【イベント報告】サツキマス保全の試み

  • 開催日時:2012年10月8日(月) 9:30
  • 講師:内藤順一

 聖湖から八幡高原に遡上してくるサツキマスは,農業堰があるために上流部までたどり着くことができず,堰の直下に集中して産卵していました.しかし,産卵に適した場所は限られているため,先に遡上した個体が産んだ卵を,後から遡上してきた個体が産卵のために掘り起こす,という状態が生じていました.そこで研究会では,サツキマスを一旦捕獲し,堰の上流部に放流することで,産卵場所を分散させ,繁殖率を高める取り組みを続けています.今回で3回目となるこの取り組みに,9人が参加しました.
 現地に向かう前に,高原センターで内藤先生が長年にわたって蓄積されてきた研究成果について講義していただきました.特に,サツキマスの水中撮影のビデオ映像は,様々な産卵パターンが克明に映っており,参加者全員が画面に見入っていました.
 約1時間の講義の後は現地に移動し,いよいよ捕獲作業です.内藤先生と補助の田村さんが,刺し網を3本張り,網にかかったサツキマスを捕獲していきました.概ね捕獲ができたところで,一匹ずつ体長と体重を計測しました.この日はサツキマスのオス10匹,メス12匹に加え,アマゴのオス1匹も捕獲しました.
 捕獲した全てのサツキマスおよびアマゴは,2つのコンテナに入れて軽トラックに乗せました.間近でサツキマスを見ながら,オスとメスの違いや大きさ,重さなどが観察できました.オスの鼻が曲がっていることや,赤い婚姻色を示していることを間近に見ることができました.手早く観察した後は,上流部に運んで全ての個体を放流しました.
 放流の翌日から,内藤先生と田村さんは八幡に通って放流個体の様子を観察しているので,おそらく数日中には産卵の報を聞くことができるでしょう.サツキマスという1種の生態から,人の活動と自然との関係を見つめ,色々なことを考えさせられた観察会でした.

写真

サツキマスの産卵は迫力がある.
サツキマスの産卵は迫力がある.現地に行く前に,室内で内藤先生に講義をしていただいた.
現地に行く前に,室内で内藤先生に講義をしていただいた.講義の後,現地へ移動.
講義の後,現地へ移動.群れになって泳ぐ魚影が見える.
群れになって泳ぐ魚影が見える.網を張る内藤先生.
網を張る内藤先生.かかったサツキマスを,網から丁寧にはずす.
かかったサツキマスを,網から丁寧にはずす.たくさん採れた.
たくさん採れた.体長を計測.この個体はメス.
体長を計測.この個体はメス.体長の計測と体重の計量を流れ作業で行う.
体長の計測と体重の計量を流れ作業で行う.軽トラに積まれたサツキマスに見入る参加者たち.
軽トラに積まれたサツキマスに見入る参加者たち.大きな「たいたい」
大きな「たいたい」そぉっと放す.
そぉっと放す.参加してくれた地元の子ども達に放流してもらった.
参加してくれた地元の子ども達に放流してもらった.放流は,2箇所で行った.
放流は,2箇所で行った.川は浅いけれど,川底は砂礫なので,産卵場所は何カ所もある.ちゃんと産んでくれるよう,みんなで見守った.
川は浅いけれど,川底は砂礫なので,産卵場所は何カ所もある.ちゃんと産んでくれるよう,みんなで見守った.