- 開催日時:2011年7月31日(日) 9:30
- 講師:内藤順一
少し雲がかかり,外に出るにはちょうど良い気温の中,芸北文化ホールに5名が集合しました.今回の講師は内藤先生です.最初に会場内でカワシンジュガイについて話しをしました.1986年の工事中の河川で発見され,それより前に確認されたのは15年前だったこと.芸北地区が生息域の最南端で,県や町の天然記念物や絶滅危惧種に指定されていること.アマゴに幼生を寄生させ,しばらく成長したあとに再び川底に戻ってくること.繁殖方法の判明や保護活動により,発見当初33個体だったのが,1200個体まで増えたことなどを教えていただきました.
その後,車で観察場所に移動して,カワシンジュガイを観察することになりました.川に入って間もなく,内藤先生がカワシンジュガイを発見されました.半身を川底に埋めている姿は,芸北地域で呼ばれている「立ち貝」という別名にふさわしいものでした.川の流れは思っていたよりも早く,貝の幼生が流されてしまわないか疑問に思いましたが「殻糸(かくし)とよばれる糸状のひものようなものを出し,石につけて,流されないように固定している」と説明されました.また流れの緩やかな川のふちにはアブラボテの幼生をみることが出来ました.「アブラボテはカワシンジュガイの殻内に卵を産みつけ,稚魚を守らせる方法で子孫を残し,そのカワシンジュガイはアマゴに幼生を寄生させることで,生息場所を広げていく.釣りや漁でアマゴが減ると,この2種類も減ってしまう」と内藤先生は言われました.この他にも,カワノボリやシュレーゲルアオガエル,ヒゲナガカワトビゲラの幼生などを観察することができました.生き物は単独で生きているのではなく,様々な別の生き物とつながることで生きていて,そのつながりを自分たちも感じることができた観察会となりました.[ありみつまさかず]※観察会での採集は広島県及び北広島町から許可を得て行っています.
みなさんの印象に残った物
「自然の姿のカワシンジュガイ,アブラボテ」「現地の川にいたカワシンジュガイ,小さい貝が殻糸をだして流されないようにしていること」「事前の座学(特に質問)」「今年もカワシンジュガイに会えて感激した」
参加したみなさんの感想(抜粋)
「目的の貝だけでなく,色んな魚もみることができました」「たくさんの方に聴いてほしい講座でした」「少人数だったので思ったこと質問することができ,その上で実際の川に行く,というのは事前知識が入って非常によかった」「毎年参加し,カワシンジュガイ,アブラボテ,アマゴの共生の深さが少しずつ分かってきた」
写真
文化ホールの教室でお話.写真は川に生息する二枚貝の種類について.
山の向こうを指差す内藤先生.似たような環境の川が流れているが,あちらにはカワシンジュガイは生息していないことを聴いた.
川に入ってカワシンジュガイを探す.
アブラボテの幼生をみつけた.
2匹のカワシンジュガイを発見!うっすらと口を開いている
手に取って見てみる.左右で泥の付き方が違うのは,半身を川底に埋めている証.
小さなシュレーゲルアオガエル.目の周りを見ることでアマガエルと区別が出来る.
腹部から産卵管を出しているアブラボテのメス.