聖湖(樽床ダム)の底には集落が沈んでいます。そこではダムが建設される昭和32年まで74戸の農家が暮らしていたそうです。
現在は樽床地域の典型的な建物であった「中門造り」で、江戸中期に建てられた清水兼一氏宅が移築され、国の重要有形民俗文化財として指定されています。
高度経済成長の波に呑まれ、生活様式が一変するまでこの辺りの農家の生活はほとんど自給自足だったため、農業だけでなく林業や紡績業も営んでいたようで、そんな日々の暮らしで精一杯な中で、ささやかな楽しみとして俳句を読んでいたのではないでしょうか。10月8日から11月28日まで樽床集落で活動していた俳句同好会の作品と古写真が50点以上展示されています。日常や風景に感嘆したり、皮肉めいてみたりと、当時の生活に素朴ながらも温かみを感じます。
隣の博物館では実際に農家の暮らしを支えてきた約480点もの道具が展示されており、道具の隅々から当時の暮らしの大変さや良さがひしひしと伝わってきます。
当時の暮らしを深く感じ、学べられる場所です。日常を楽しみながら読まれた作品を、ぜひ見に来て下さい。今は亡き樽床の温もりに触れられるかもしれません。