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【イベント報告】カスミサンショウウオの産卵調査

  • 開催日時:2015年4月29日(水) 9:30
  • 講師:内藤順一

今年も霧ヶ谷湿原において,カスミサンショウウオの産卵調査が行われました.かつて湿原であった場所が牧場造成工事によって乾燥し,その後八幡湿原自然再生事業によって導水路が設置され,湿原が再生されつつあるのが現在の霧ヶ谷湿原です.去年は成体も観察されたということで,今年はどうかと半ば期待に胸を躍らせながらの調査を開始しました.
まずは高原の自然館の展示コーナーで,講師の内藤先生にサンショウウオの種類や生態について解説していただきました.展示コーナーには様々な標本や分布図が展示されているので,目で確認しながらの解説はとてもわかりやすく,勉強になりました.
今回の調査は,カスミサンショウウオを中心に行います.北広島町で見られる他のサンショウウオは渓流など水の流れがある場所に産卵するのに対し,カスミサンショウウオだけは湿地や湿原に卵を産み,幼生もそこで育ちます.親は通常,湿原周辺の山林に生息し,産卵の時期になると湿原にやってくるそうです.湿原が無くなればカスミサンショウウオが卵を産める場所もなくなってしまうので,彼らにとって湿原は本当に大切な場所なのです.霧ヶ谷湿原も,湿地化が進み,産卵場所も少しずつ増えてきているそうです.
館内でレクチャーを終えたあと,内藤先生の班と,白川学芸員の班に分かれていざ出発!天気も良く,気温も暖かで風もなく,絶好の調査日和です.調査現場では内藤先生から,水際での調査の方法を初めての参加者にもわかりやすく教えて頂き,調査を開始しました.「イヌツゲがある場所で見つかりやすい」「流れがあるところよりも,流れがないところに卵がある」などのアドバイスを頂き,ぬかるみに格闘しながら探し始めました.しばらくすると,あちこちで「おったー!!」「こっちもあったよー!!」「これ大きいわ!」という歓声があがり,最初は怖がっていた参加者も,いつの間にか率先して湿原に手を突っ込んで卵塊を探しているという,うれしい光景も見られました.今回参加最年少のお子さんも,自力で卵塊を発見することが出来,とても満足気な笑みを見せてくれていました.私たちの班が見つけたものは,尾芽胚中期から尾芽胚後期のカスミサンショウウオの卵塊がたくさんとアマガエル一匹で,残念ながら成体は見つけることができませんでした.もう一つの班は,カスミサンショウウオとヤマアカガエルの卵塊,ヤマアカガエルの成体,オオコオイムシを見つけたそうです.カスミサンショウウオの成体は,今年は両班とも空振り.来年の調査に期待です.
この調査では,参加者が専門家と一緒に調査をすることで,広範囲を調べることができます.なおかつカスミサンショウウオをはじめとした湿地帯に生息する生きものの生態や生息状況を確認できることで,多くの方々に生物多様性の重要性を実感していただける大切な場になっていると思います.各地で湿原の面積の減少が進む中,少しでも湿原の生きものや彼らを取り巻く生息環境の現状について興味を持っていただければと思います.
今年の調査は本当に天候も良く,皆さんに楽しんでいただけたのではないでしょうか?来年も良い天気でありますよーに!!(まえだふさ)

みなさんの印象に残った物

「やっと卵を見つけることができました。」「卵でなく、えらがある状態を見れた。」「卵を見つけたことです。」「見つけることができず残念。」「長靴半分まで埋もれて、ズコッと抜けた時のふしぎな感覚。
もしかして何か卵をつぶしていないか不安になったこと。」「たまごがとれよかった。」「先生の説明、たまごを見つけたこと。」「たまごを見つけた時の子供の笑顔」「たまごを見つけたこと。」「たまごをみつけたこと」「サンショウウオのたまごが見れたこと。」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「楽しかったです。」「一つも見つけれなかった。」「楽しかったです。また参加させてください。」「とても楽しかった。」「なかなか見つからなくて、昨年のアドバイスを思い出しながら見つけることができてよかった。」「つぎもいきたい。」「楽しかったです。また参加したいです。」「貴重な体験でした。」「気持ち悪いと思っていたが、見つけると楽しくなってきました。」「すごくたのしかった。」「湿原に来ることがないので面白かったです。」

具体的に

「質問にこたえていただきためになりました。」「とてもわかりやすくてよかった。」「先生の説明が上手。やさしい。」

自由記入

「来年はもっとたくさん見つかるといいですね。」「次は母より見つけたいです。」「ありがとうございました。」「楽しかったです。」

写真

自然館の中で、サンショウウオについて説明する内藤先生と、真剣に聞き入る参加者さんたち。
自然館の中で、サンショウウオについて説明する内藤先生と、真剣に聞き入る参加者さんたち。調査現場に出発!
調査現場に出発!先生から説明を受けて、さあ調査開始。ちゃんと卵塊を見つけられるかな?
先生から説明を受けて、さあ調査開始。ちゃんと卵塊を見つけられるかな?カスミサンショウウオの卵塊を発見しました。
カスミサンショウウオの卵塊を発見しました。興味津々で卵塊を見つめる参加者の皆さん。
興味津々で卵塊を見つめる参加者の皆さん。泥も気にせず、みんなで一生懸命探します。
泥も気にせず、みんなで一生懸命探します。きちんと成果も発表できました。
きちんと成果も発表できました。

2014年度「中国ろうきんNPO寄付システム」助成金を授与されました

3月10日にメルパルク広島にて、2014年度「中国ろうきんNPO寄付システム」の助成金授与式が行なわれましたので報告します。
中国ろうきんNPO寄付システムとは、日本で唯一の非営利の福祉金融機関である“ろうきん”様が、「NPOを支える事が働く人とその家族、そしてだれもが安心して暮らせる地域社会づくりにつながる」という趣旨で、この寄付システムを設けておられます。中国労働金庫に普通預金口座を開設されている方々から、NPOの活動分野ごとに寄付いただいたお金を、書類審査によって決定した団体に配分するシステムで、ひろしまNPOセンター様がこの事務局を担っておられます。
認定NPO法人西中国山地自然史研究会は、「環境の保全を図る活動分野」として、25団体のエントリーから、選考いただきました。
「認定NPO法人の認定取得」と「活動の充実」が評価されたと聞きました。
授与式でのごあいさつの中にあったように、「尊いお金をいただき、社会貢献活動に活かす」というところをしっかりと受け止め、私たちの使命である「西中国山地の豊かな自然を保全し、地域と連携し、持続可能な地域社会の実現する」ことを目指します。
他にも、NPOを立ち上げた団体や各分野で活躍されてる様々な団体の顔ぶれがあり、力強さを感じた授与式でした。

授与式1

授与式2

「自己理解・対人関係とチームビルディング」研修を実施しました

「自己理解・対人関係とチームビルディング」研修を実施しました

NPO法人西中国山地自然史研究会の職場研修として、「自己理解・対人関係とチームビルディング」を行ないました。
異文化コミュニケーションの専門家であり、MBTIの認定ユーザーでもある渡邉ニコル先生にお越しいただき、3名を対象に研修をしていただきました。
今回の研修の目的は、自己への理解を深め、性格の指向を理解し、それを職場内のチーム力に活かし、人間関係の構築をスムースに図るというものです。
まずは自己紹介をし、研修で達成したいことを一人づつが述べます。先生からは「今回の研修では、違いを理解したり、似ていると盲点が出てくるので、気づきを作りましょう」とあいさつがありました。
その後のワークで、「人間として大切にしている価値観」「仕事上で大切にしている価値観」を書き込み発表しました。
これはとても難しくて、悩みましたが、このワークから私たち3名のチームで共有している価値観が現れました。

・身の丈であること
・前向きであること
・情報共有
・長期的な視点
・自然

次に、MBTIテストを行ないました。世界で使われている性格分析ツールで、自分と他人との性格の違いを理解するのに役立つツールです。これはあくまで本人の指向を図るもので個人の能力ではありません、と先生から十分な説明があったあと、受検をしました。
4つの指標の講義を受け、エクササイズを交えながら、自己想定のタイプを書き込みました。この間のセッションが非常にユニークで、知っていたつもりの自分や仲間の姿が実は違ってみえてきました。
その後、受検の報告結果タイプも確認しました。
テキストを使って、自分のタイプを知ったあと、仲間のタイプも認識しました。
ここまでで、知らなかった自分の性格の強みや、組織に貢献している場面、反対に盲点や弱点を客観的に知る事ができました。
「みんなすばらしい面があり、それは周囲の人への贈り物なのですよ」という先生からのお言葉がありました。
周囲に与える印象や今後の成長に向けての課題、大きなストレスにさらされるとどんな行動をとるか?をお互いが知る事で、調和がとれるようになるでしょう。
さらに、チーム編のテキストを使い、私たちの職場でのバランスや特性がみえてきました。
お互いの信頼性を高め、それぞれの強みを活かし、人間的にも組織的にも大きく成長できるよう、この結果を職場に活用したいと考えました。
「今よりもっと相手を認めることができた」「自分のことが客観的に見れた」「意思疎通の大切さとこれからの課題がみえた」と受講後の感想が出ました。
とても貴重な研修会となり、これからの事業に大変有効な一日となりました。

研修風景。とてもリラックスして受講した。

研修風景。とてもリラックスして受講した。

2冊テキストを使用した

2冊テキストを使用した

メンバーの共有価値観を書き出した。

メンバーの共有価値観を書き出した。

渡邉ニコル先生は幅広い研修メニューをお持ちの講師で、東京や広島で御活躍中

渡邉ニコル先生は幅広い研修メニューをお持ちの講師で、東京や広島で御活躍中

広島県生物多様性人材育成講座 第八回目〜生物多様性とは〜

2月24日(火)に実施された講座について、レポートします。

広島県生物多様性人材育成講座の8回目が開催されました。第1回目の講座と同じく高原の自然館の学芸員しらかわハカセが、今回の講師です。
この講座は今回が最後の回です。改めて「生物多様性とは何か?」を学びます。

受講生11名とスタッフ2名がグループに分かれ、テーブルに着きました。
しらかわハカセのお話は「改めてもう一度、“生物多様性の正体とは?”」というフレーズで始まりました。

北広島町では全国の自治体に先駆けて、生物多様性の保全の条例が制定されています。その取り組みの独自性や内容について詳しく解説していただきました。
様々な生物が息づいていることを「生物多様性」とし、その関係性がとぎれずにつながっていることを指します。私たちのフィールドでは現在どのような状況でしょう?3つの危機を通して、そんな話題をグループでも話しました。

またしらかわハカセはたくさんの書籍を紹介されました。
県内外の生物多様性や環境に関わる書籍です。これらは「どこで何が調べられているか。住所録のようなもの。」だそうです。しかし、「この地域で何を守るのか、何を大事にするのか」が書かれている書籍はたくさんはありません。

そこで、「自分たちだったらどの本を作りたい?」というグループへの問いかけがありました。グループワークでは「豊岡の戦略がナイス。いきものだけじゃない地域のいいところが書いてある。自分の地域にも欲しい。人が大事。地元を知る事が大事。」「山菜の食べ方。動物の食べ方。山で生きる為のノウハウ。昔を知り、未来に伝えたい。」「植物の方言。地域独特の言葉が興味深い。」といった意見が出ました。
このことから、データを集め、形に残し、過去を積み重ねることは、とても需要なことである、と気づきました。

北広島町生物多様性の保全に関する条例は、町民の豊かな生活を保証することが目的で作られています。そこで、町民にとっての「豊かさ」とは何か、が大切になってきます。
しらかわハカセはそれを「生物多様性は農村の文化や行事が育んできた。ここのつながりがとぎれようとしているので、制度・経済の観点からも、社会のしくみを整え、地域のアイデンティティを再認識する」ことが、豊かさだと位置づけられました。そのことに、受講生も共感し、大きくうなづいていました。

具体例として、芸北せどやま再生事業の紹介もあり、「保全のための保全から、活用のための保全(管理)へ」という非常に重要なキーワードを学びました。

まとめでは、4つのことを示していただき、生物多様性の正体に少し近づけたような気がしました。

受講生から「画一化された都市の話を聞いて、それを実感している。商店が消えている。地元に残るものがないことを改めて感じた。」という経済的視点の感想や、「生物多様性を自分の暮らしの中に見つける事ができ、今が豊かだということを感じた。」といった発見の感想、「地元での意識の統一化の工夫は?」といったテクニックへの質問など、話題が尽きない講座となりました。

全8回の講座を通して、少しでも生物多様性について学び、伝える技術が身に付いていただければ嬉しく思います。
最後に、受講回数の規定により講座修了と認められた4名に、広島県自然環境課の村田さんより、修了証書が授与されました。
これからも、受講生たちが、この講座で培った知識・技術・意識を持って、各フィールドでのご活躍されることを祈りながら、閉講としました。

手を広げるとオープンな関係を示せる、とのことで早速実践。

手を広げるとオープンな関係を示せる、とのことで早速実践。

修了書授与

修了書授与

グループワークの様子。

グループワークの様子。

熱心に聞き入る受講生。

熱心に聞き入る受講生。

「植物名の方言は興味深いねー」

「植物名の方言は興味深いねー」

たくさんの書籍・おすすめ本もおしえてもらった。

たくさんの書籍・おすすめ本もおしえてもらった。

「豊岡の戦略はすごいね」

「豊岡の戦略はすごいね」

最後の回は意見がたくさん出て盛り上がった!

最後の回は意見がたくさん出て盛り上がった!

しらかわハカセが講師とあって、いつもより多い受講生。

しらかわハカセが講師とあって、いつもより多い受講生。

広島県生物多様性人材育成講座 第七回目〜雪原のトレッキング【野外講習】〜

2月8日(日)に実施された講座について、レポートします。

第七回目は野外講座として、「雪原のトレッキング」に同行し、講師の知識や技術をフィールドで学びました。今回の受講生は4名です。

冬まっただなかの八幡高原は、積雪が120センチを越えています。雪が降り続く中での開催となりました。
最初に高原の自然館を見学し、おーいの丘を経由し、山際を通り、千町原を通るコースです。その中で、見つけた生き物やフィールドサインを観察します。 講師は生き物の専門家2名です。2班に分かれ出発しました。
雪上の歩き方、普段歩けない所を歩ける反面危険があることなどのの注意点を共有しました。
かんじきの履き方は、芸北でガイドをしている2名が上手に誘導することができました。
テンの足跡、ウサギの足跡・食跡など、姿はみえないものの、サインがところどころにあります。
よーく見ると雪の上には小さな小さな生き物もいます。
「これは、トビムシの仲間。おなかにバネのようなものがあって飛び跳ねるんだよ」と、小さな子どもでも分かるような説明で始まりました。
最初に講師がめあてとして、「冬に見れる繭があるので、みんなで探そう!」のミッションが発令!
その通りに、山際ではクリの木にヤママユという蛾の仲間の繭を見つけました。黄緑色のきれいな繭で、そこで講師からヤママユの生活史などの説明がありました。
図鑑で見たよりも少しくすんだ色にみえましたが、フィールドで見る事ができた喜びが伝わってきました。

そのように、最初に自然館の中や図鑑で観察できるものを示し、実際にフィールドで見て詳しく説明する、という手法は子どもから大人にしっかりと伝わり、見つける楽しさも与えられるということがわかりました。
これより講師の知識を、工夫次第でより効果的に伝えることができるという学びになりました。
野外活動の課題の一つ、一列になってしまい声が聞こえにくくなることは、雪の上でも同じでしたが、間に伝達者としてスタッフが入ったこともよかったようです。
後の振り返りの場で、受講生からは「初心者と経験者での別プログラムの提案」や「生き物だけでなく雪や天気に関する知識」「子どもが飽きた時の対処法」など様々な意見が出ました。
雪上という通常とは違った状況で、楽しく安全に自然について学べる場を設け、専門的な知識をもって講師の知識や技術で、冬ならではの生物の多様性が感じられた観察会、そして講座となりました。

ウサギが食べた跡

ウサギが食べた跡

おーいの丘に向けて出発!!

おーいの丘に向けて出発!!

後ろのグループにもわかるように、キツネの足跡

後ろのグループにもわかるように、キツネの足跡

ヤママユの繭を発見!

ヤママユの繭を発見!

テンの足跡を示す講師

テンの足跡を示す講師