霧ヶ谷湿原の保全」カテゴリーアーカイブ

【イベント報告】霧ヶ谷の植生調査 夏

昨年度に自然再生工事が完了した霧ヶ谷湿原で,工事直後の状態を調べるための植生調査を行いました.昨年にも,木道設置予定ルートに沿って調査をしましたが,木道設置工事のために重機が動いた影響が見られるため,今回の調査を「工事完了直後の調査」と位置付け,今後続けられるモニタリングの基礎データとすることにしました. 参加者9人が3つの斑に別れて,調査を進めていきました.今回は,大竹邦暁さん,佐久間智子さん,白川の3人が班長です.1m×1mの調査枠を設置し,枠の中に生えている植物を全て記録するとともに,種ごとに被度(どのくらい覆っているか)・郡度(どのくらいまとまって生えているか)・高さを記録し,写真を撮影しました. 同じように重機の影響を受けているように見えても,プロットごとに生えている植物の種類や繁茂状況は少しずつ異なっていたようです.多くの調査区で見られたのがミゾソバとイでした.また,アメリカセンダングサやフランスギクなど,外来種が多く生育する調査区もありました.一方で,外来種がほとんど見られない場所もあり,工事直後にも多様な植物群落が見られることが分かりました. 調査の後,調査をしながら感じたことを話し合いました.昨年は広く繁茂していた外来種が少なかったこと,水の流れが変わった場所があったことなどが感想として上がりました.雨の心配をしていましたが,ほとんど降られずに,12プロットの調査を1時間30分ほどで終えることができました.今後は,もう重機が入ることは無いはずです.今日の結果をもとに,静かに霧ヶ谷湿原の変化を見守って行きましょう.

赤ちゃんがいても,木道沿いなら調査に参加できる. 赤ちゃんがいても,木道沿いなら調査に参加できる.
3斑に別れて調査を進めた. 3斑に別れて調査を進めた.
小さな植物も見逃さないよう,じっくりとさがす. 小さな植物も見逃さないよう,じっくりとさがす.
植物の高さを測る. 植物の高さを測る.
最後に,それぞれ感じたことを共有して解散した. 最後に,それぞれ感じたことを共有して解散した.
プロット1(木道No.118番付近) プロット1(木道No.118番付近)
プロット2 プロット2
プロット3(木道No.107番付近) プロット3(木道No.107番付近)
プロット4(木道No.96番付近) プロット4(木道No.96番付近)
プロット5(木道No.86番付近) プロット5(木道No.86番付近)
プロット6(木道No.82番付近) プロット6(木道No.82番付近)
プロット7(木道No.77番付近) プロット7(木道No.77番付近)
プロット8(木道No.71番付近) プロット8(木道No.71番付近)
プロット9(木道No.68番付近) プロット9(木道No.68番付近)
プロット10(木道No.63番付近) プロット10(木道No.63番付近)
プロット11(木道No.47番付近) プロット11(木道No.47番付近)プロット12(木道No.51番付近)

プロット12(木道No.51番付近)

【イベント報告】カスミサンショウウオの産卵調査

風が冷たい朝でしたが,18名の参加者が高原の自然館に集合しました.毎年行われている両生類の産卵調査です.水辺のいきものの調査ということで,3歳から小学校中学年まで7名と,子供の参加も多くありました.まず高原の自然館内のパネル展示や模型を見ながら,内藤先生よりサンショウウオの生態や生息環境の説明を聞きました.サンショウウオにも様々な種類があり,芸北では4種類が生息しているとのことでした.参加者から質問も飛び出し,現地に行くのが楽しみになってきました.現地へ行く途中,道路沿いのコンクリートマスの中にカスミサンショウウオの卵塊があるというので立ち寄り,観察しました.卵塊の中でさらに卵胞に包まれた状態のカスミサンショウウオの赤ちゃんは,「胚」と呼ばれる状態でした.初めて卵塊を見た方もおられ,実物を見ることができ,びっくりしながらも喜んでいました.二川キャンプ場に車を止め,4班に分かれて霧ヶ谷湿原の両生類の産卵調査の開始です.工事により設置した水路以外にも,水がたまり自然に湿地になっているところを,注意深く観察します.卵や幼生,成体を見つけたら,場所や数を記録します.「あ,こっちに卵があるよー」「これはもうオタマジャクシになっているね」などと話しながら,どんどん進みます.カスミサンショウウオ,ヤマアカガエル,アマガエルなどの両生類以外にも,カナヘビ・アオダイショウ・コオイムシ・トビケラ・ヤゴ・オオルリ・オオタカなど色々な種類のいきものを見ることができました.また,ハルザキヤマガラシの花や,ヒメザゼンゾウやバイケイソウ,ハンカイソウの葉を見つけたりもしました.山際に咲いているコブシがとてもきれいでした.時間になったので,調査地からひきあげ,班ごとの報告をしました.カスミサンショウウオの卵塊を多く確認した班,ヤマアカガエルの卵塊や幼生を多く確認した班と,場所によっての結果があらわれました.最後に内藤先生にまとめをしていただき,自然再生事業の工事によって,湿地にすむいきものは増えているということが分かりました.寒い中でしたが,実際にいきものに触れることもでき楽しい観察会となりました.

高原の自然館内のパネルでサンショウウオの分布を説明する内藤先生. 高原の自然館内のパネルでサンショウウオの分布を説明する内藤先生.
「カスミサンショウウオの赤ちゃんって,こんな形なんだねー.あ,目がどこかわかるよ!」 「カスミサンショウウオの赤ちゃんって,こんな形なんだねー.あ,目がどこかわかるよ!」
調査地の霧ヶ谷湿原内へと進む. 調査地の霧ヶ谷湿原内へと進む.
GPSで場所をおとす「ポイント屋」さん,数や種類を確認して報告する「報告係」さん,データを書き込む「記入係」さんとの見事な連携プレーで調査は進む. GPSで場所をおとす「ポイント屋」さん,数や種類を確認して報告する「報告係」さん,データを書き込む「記入係」さんとの見事な連携プレーで調査は進む.
ヤマアカガエルを見つけたよ! ヤマアカガエルを見つけたよ!
カスミサンショウウオの卵のうを見つけた.透明なので,中の様子がよくわかる.じっくり観察. カスミサンショウウオの卵のうを見つけた.透明なので,中の様子がよくわかる.じっくり観察.
アマガエルの成体.きれいな緑色だった. アマガエルの成体.きれいな緑色だった.
道路に近く,流れのない水路にヤマアカガエルの卵塊がたくさん見られた. 道路に近く,流れのない水路にヤマアカガエルの卵塊がたくさん見られた.
ところどころで見かけたヒメザゼンソウの若葉. ところどころで見かけたヒメザゼンソウの若葉.
木道の下をのぞきこむ・・と水たまりになっていたところにヤマアカガエルの卵塊があった. 木道の下をのぞきこむ・・と水たまりになっていたところにヤマアカガエルの卵塊があった.
水路沿いに咲いていたハルザキヤマガラシ. 水路沿いに咲いていたハルザキヤマガラシ.
最後に各班からの報告.自分の班とは違う結果に,参加者も興味津々だった. 最後に各班からの報告.自分の班とは違う結果に,参加者も興味津々だった.

【イベント報告】自然再生勉強会

2007年から始まった広島県による自然再生事業の工事が完了しました.この機会に自然再生事業の全容や現地の様子,湿原の動植物についての勉強会を開催しました.47名の参加者のみなさんと,高原の自然館を出発し,水口谷湿原を通り,一旦道路にでて霧ヶ谷湿原のオープニングセレモニーに参加し,霧ヶ谷湿原の木道を歩くというコースで歩きました.昆虫担当の岩見先生は,湿地になっているところや,水路にザルをいれ,水中にすむいきものを紹介してくださいました.中でもサナエトンボとオニヤンマのヤゴが印象的でした.両生類・魚類担当の内藤先生からは,カスミサンショウウオの卵塊やヤマアカガエルのオタマジャクシを教えていただいたり,シマヘビやジムグリの赤ちゃんをつかまえ,生態を教えていただきました.ヘビにさわっているときの子どもたちの瞳は真剣で.きらきらと輝いていました.動物担当の上野先生からは,湿原の上を飛ぶハイタカを教えていただきました.植物担当の暮町先生,佐久間先生,和田先生からは,歩きながら見ることのできた,植物の名前や生態を教えていただきました.高原の自然館の白川学芸員は,工事による場所の変化やいきものの生息の変化など,自然再生事業全体のお話や,湿原の成り立ちやそこにすむいきものの生態など多くのことを説明しました.途中に雨が降り,大変寒い中での勉強会となりましたが,それぞれの専門の先生から.興味深いお話が聞けたり,寒い中だからこそ春を感じることができたりと,湿原の恵みを大いに体感しました.途中で参加したオープニングセレモニーでは,霧ヶ谷湿原の入り口のテープカットも行われ,完成した喜びをみんなで分かち合いました.様々な方に楽しんでもらえる場所,さらには湿原や自然について考えたり感じたりできる場所であり続けるよう,みんなで知恵と力を出し合い.この霧ヶ谷湿原を見守っていきたいと願います.

水口谷湿原へいく道から,急にお天気が崩れ,カサやカッパが必要となった. 水口谷湿原へいく道から,急にお天気が崩れ,カサやカッパが必要となった.
ハンカイソウのつぼみが少しだけ. ハンカイソウのつぼみが少しだけ.
ハンノキ林の中で,ハンノキや湿原性の植物について説明があった. ハンノキ林の中で,ハンノキや湿原性の植物について説明があった.
細い木道を歩ききったところで,ヤドリキを見つけ観察した. 細い木道を歩ききったところで,ヤドリキを見つけ観察した.
カスミサンショウウオの卵塊を発見. カスミサンショウウオの卵塊を発見.
霧ヶ谷湿原の観察路入り口のササのなかから,内藤先生が見つけた,シマヘビの幼蛇.ウロコの数を数えたり,模様をじっくり眺めたり,ちらちら出ている舌先が二つに分かれているのを確認したりと,子どもたちは大忙しだった. 霧ヶ谷湿原の観察路入り口のササのなかから,内藤先生が見つけた,シマヘビの幼蛇.ウロコの数を数えたり,模様をじっくり眺めたり,ちらちら出ている舌先が二つに分かれているのを確認したりと,子どもたちは大忙しだった.
オープニングセレモニー会場に着くと,あたたかい甘酒が迎えてくれた.かりお茶屋にて販売中. オープニングセレモニー会場に着くと,あたたかい甘酒が迎えてくれた.かりお茶屋にて販売中.
霧ヶ谷湿原の完成を祝って,テープカット.大きな拍手がわきあがった. 霧ヶ谷湿原の完成を祝って,テープカット.大きな拍手がわきあがった.
霧ヶ谷湿原の広い木道をすすんでゆく.全体が見渡せるよい場所だ. 霧ヶ谷湿原の広い木道をすすんでゆく.全体が見渡せるよい場所だ.
はらっぱーバッジも発見!近々仲間が増えるとか!? はらっぱーバッジも発見!近々仲間が増えるとか!?
岩見先生がザルを使って水の中をすくうと・・トビケラが見つかった.「見た目には何もいないかのように見えますが,実は水の中には多くのいきものがいるんですよ」と岩見先生. 岩見先生がザルを使って水の中をすくうと・・トビケラが見つかった.「見た目には何もいないかのように見えますが,実は水の中には多くのいきものがいるんですよ」と岩見先生.
まだ動きの鈍いカナヘビ. まだ動きの鈍いカナヘビ.
主水路の上流では,堰をつくり,土砂の流出を防ぐ工夫がされている.自然再生事業にてどのような工法が使われたのかを白川学芸員が説明中. 主水路の上流では,堰をつくり,土砂の流出を防ぐ工夫がされている.自然再生事業にてどのような工法が使われたのかを白川学芸員が説明中.
水辺をザルですくってみると,ヤゴを発見.大きい方がオニヤンマ.小さい方がサナエトンボ. 水辺をザルですくってみると,ヤゴを発見.大きい方がオニヤンマ.小さい方がサナエトンボ.
ジムグリの幼蛇.成体と比べると色が鮮やかだ. ジムグリの幼蛇.成体と比べると色が鮮やかだ.
丘の上から千町原を望む.気持ちのいい場所だ. 丘の上から千町原を望む.気持ちのいい場所だ.

【イベント案内】霧ヶ谷湿原の植生モニタリング 秋

前日の観察会では「寒い寒い」という声も聞かれましたが,調査の日はお日様が覗きました.今回の調査には,初めての人3人を含む7人が集まりました.まずは高原の自然館に集合し,再生事業の経過や,西中国山地自然史研究会の関わり,これまでの調査で分かったことなどを確認しました.基礎知識を共有したところで,霧ヶ谷に出発しました. 今回は,広島県が実施する遊歩道設置工事の最中なので,全員がヘルメットを被り,3斑に別れて調査地に向かいます.1m×1mの中に,どんな植物がどのくらい生育しているのか,見落としの無いように植生を調査していきました.遊歩道沿いに点々と設置された調査地には,夏の調査の際にダンポールを立てているので,簡単に見つかります.1区画の調査が終わった班は前に進み,次の調査地を調べる,という風に,追い越し・追い越されながら進んでいきました.調査地の中には,湿原生の植物が多いところもあれば,外来種ばかりのところ,種数が極端に少ないところなど,場所によって環境も植生も違うことが実感できました.お昼頃には調査を終え,調査結果の概要を報告しあいました.やはり,場所によって種組成に大きく違いがあり,外来種もたくさん見られるようでした.今後,アメリカセンダングサをはじめとする水田雑草が繁茂する場所ができるかもしれません.モニタリングを続けることが大事だと感じました.ともあれ,調査地を歩く間には,アケボノソウの群生や,たくさんのオオコオイムシも見ることができました.少しずつではありますが,ノイバラの薮だった場所が,湿原の性質を取り戻していると実感できました.

はじめに,高原の自然館で調査方法やこれまでの経緯を確認. はじめに,高原の自然館で調査方法やこれまでの経緯を確認.
再生が進む霧ヶ谷. 再生が進む霧ヶ谷.
ヘルメットを被って,いざ出発. ヘルメットを被って,いざ出発.
河川敷のような場所.湿地の植物は少ないが,種数は多い. 河川敷のような場所.湿地の植物は少ないが,種数は多い.
湿原が回復している場所.マアザミ,アブラガヤなどが生育していた. 湿原が回復している場所.マアザミ,アブラガヤなどが生育していた.
1班の調査風景. 1班の調査風景.
2班の調査風景.そして3班の様子は写していませんでした... 2班の調査風景.そして3班の様子は写していませんでした...
最後に,全員で調査結果を確認. 最後に,全員で調査結果を確認.
この日は中国新聞からも取材に来ていただきました. この日は中国新聞からも取材に来ていただきました.

【イベント報告】霧ヶ谷の観察会 秋のいきもの観察会

早朝から激しい雨が降る中,17名の参加者が自然館に集合しました.夏の観察会に続き,植物担当の和田先生,昆虫の岩見先生が講師です.自然館で湿原の概要についてお話頂いた後,霧ヶ谷湿原へ移動し,今年度の工事予定地で木道をつけるルートを歩きました.雨が降っているため,歩きにくい場所もありましたが,目に入ってくる植物や昆虫の説明を聞いていると,時間が経つのがとても早く感じました.ツリフネソウの蜜を吸うマルハナバチと花のつくりとの関係や,アケボノソウの蜜線が花びらにあることなど,植物と昆虫の密接な関係をユーモアを交えてのお話で,楽しみながら観察することができました.葉の裏でトンボが休んでいたり,しずくが付いたカンボクの実を眺めたりと,雨の中ならではの発見があった観察会となりました.夏と秋の観察会で,霧ヶ谷湿原の中を歩いてみると,湿地生の植物や動物が増えていることを感じることができました.来年には観察路が完成する予定なので,霧ヶ谷湿原はもっと身近な場所になることと思います.帰り道に見たオオヘリカメムシの匂いは,思った以上にいい匂いで驚きました.[こうのやよい]

最初に自然館の中で,自然再生事業についての説明があった.
最初に自然館の中で,自然再生事業についての説明があった.
霧ヶ谷湿原は工事中のため,ヘルメットを着用した.
霧ヶ谷湿原は工事中のため,ヘルメットを着用した.
雨の中イザ出発!
雨の中イザ出発!
雨で増水した水路.ごうごうと音をたてていた.
雨で増水した水路.ごうごうと音をたてていた.
キセルアザミの名前の由来「煙管」を実演しながら説明する和田先生.
キセルアザミの名前の由来「煙管」を実演しながら説明する和田先生.
ネナシカズラ!
ネナシカズラ!
強めの雨の中,活動している虫もわずかながら観察できた.
強めの雨の中,活動している虫もわずかながら観察できた.
イナゴにのど仏があることを初めて知った.
イナゴにのど仏があることを初めて知った.
サクラバハンノキの幼木.
サクラバハンノキの幼木.ヘラオオバコの葉は,本当にへらのようだ.
ヘラオオバコの葉は,本当にへらのようだ.ウナギをつかめるトゲがある、アキノウナギツカミ.みんなでトゲをさわってみた.
ウナギをつかめるトゲがある、アキノウナギツカミ.みんなでトゲをさわってみた.
ツリフネソウの花の中を観察する.雨宿りをしている虫もいた.
ツリフネソウの花の中を観察する.雨宿りをしている虫もいた.
真っ赤な実を多数つけたカンボク.雨の中で映える赤色.
真っ赤な実を多数つけたカンボク.雨の中で映える赤色.ミヤコグサの花.図鑑で調べると「脈根草」が名前の由来だった.
ミヤコグサの花.図鑑で調べると「脈根草」が名前の由来だった.
虫がとまると花粉がつくのか,ハギの花をさわって実験してみる.
虫がとまると花粉がつくのか,ハギの花をさわって実験してみる.
青リンゴのように甘酸っぱい香りがしたオオヘリカメムシ
青リンゴのように甘酸っぱい香りがしたオオヘリカメムシ
最後に,芸北で開催される草原サミットのご説明があった.
最後に,芸北で開催される草原サミットのご説明があった.