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【イベント報告】ブッポウソウの観察会

  • 開催日時:2012年7月15日(日) 9:30
  • 講師:松田賢

観察会にはもってこいの快晴の中,23名の方が参加されました.
まず,松田先生による講義を聴きました.講義では広島県や芸北地域で,ブッポウソウを保全するためにどのような活動を行っているのか,ブッポウソウの生態研究などを説明されました.その中で,繁殖を促すために巣箱を設置したが,闇雲に数を増やすだけでは営巣数が増える訳ではないことや,給餌の回数が多く,朝早くから日暮れまで雄雌交代で給餌をしていること,硬い甲虫類を好んで食べ,それらを捕獲するために夜に近い時間になると給餌活動がより活発になるということを初めて知り,印象に残りました.また,保全の結果,広島県での絶滅危惧のランクがⅠ類からⅡ類に下がったという話には驚きました.
講義の後は巣箱のある場所に移動し,松田先生とブッポウソウの観察を続けている川小田の上田さんと二人で解説をしてもらいながら実際に観察します.巣箱には複数の雛がいて,代わる代わる周りを伺うように顔を出しては,口をパクパクさせていました.ですが,親が給餌しに現れないので不思議に思っていると「雛は巣立ち直前で,巣立ちを促すために給餌活動を減らしているのだろう」という説明がありました.親鳥を待つ間,前日に上田さんが撮影された親鳥の写真を見せてもらったり,そのときの様子を聞きながら,時折巣箱の周りを参加者みんなでみまもっていると,親鳥が巣箱から少し離れた位置に止まりました.親鳥は巣箱に近づこうとせず,時折周囲を回っては,離れて,また戻るということを繰り返していました.先ほどの説明にあった巣立ちの促しを実際に確認しつつ,給餌はもうやらないのかと,半ば諦めだした頃,親鳥が巣箱に近づき給餌を行いました.本当に一瞬のことで,見た人も見られなかったも気分が高まり,「もう一度給餌しないか」「巣立ちの瞬間も見たい」と期待を込めて巣箱を見つめましたが,残念ながら何度か給餌したものの,巣立ちを見ることはできませんでした.
見られなかったものもありましたが,巣立ち直前の雛や成長を促す親鳥が見れて,貴重な観察会となりました.

みなさんの印象に残った物

「鳥の観察には,待つことが大事だということ」「巣立ち前のブッポウソウのひな(3)」「雛が巣箱から顔を出したこと」「ヒナが3羽もいたのにはビックリでした」「巣立ちを促す親鳥の様子がけなげな事」「親鳥の広げた羽の色が見れてよかった」「雛も見る事ができたし,えさやりも見る事ができた事(3)」「ヒナのくちばし,体色(2)」「説明がよかったです」「ブッポウソウの止まっている姿や巣の雛が見られたこと」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「お天気も晴れて親切に観察できるムードを作っていただき,感謝しています」「自分の家の前に巣箱を作ってみます」「レクチャーがとても興味深く面白かった」「のんびりできました」「もっともっとブッポウソウが増えれば良いですね」「相手も生きているのかは人間の都合どうりにはいかない」「ブッポウソウの観察も大変でした」「ブッポウソウ,ヒナも見れたし,写真もたくさん見せてもらってよかったです」「里山でこんな普通に見れるとは思わなかった」「昨年からブッポウソウを見たいと思っていましたので見る事ができて良かったです」「ヒナを見られたのは良かった(2)」「楽しかったです」「近くで見られてよかった」「貴重な機会をありがとうございました(2)」

写真

双眼鏡を手に観察開始巣箱の様子はどうだろう?
双眼鏡を手に観察開始巣箱の様子はどうだろう?ご近所に住む上田さんが観察しているブッポウソウの写真.青い羽と赤いクチバシが鮮やか.
ご近所に住む上田さんが観察しているブッポウソウの写真.青い羽と赤いクチバシが鮮やか.巣箱では雛が顔を出しては周りを見ている.
巣箱では雛が顔を出しては周りを見ている.貴重な一瞬を撮るため,真剣な表情で見守る参加者.
貴重な一瞬を撮るため,真剣な表情で見守る参加者.近くを飛んでいたウスバキトンボ.
近くを飛んでいたウスバキトンボ.緑の中で,白い花をきれいに咲かせていたオカトラノオ.
緑の中で,白い花をきれいに咲かせていたオカトラノオ.携帯電話での撮影にチャレンジ.うまく撮れるかな?
携帯電話での撮影にチャレンジ.うまく撮れるかな?ブッポウソウの親子を観察する親子.
ブッポウソウの親子を観察する親子.写真を資料にブッポウソウの解説をする松田先生.
写真を資料にブッポウソウの解説をする松田先生.地面を這っていたフトミミズ.見つけた人は大きさにビックリ.
地面を這っていたフトミミズ.見つけた人は大きさにビックリ.

【イベント報告】芸北の水辺のいきもの〜北広島町学術調査結果から〜

まだまだ雪の多い中,30名の参加者が文化ホールに集まってくださいました.内藤順一先生による水生生物の勉強会も3回目を迎え,今回は「芸北の水辺の生き物たち」と題し,多くの種類の水生動物の紹介から始まりました.スナヤツメ,ゴギ,サツキマス,アマゴなどの北広島町での分布域を地図で見ながら解説していただきました.またアカザ,イシドジョウ,アブラボテ(石鮒),カジカ,オヤニラミ,カワムツの写真を見ながら,北広島町の川には希少な魚が生息していることを実感しました.川だけでなく,湿地やため池にすむ生き物もいます.クサガメ,イシガメ.モ
リアオガエル,ヒキガエル,シュレーゲルアオガエル,そしてサンショウウオ類です.見たことある種類からそうではない種類まで,参加者は興味深く話を聞いていました.なかなか見ることのできないサンショウウオ類の卵のうの写真が映し出されたときには,びっくした様子もうかがえました.それから1986年に発見されて以来,内藤先生が調査や保全に関わってきたカワシンジュガイのお話も聞きました.最初は33個体だったものが,現在では約1,200個体ほどに増えているそうです.カワシンジュガイの繁殖に欠かせないアマゴとの相利共生の関係,そしてアブラボテとカワシンジュガイの片利共生の関係が,調査が進むうちに解明されたおかげで,芸北の川の多様性が守られています.内藤先生がお話しされた「当時の地元の方の生物に対する意識の高さが今につながっている」という言葉がとても印象的でした.さらに「命のうけわたしができないと,川からいきものがいなくなる」という言葉の重みがひしひしと伝わってきました.参加者からもたくさんの質問が飛び出し,現在でも「生物に対する意識」が高いことを感じました.
今回学んだことをしっかりと自分たちの財産にして,地元や愛着のある場所で,生き物の環境を見守りたいと感じた,生き物勉強会となりました.[こうのやよい]
「芸北の水辺の生き物たち」と題した勉強会の始まり.さて,どんな生き物が登場するのだろう?
「芸北の水辺の生き物たち」と題した勉強会の始まり.さて,どんな生き物が登場するのだろう?アブラボテはカワシンジュガイの貝の中に産卵する.産卵期のメスは長い産卵管を持っていることも教えていただいた.
アブラボテはカワシンジュガイの貝の中に産卵する.産卵期のメスは長い産卵管を持っていることも教えていただいた.2年前に行ったカワシンジュガイの保護活動も紹介された.
2年前に行ったカワシンジュガイの保護活動も紹介された.川にすむ色々な生き物の写真を見て.「これはみたことある!」「昔はようけおった」などと会場からも声があがった.
川にすむ色々な生き物の写真を見て.「これはみたことある!」「昔はようけおった」などと会場からも声があがった.内藤先生の著著である「太田川水族館」の紹介もあった.高原の自然館で絶賛発売中.
内藤先生の著著である「太田川水族館」の紹介もあった.高原の自然館で絶賛発売中.日本初のスナヤツメの繁殖行動を撮った写真も紹介.
日本初のスナヤツメの繁殖行動を撮った写真も紹介.内藤先生の熱心なお話に参加者は熱心に聞き入り,質問も多く飛びだした.
内藤先生の熱心なお話に参加者は熱心に聞き入り,質問も多く飛びだした.

【イベント報告】大潰山の春植物観察会

1週間前の天気予報では雨の予報でしたが,幸運にも予報が外れ集合時は快晴となりました.今回で4回目となった大潰山の春植物観察会,参加者は28名です.ダイセンミツバツツジの満開に逢うのはむずかしく,今回も講師の佐久間先生による里山の植物全般の観察会となりました.集合場所の大佐スキー場では,もう一人の講師である暮町先生によるタンポポ類の説明がありました.続いて,白川学芸員より,タンポポ調査のリーフレットが配布され,その主旨や参加方法の説明もありました.駐車場脇には,セイヨウタンポポと日本産のタンポポが自生しており,区別点や種子の採集方法について説明を受けながら,実際に参加者で比較し観察をしました.その後車で水越林道の登山口(標高710m)に移動しました.佐久間先生から「大潰山のスミレ」の資料が配布され,スミレの仲間には5種が基本型であることや,開放花と閉鎖花の繁殖戦略の説明がありました.参加者より,「この資料はわかりやすい」との声が多くあがりました.登山口から800m付近までは谷筋を進み,渓流ではオオルリの姿を見たり,鳴き声を聞くことができました.また,伏流水の噴出口ではタゴガエルの抱接を観察することができました.産卵の様子を見ることができたのは,貴重な機会でした.大潰山山頂(標高997.5m)で,昼食をとり,恒例の記念写真を撮りました.ここではガマズミの仲間やカスミザクラなどを見ることができました.北西登山道を下山し,鞍部(960m)付近では,マムシグサ・アケボノスミレ・コタチツボスミレなどを観察しました.今回の観察会で印象に残ったことは,佐久間先生からの「コナラとミズナラの違い」の説明です.見分けかたのひとつに,コナラは標高の低いところ,ミズナラは標高の高いところに分布するということがあるそうです.しかし,展葉の時期は,標高の高いところにあるミズナラが先で,コナラが後だそうです.この違いについて,とても興味を持ちました.山頂付近では蕾であったダンセンミツバツツジも大潰山を下るに従って,北西部の林床では満開で,ツツジも満喫することができました.今回確認できたのは,ツツジは4種類,スミレは10種類でした.最後に,内藤研究員が駐車場付近の湿地(745m)で採集した,カスミサンショウウオの越冬幼生や今春孵化した幼生の説明をしました.来春の成体確認が課題となりました.

大佐スキー場駐車場で,本日の行程と目的を確認した. 大佐スキー場駐車場で,本日の行程と目的を確認した.
集合場所の大佐スキー場駐車場で,在来のものらしいタンポポが見つかったので,早速観察. 集合場所の大佐スキー場駐車場で,在来のものらしいタンポポが見つかったので,早速観察.
登山道に入って,すぐに迎えてくれるのは「距が白い」オオタチツボスミレ. 登山道に入って,すぐに迎えてくれるのは「距が白い」オオタチツボスミレ.
ハウチワカエデの赤い花が,まだ残っていた. ハウチワカエデの赤い花が,まだ残っていた.
湿地に生える子のう菌類,カンムリタケ.浅い水の中からも生えている. 湿地に生える子のう菌類,カンムリタケ.浅い水の中からも生えている.
ダイセンミツバツツジの特徴,葉の裏の毛を観察した. ダイセンミツバツツジの特徴,葉の裏の毛を観察した.
登山道のダイセンミツバツツジは,まだつぼみが多かった. 登山道のダイセンミツバツツジは,まだつぼみが多かった.
山頂にあってもフモトスミレ. 山頂にあってもフモトスミレ.
エゾユズリハの花は地味だが,これだけ集まると遠目に美しい. エゾユズリハの花は地味だが,これだけ集まると遠目に美しい.
大潰山では山頂付近に多いメギ.今年もしっかり花が付いていた. 大潰山では山頂付近に多いメギ.今年もしっかり花が付いていた.
山頂では山並みを見ながら昼食.暑くも寒くも無く,休憩するのに良い気候. 山頂では山並みを見ながら昼食.暑くも寒くも無く,休憩するのに良い気候.
気持ちの良い山頂に,みんなニッコリ. 気持ちの良い山頂に,みんなニッコリ.
なぜか山頂にあるキシツツジ. なぜか山頂にあるキシツツジ.
日当たりが良いからか,山頂尾根のダイセンミツバツツジはたくさんの花を付けていた. 日当たりが良いからか,山頂尾根のダイセンミツバツツジはたくさんの花を付けていた.
展葉が始まり,様々な緑を見せる雑木の山. 展葉が始まり,様々な緑を見せる雑木の山.
昔草原だった名残か,ニオイタチツボスミレも多い. 昔草原だった名残か,ニオイタチツボスミレも多い.
一つの個体でも,開花が同調しないものが多かった. 一つの個体でも,開花が同調しないものが多かった.
アケビもたくさんの花を付けていた.このうちいくつが実になるのだろう? アケビもたくさんの花を付けていた.このうちいくつが実になるのだろう?
下りは少し急になる. 下りは少し急になる.
ふもとの駐車場に咲いていたスミレを見て,観察会終了. ふもとの駐車場に咲いていたスミレを見て,観察会終了.

【イベント報告】山焼き後の植物観察会

早朝はマイナスの冷え込みでしたが,観察会の始まる頃には太陽も高く青空で,気持ちのいい雲月山の植物観察会の始まりとなりました.あいにく今年の山焼きは中止になりましたが,人が手を加えることで維持される草原の重要性について,まわりの山々を見ながら,和田先生に説明していただきました.広島県で火入れがされている雲月山・千町原・深入山の植物の種数について佐久間先生から,今回は調査結果の初資料について説明していただき,貴重な植物が生息する環境だと言うことを改めて実感できました.そして,登山の始まりです.まずヤマヤナギの雄花・雌花,キジムシロ,センボンヤリ.草丈の低いこの時期に一生懸命咲いている花.オトコヨモギ・リュウノウギクの新芽を観察しました.以前参加した山焼きの経験談などを話しながら,稜線づたいに散策しました.タイムスケジュール通りに山頂で昼食をとることができました.放牧準備の電柵用の杭が所々においてありました.牛が放牧されることで,畑の草がびっしり生えてきている所,緑の色が違いました.ショウジョウバカマがずら〜と咲いている所はショウジョウバカマの小道と名付けて歩き,ニオイタチツボスミレのにおいをかいだり,ゆっくり山歩きを楽しんだ観察会でした.

佐久間先生から初公開の資料を使って,説明があった.
佐久間先生から初公開の資料を使って,説明があった.
晴天に恵まれ,いざ出発!
晴天に恵まれ,いざ出発!
キジムシロに出会った.
キジムシロに出会った.
おなじみ,旧芸北町のマーク.「北」に見えるかな?
おなじみ,旧芸北町のマーク.「北」に見えるかな?
山肌の横線についての説明.たたら製鉄かんな流しの跡を見る.
山肌の横線についての説明.たたら製鉄かんな流しの跡を見る.
カラマツの枝振りは,風の吹く影響を受けている.
カラマツの枝振りは,風の吹く影響を受けている.
昼食後山頂で記念撮影.
昼食後山頂で記念撮影.
山焼きをされているところ・されていないところの違いを比べる.
山焼きをされているところ・されていないところの違いを比べる.
いろいろな色のショウジョウバカマ.
いろいろな色のショウジョウバカマ.
「三本でもセンボンヤリ」(和田先生)
「三本でもセンボンヤリ」(和田先生)
車道の脇にも様々な植物があった.
車道の脇にも様々な植物があった.

【イベント報告】冬を生きる動物たちの生態

前日から雪がよく降り,道路の凍結などの心配がありましたが,当日は久しぶりによく晴れたとても良い観察会日和となり,17名の参加者が高原の自然館前に集合しました.今回の講師は,上野吉雄先生です.まずは事前勉強のため,高原の自然館の中で,どのような生きものが冬に活動しているかを学びました.タヌキやテンなどの剥製を見ながら,毛触り,指の数,どのような生活をしているのかを学び,姿や足跡を見ることができるといいなと思いながら,参加者の皆さんとカンジキを履いて,千町原をめざして出発しました.連日雪が降り続けていたため,積雪は80cmを超えており,道がわからないほどの雪景色!雪を積もらせたカラコギカエデやノリウツギなどが枝を曲げながらも耐えていました.少し歩いて行くと,ウサギが活動した痕跡を見つけました.足跡や木をかじった痕,フンなど,姿は見えなくともウサギがどの方向に移動し,どのような事をしたのかを,上野先生の実演を含めた説明があり,とてもよくわかりました.句碑のある方へしばらく歩いていくと,キツネの足跡を見つけました.足跡の先には,尿をした痕跡があり,臭いをかいでみましたが,とても甘くしばらく鼻に付くような強烈な臭いでした.雪上には,トビムシやガガンボなど雪での生活をしている小さな昆虫も見つかり,動物以外にも冬を生活している生きものが見られました.冬が教えてくれる生きものたちの生態は面白く,動物の姿を見ることはできませんでしたが,どのように生活しているかがわかり,冬だからこそ楽しめる観察会となりました.[しんぽゆうすけ]

アナグマの毛をおそるおそるさわってみる.
アナグマの毛をおそるおそるさわってみる.
カンジキ作りの先生である坂井さんに教えていただき,カンジキを履く.
カンジキ作りの先生である坂井さんに教えていただき,カンジキを履く.
鳥声に耳を傾ける.
鳥声に耳を傾ける.千町原へ向かって丘を登る.ふかふかとした新雪だった.
千町原へ向かって丘を登る.ふかふかとした新雪だった.
足跡や食痕を探すと生きものの存在が感じられる.
足跡や食痕を探すと生きものの存在が感じられる.
木の下に落ちていたオオウラジロノキの実
木の下に落ちていたオオウラジロノキの実
まっすぐ一直線についている足跡はキツネ.
まっすぐ一直線についている足跡はキツネ.