雪原のトレッキング

  • 開催日時:2013年2月16日(土) 10:00
  • 講師:上野吉雄

 雪が時折降っては止む天候の中,高原の自然館前に16名が集まりました.
 今回は霧ヶ谷湿原に向かい,湿原内を回って,道路から戻るコースで,かんじきやスノーシューを履いて出発しました.先月の観察会では50センチほどあった積雪量はだいぶ減り,新雪が積もっても40センチほどで,冬の八幡を知る参加者の方も驚いていました.
 前日から降り始めた雪で動物たちの足跡が消えないか不安でしたが,「この降り方なら動物の足跡が見られるでしょう」という講師の上野先生の言葉に期待をしながら観察会が始まりました.
 出発をしてすぐにテンの足跡を見つけました.テンの足跡は道路の雪面から小さな建物に続いており,建物の壁には隙間から内部に入ろうとした爪あとがありました.テンは非常に身軽で,人の背丈よりも高い建物もかんたんに登っていくようで,他の建物にもテンが侵入しようとしたあとを見つけました.
 耳を澄ますとレンジャクの声が聞こえました.レンジャクは寄生植物であるヤドリギの実を食べて,その糞から種を運んでいく習性があるそうです.説明を聞いてる中で実際に姿を見ることが出来ました.誰も踏み込んでいない雪道には至る所にテンやウサギの足跡があり.行動範囲の広さを感じさせてくれます.他にも足跡の近くには食跡もあり,実を食べた枝先はナイフで切ったように鋭くなっていました.
 霧ヶ谷湿原に入ると,木道がどこにあるのか分からないくらい白く染まっており,皆さんおそるおそると湿原を進んで行きます.
 中腹にある川で,ユキクロカワゲラという昆虫や,カワモズクという藻類を水中で見つけました.カワゲラは,雪の上でも元気に歩き回り,参加者の皆さんを驚かせ,カワモズクは食べることができるらしく,実際に食べている方もおられました.味は無味に近いそうですが,食感はモズクによく似ているそうです.
 少し広い場所まで歩くと,北海道とここ八幡地区でしか確認されていないカラフトゴマフトビゲラの説明を聞きました.特殊な分布の仕方をしているという話に皆さん驚いていました.
 説明が終わり,自然館前まで戻ります.戻る道では,枯れた木にキツツキの一種であるアカゲラがエサを求めて木を突いた跡を見つけたり,川の近くでは,カワゲラの姿を先ほどよりも多く発見することが出来ました.
 今回は雪の状態があまり良くなく,ネズミなど動物の足跡や,ガガンボやトビムシなどの昆虫を見ることはできませんでしたが,上野先生の詳しい解説により,冬を生きる生き物の生態を垣間見ることができた楽しく充実した観察会となりました.

みなさんの印象に残った物

「テンのおしっこ,マーキング」「レンジャク」「ウサギがトゲのある植物を食べる」「あしあと(2)」「ユキクロカワゲラ 雪の上を歩くすがた(2)」「ユキクロカワゲラ,カワモズクを食べれたこと」「水せい生物」「ユキクロカワゲラのただひらすら雪上を歩いて行く話,時期ではないけれど,カラフトゴマフトビケラの話」「カワゲラ,雪の仲を歩いて上流まで行くのだと知り,ガンンバっているなあと思いました.ウサギの足跡は後ろ足が前につくというのもなるほどと思いました」「新雪の中の高原や湿原,回りの山々の美しさを自分の足で歩いたこと」「雪の中を歩くカワゲラがなぜわざわざこの時期に出てくるのかが興味を持った」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「秋におとずれた湿原の冬の様子が見れてよかったです」「ありがとうございました(2)」「テンのあしあとがいっぱいあって楽しかった.けど,つかれた」楽しかったです.雪上を歩いたのが久しぶりでした(3)」「新雪の上は歩きにくかった.今年は雪が少ない」「説明が専門的.良くも,悪くも」「はじめてでしたが,とても楽しかったです!3月もまた 参加したいです.最初の方ではカンジキが外れてご迷惑をおかけしました」「今まで雪の中の動植物に興味を持ったことはなかったですが,今回を機会に勉強を一つずつして,色々なものが見えるように,発見できるようになりたくなりました,」「なかなか体験出来ないことで色々な足跡が見れてよかった」

写真

霧ヶ谷に向けて,車道を歩く.この時期は除雪がされていないので,歩行者専用.
霧ヶ谷に向けて,車道を歩く.この時期は除雪がされていないので,歩行者専用.霧ヶ谷湿原に進む.雪は少ない.
霧ヶ谷湿原に進む.雪は少ない.羽のあるカワゲラの仲間.
羽のあるカワゲラの仲間.キツツキがつついた痕.冬でもエサが取れるので,キツツキは移動しない.
キツツキがつついた痕.冬でもエサが取れるので,キツツキは移動しない.ノウサギの食痕.クマイチゴを食べていた.
ノウサギの食痕.クマイチゴを食べていた.高原の自然館前でまとめをして解散.
高原の自然館前でまとめをして解散.