芸北トレッキングガイドの会」カテゴリーアーカイブ

広島県生物多様性人材育成講座 第五回目〜霧ヶ谷湿原 秋のいきもの観察会【野外講習】〜

9月27日(土)に実施された講座について、レポートします。
第五回目は野外講座として、「霧ヶ谷湿原 秋のいきもの観察会」に同行し、講師の知識や技術をフィールドで学びました。今回の受講生は4名です。

高原の自然館から霧ヶ谷湿原まで歩く中で、見つけた生き物を観察します。 第二回と講座と同じく講師は生き物の専門家です。2班に分かれ出発しました。
今回は「危険ないきもの」の紹介がしっかりとありました。時期柄スズメバチの活動も気になります。どのように注意するかを含め、参加者全員で「スズメバチ・クマ・マムシに加えてウルシに注意しよう」ということを共有しました。
霧ヶ谷湿原の下流から歩きました。子ども達は動いているいきものが気になります。一方大人は、種名や名前の由来、環境との関わりなどの話に聞き入っています。
対象が子どもから大人までと幅広いので、講師は様々な工夫を凝らして、観察会を盛り上げてくださいました。
例えば、クイズにして答えを探したり、「おっ!」という声をあげることで、子ども達の注意をひきつけ、より深く観察をするようにしむけていました。
また「笑顔で解説する」ことで、親しみやすさや、とけこみやすさを作り出していました。
前回課題だった一列になってしまい声が聞こえにくくなる木道では、マイクの音量を大きくするといった工夫もされたようです。
専門家の講師ならではの、最近の研究状況や、植物と昆虫の密な関係、同定する時のポイントなどをわかりやすく示してくださったり、実際に触れたり匂いをかいだりすることで、よりいっそういきものが身近になり、学びが多くなりました。
受講生からは、「帰宅してからのケアの仕方」「参加者にいきものをみつけてもらう工夫」「目線を途中で変える事」が参考になった、との声がありました。
グループ分けやまとめの仕方といった課題も出ましたが、安全で参加者が楽しく知識を身につける機会になりました。
ハリガネムシ・ヤマナメクジ・エンマコオロギ・ノシメトンボ・オオカマキリ・オオヘリカメムシ、タンナトリカブト・アケボノソウ・ツリフネソウ・イズモアザミ・アブラガヤ・マアザミなどたくさんのいきものを観察しました。

カメムシの匂いを体験中。青りんごの匂いがするってホント??

カメムシの匂いを体験中。青りんごの匂いがするってホント??

サラシナショウマの花の香りは格別!

サラシナショウマの花の香りは格別!

じっくり見て自分で発見することも大切。

じっくり見て自分で発見することも大切。

ヤマアカガエルの特長はどこだだろう?

ヤマアカガエルの特長はどこだだろう?

受講生と講師で振り返りを行なった。

受講生と講師で振り返りを行なった。

広島県生物多様性人材育成講座 第四回目〜広島県域の水辺の多様性〜

8月22日(金)に実施された講座について、レポートします。
広島県野生生物保護推進員で、NPO法人西中国山地自然史研究会副理事でもある内藤順一先生が、今回の講師です。広島県域で長年調査を続けておられる専門家の内藤先生から、「水辺の多様性」について学びます。
最初に生物多様性に由来する歴史や動きについてお話がありました。
世界的な動きから、日本での動き、そして広島県での生物多様性に関するの取り組みの紹介もありました。
「広島県は南方系・北方系の動物の交差点」と内藤先生は話されました。
長年調査されているいきものの中から、ゴキ、サツキマス、オヤニラミ、イシドジョウ、カワシンジュガイなど淡水魚や貝について、豊富な写真や分布資料をもとに、お話をいただきました。
サツキマスが「ひらべ」カジカが「ごり」アブラボテが「にがふな」と呼ばれているなど、方言での名称が残ってる事から、地域で身近な存在であることが伺えました。
広島県で個体数が減っている「スイゼンゼニタナゴ」は危機的であることも知りました。
サンショウウオやカエル・ヘビなど両生類・爬虫類の詳しい解説もありました。調査を続けておられる内藤先生ならではの貴重な情報がたくさんありました。
参加者からは「ヘビの脱皮はどうやってしているんですか?」「個体数が減っているスイゼンゼニタナゴはどんな貝に産卵するんですか?」「カワシンジュガイ・アブラボテ・アマゴの関係を詳しく聞きたい」といった質問がとびだしました。
最後に生物多様性を脅かしている要因の一つである外来種についてのお話です。
人間の都合で移入されたものが、在来種を脅かすという例が多く、驚きました。在来種との交雑があることや、駆除できる範囲を超えているものもいるとのことで、危機感を覚えました。
どのいきものが外来種を知るかということの重要性も感じました。
今回の講座では、生物多様性を支える考え方や方針に加え、水辺に生息するいきものの種類や生態について学びました。広島県域で保全すべき種も知る事ができました。
図鑑での検索方法などやおすすめの図鑑も教えていただきました。実践の中で役に立ちそうです。
先生のお話の中で、「関心をもってもらうことがいきものを守る第一歩だ」という言葉が印象に残りました。
この講座で学んだ事を、様々な人に話す事で、少しでもいきものに興味を持ってもらい、どんなことを大切にするかを広めるお手伝いができれば、と感じました。

生物多様性広島戦略と内藤先生の資料

生物多様性広島戦略と内藤先生の資料

レッドデータブックひろしま

レッドデータブックひろしま

サツキマスの解説

サツキマスの解説

図鑑の紹介中

図鑑の紹介中

挑戦科に挑戦!【芸北トレッキングガイドの会】

今日は芸北トレッキングガイドの会の研修で、ガイド5名と新人1名の計6名が、芸北中学校一年生の挑戦科の授業に参加させていただきました。
本年度から文部科学省の指定を受け、芸北小・中学校では「挑戦科」という新しい学習がスタートしました。これは日本中どこにもない、芸北オリジナルの学びだそうです。この科では、「自律して生きる力をつける」ことが目的とされ、社会をたくましく生きる基礎を作りたい、と学校からの説明がありました。
小一から中三まで、独自のプログラムが準備されています。
ただ学校の中での授業ではなく、地域ぐるみで、体験活動の講師や安全面での見守りを行なうことも特長の一つです。
中一の活動のひとつは「めざせ!芸北ジュニアトレッキングガイド」です。
まずはトレッキングガイドについて知り、ガイド検定を受け、実際に小学生の遠足や一般向けのガイドに同行し、ガイドを行なう、というのが大きな流れです。
今日は、「芸北ジュニアトレッキングガイド検定試験」があるとのことで、私たちガイドも授業を聞き、検定も受験しました。

☆ガイドさんによる自己紹介の様子☆IMG_2567

先生は、しらかわハカセ(高原の自然館学芸員)です。「ガイドさんってどんな人?」という質問から始まったグループワークで、楽しく学びがスタート。

・道案内をする人
・植物などの知識がある人
・やさしそうな人
・いつも笑顔な人
・安心安全を届けられる人・・・・

などたくさんの回答があがりました。

これらをガイドする時に必要な「意識・知識・技術」という3つのカテゴリに、しらかわハカセが分けていきます。
意識や知識が必要なことが多いんだろうなぁという予想に反し、技術でまかなうことができるという解説に、驚きました。また「意識も技術も必要」といった「総合力」の必要性には大きく納得しました。これぞ、挑戦科の成果ではないか、という感想も持ちました。

また、ガイド(案内人)とはどんな仕事か?という話から発展し、インタープリター(自然の中でおこっていることを通訳する人)という概念、レンジャー(保護官)・キュレーター(学芸員)といった社会で重要な役割を果たす職業についてのお話も貴重でした。

次に実際ガイドをする時のテクニックや心がまえを聞きます。
中学生はしらかわハカセの説明に熱心に耳を傾け、メモをとり、姿勢よく授業を受けていた事が印象的でした。

・ガイドにとって一番重要なことは、安全・安心を優先する
・自信を持って挑むには、下見や予習が必要
・時には沈黙も効果的であること・・・

などなど多岐にわたるレクチャーでした。

☆しらかわハカセによるレクチャーの様子☆IMG_2569

いよいよ検定試験!
緊張の面持ちで、挑みます。
この問題は先生方が作ったそうですが、ガイドさんたちも悩み悩み書き込んでいました。

☆検定試験にドキドキ☆IMG_2579

その後答え合わせをしつつグループワーク。
ガイドさんと生徒との交流もしながら、わいわいと楽しい時間でした。
この検定を通じて、自分なりのガイド像が見えてきたのではないでしょうか?

みっちり4時間の授業でしたが、自分で考え、学び、一歩づつ芸北ジュニアトレッキングガイドに近づいていく姿は、たのもしくもあり、負けていられないなーという気持ちになりました。

☆班ごとに答え合わせ☆IMG_2585

経験や知識を惜しみなく、そして難しいことをわかりやすく伝えてくれたしらかわハカセの授業は、価値があり、有益なものでした。
芸北のすばらしさを、自分なりに体現できる子供が育成されることを切に願います。
芸北トレッキングガイドの会のメンバーも、中学生の姿に刺激を受け、これからの活動にも力が入る事でしょう。
とてもよい挑戦科の授業でした。