エコカフェは「楽しもう!北広島町の生物多様性」を目的とした、誰でも参加できるトークイベントです。今年で3年目となり、町内4カ所にて実施を予定しています。
12月17日(日)に深々と雪が降り積もる芸北で、1回目のエコカフェが、「地域の食」をテーマに開催されましたので、レポートします。
遠くは島根県松江市からも参加があり、32名のみなさんと、お話とカフェを楽しみました、
今回の話し手は、大朝にある「ふぁーむbuffo」の岩崎奈穂さんと、芸北にある淨謙寺の淨謙恭子さんのお二方です。聞き手は広島大学の近藤俊明さんで、お菓子と飲み物は昭和レトロ雑貨と喫茶のお店「コルビジェ」による出張カフェで、おいしいコーヒーと緑茶、パウンドケーキ2種類をいただきました。
岩崎さんの農園の名前である「buffo」とは、イタリア語で楽しむという意味があり、農業を楽しみたいとの岩崎さんの思いから名付けた、というエピソードが披露されました。岩崎さんは大の動物好きだそうで、進学した北海道の大学で、牛にかかわる実習をしていた時に「あれ?牛のえさは輸入なんだ・・」と疑問に思ったことをきっかけに、自分で農業しようと考え、埼玉県で有機農法の勉強をし、1999年に大朝にUターンをして自然循環型の農業をスタートされました。現在は、鶏・鴨・ヤギ・犬・ねこなど約700匹の従業員に囲まれて、農場を運営されています。ここで従業員と表現したのは、ヤギは除草のため、犬は番犬、猫はエサなどを狙うネズミ対策とともに働く仲間だからという理由で、人間の従業員は岩崎さんだけ、というお話では参加者の笑いを誘っていました。鶏を平飼いし、合鴨農法で稲や鴨を育て、地域の人に卵を配達しながら、くず野菜を集めて鶏のエサにするという方法を聞く中で、農園を始める前から「鶏に人間の食べないものを食べてもらって農業をしていこう」との岩崎さんの考えも教えていただきました。
「地球上に生き物は1千種類いるが、その中で分けると生産者・消費者・分解者しかいない」と聞き手の近藤さんが相づちを打ち、参加者の興味をさらに引き出していました。
次は、淨謙寺でイタリアン精進料理を提供している淨謙恭子さんのお話です。嫁ぎ先であるお寺で精進料理をだしており、当時はカルチャーショックを受けられたそうです。
料理は「出汁も動物性のものを使わず作る」よう教えられことから話が始まり、かねてから自分の住む奥原地域で「何かできないか」と考えてた淨謙さんは、子育てが落ち着いた10年前、娘さんがきっかけで本願寺出版のイタリアン精進料理の本に出会ったそうです。
淨謙さんは、地元の野菜を使った自家製ソース・うつわ・癒しの空間の3つにこだわり、また食材を無駄にすることなく最後まで食べきることをポリシーとされています。
たとえば柚子、皮はピールや柚子胡椒に、種は種酒・最後のカスはお風呂へ入れて入浴剤としているそうです。また、野菜も、クズはお宝袋に入れて出汁をとったり、たい肥にしたりと最後まで使っています。
地元野菜を大切にして、本来なら捨てられてしまう「受粉のために育てたリンゴ」や広島在来の豆など、地域の人に作ってもらい料理を作られています。
たくさんの野菜が使われ、美しく盛られたお料理の数々に、会場のあちこちから「行ってみたいね。」「食べてみたい」という声があがっていました。
最近、お客様から「ごき(器)ねぶり」といううつわも舐りたくなるほどおいしい豆を紹介してもらったというお話もあり、食材や地域をたいせつにする淨謙さんの思いがあふれ出ていました。「精進料理は動物性を使わないことで、命の有難さに感謝するもの」近藤さんからの言葉に、大きく頷く場面も見られました。
参加者からの感想では、「淨謙寺の取り組みは、地域の者も元気が出ていて、とてもありがたい!」との言葉もありました。
最後に、主催の北広島町教育委員会の新中さんより、お二人の取り組みへの感想があり、「地域の中で資源を循環させ、地元の食材を使うことで、食から考える生物多様性保全となり、低酸素ライフスタイルを目指したい」という締めくくりで、第1回目エコカフェは閉会しました。
次回は、来年2月に実施予定とのアナウンスがありました。こちらも楽しみにしています。
(インターン:NPO法人三段峡-太田川流域研究会 本宮宏美)