の中でも西日本にしか生息しない固有種であるというお話しは,とても興味深いものでした.また,水中での産卵の様子を撮影したビデオでは,サツキマスの習性やアマゴとの関係などが良く分かり,撮影の苦労話なども聞かせていただきました.室内で十分にレクチャーを受けた後,いよいよ本物のサツキマスを見に行きます.出発の前に,内藤先生は,産卵を終えて死んだサツキマスの標本を見せて下さいました.
サツキマスが遡上してくるのは小さな小川です.産卵場所を覗き込むと,大きなメスが川底の砂を巻き上げていました.内藤先生によると,既に産卵を終え,卵を守っているところだそうです.前日まではたくさんの個体が泳いでいたそうで,夜の内に産卵を終えたのだろう,ということでした.それでも,川の中を注意深く見てみると,婚姻色が出て赤くなったオスも見ることができました.観察の後には,ブラックバスなど外来種との関係,ダム建設など人間との関係など,参加者からも色々な質問が出ました.日本固有種のサツキマスがこれからも暮らしていけるような環境を残していきたいと思いました.[しらかわかつのぶ]

大きな写真を使いながら解説する内藤先生.
大きな写真を使いながら解説する内藤先生.
サツキマスが産卵する瞬間.参加者からは感嘆の声が上がった.
サツキマスが産卵する瞬間.参加者からは感嘆の声が上がった.
産卵を終えて死んだ,サツキマスのメス(上)とオス(下)の標本.
産卵を終えて死んだ,サツキマスのメス(上)とオス(下)の標本.
メスの体には,モリで突かれたような傷があった.(※この時期,サケ科魚類の捕獲は禁止されています)
メスの体には,モリで突かれたような傷があった.(※この時期,サケ科魚類の捕獲は禁止されています)
現地では,色々な質問が出ていた.
現地では,色々な質問が出ていた.
産卵場所を覗き込む.
産卵場所を覗き込む.
橋の上から観察した.
橋の上から観察した.
産卵を終え,卵に砂をかけるメス.
産卵を終え,卵に砂をかけるメス.