【イベント報告】サツキマス保全の試み

  • 開催日時:2011年10月10日(月) 9:30
  • 講師:内藤順一

 秋風が気持ち良く吹く八幡高原で,サツキマスの保全活動を実施しました.八幡高原の柴木川には,高さ1メートルほどの堰があります.この堰が妨げとなり,登ってきたサツキマスは,堰のすぐ下で産卵しています.しかし,産卵に適した場所が限られているため,たくさんのサツキマスが登ってきても,後から来た個体が,先に産卵された卵を掘り返してしまうため,たくさんの卵が無駄になっていました.そこで研究会では,遡上してきたサツキマスを捕獲し,一部を堰の上に放流することで,産卵場所を分散させ,個体群を維持する取り組みをしています.
 講師は内藤順一先生,参加者は9名です.フィールドに出る前に,八幡高原センターでサツキマスの産卵生態について講義していただきました.内藤先生が長年にわたって蓄積されたデータや,ご自身で撮影された写真・ビデオを使ってのお話しは,臨場感があり,非常に興味深いものでした.特に産卵シーンの撮影は,産卵場所が分かっていることに加え,一日中待ち続ける必要があるため,とても根気の要る調査です.そんな,写真を見ただけではわからない苦労話も,講座の中で聞かせて頂きました.
 事前に学習をした後は,現地での観察と捕獲・放流の見学です.作業を始める前に,護岸から「そ〜っ」と覗いてみると,堰の下をサツキマスが行き来している様子が見えました.昨年,保全活動を実施したときよりも,個体数はすこし少ないようです.
 いよいよ捕獲の開始です.内藤先生と,協力者の田村さんが川の中に入って「刺し網」を設置していきます.水は冷たいはずですが,ウェットスーツの内藤先生は,あまり気にしていない様子で,時々潜って観察しながら魚を探していました.程なく,サツキマスがかかりはじめました.丁寧に網からはずし,一匹ずつ体調と体重を量っては,移送用のコンテナに移しました.オス2個体,メス4個体の合計6個体を捕獲することができました.
 サツキマスを放流するのは,少し上流です.ここは,昨年度の産卵実績がある場所であり,上流部へも移動できます.内藤先生が放流したサツキマスは,みんなの前を泳ぎ去っていきました.最後に,川についての意見や感想を言い合って,今年の保全作業を終了しました.[しらかわかつのぶ]

みなさんの印象に残った物

「オスがメスのマネをする」「サツキマスの産卵ビデオ見て祖先を残す為一生けん命な事」「上からしか見た事がなかった産卵期の魚を間近で見る事が出来た」「サツキマスさわれたこと.」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「地道な調査,観察活動が重要であると思いました.」「内藤先生,高原の自然館の方,地元の方の協力によってサツキマスが沢山育つと良いと思います.」「また機会が有れば参加したい」「人の手をかして環境を守って行く大切さを知りました.」

写真

現地に行く前に,サツキマスについて学習.分類上の位置付けや繁殖生態を学んだ.
現地に行く前に,サツキマスについて学習.分類上の位置付けや繁殖生態を学んだ.水中で撮影された,貴重な写真.
水中で撮影された,貴重な写真.網を張る前に,そーっと覗き込むと,サツキマスがいた.
網を張る前に,そーっと覗き込むと,サツキマスがいた.当日はテレビの取材もやってきた.網を張るところをみんなで見学中.
当日はテレビの取材もやってきた.網を張るところをみんなで見学中.網を張っていく内藤先生と田村さん.
網を張っていく内藤先生と田村さん.サツキマスの遡上を阻む堰の直下で,水中観察をする内藤先生.
サツキマスの遡上を阻む堰の直下で,水中観察をする内藤先生.捕獲したサツキマスは,すべて体重と体長を計測した.
捕獲したサツキマスは,すべて体重と体長を計測した.捕獲したサツキマス.間近で体の模様などを見学できた.
捕獲したサツキマス.間近で体の模様などを見学できた.実際に手に持ってみて,重さを実感する.
実際に手に持ってみて,重さを実感する.堰の上流側に移動して,捕獲した6個体を放流した.
堰の上流側に移動して,捕獲した6個体を放流した.「しっかり産卵してくれよー」.
「しっかり産卵してくれよー」.最後に,質問や感想をお互いに言い合った.
最後に,質問や感想をお互いに言い合った.