霧ヶ谷湿原の保全」カテゴリーアーカイブ

【イベント報告】霧ヶ谷湿原の植生モニタリング 夏

霧ヶ谷湿原の再生地で行う,はじめての植生モニタリングには,6人の参加者が集いました.調査に入る前に,高原の自然館内で,これまでの調査結果や,今日の調査目的を確認しました.参加者の認識を共有した後,快晴の空の下,現地に向かい,打合せをした後で,3つの班に分かれました.少人数だったこともあり,慣れた調子で調査を進めました.今回の調査は,秋以降も,年2回の頻度で続けていく予定なので,散策道の設置が予定されているルートに添って,行われました.これは,工事完了後も,湿地にできるだけ踏み込まずに調査ができるように,という配慮からです. 13時近くに,予定していた14地点の調査を終えました.各班の状況を報告し,それぞれの印象を発表しました.イが優占する場所や,工事後のような場所でも,見た目よりもかなり種数が多いことが分かりました.全ての班を通じて,最も種数が多い地点では,1m×1mの中に26種が確認されました.一方,最も種数が少なかったミゾソバの群落では,わずか6種が確認されたのみでした.実際に調査してみると,実験地とも状況がかなり異なることが分かりました.特に,工事の際に重機で土を動かした場所ではイが繁茂し,土を動かさずに水が廻った場所ではマアザミ群落に近づいていることが分かりました.今後も,どのように植生が変化していくか楽しみです.第1回の調査として,良い調査ができたと感じました.

ミゾソバが占有していたプロット. ミゾソバが占有していたプロット.
フランス菊のお花畑.外来種の強さに驚く.見た目はきれいでも,思いは複雑. フランス菊のお花畑.外来種の強さに驚く.見た目はきれいでも,思いは複雑.
水辺には,工事の影響が見られた. 水辺には,工事の影響が見られた.
1m×1mの中にある植物を,全て記録した. 1m×1mの中にある植物を,全て記録した.
右側が1班,左側が2班のメンバー.気温が高く,日差しも強い日だったので汗だくになりつつ調査した. 右側が1班,左側が2班のメンバー.気温が高く,日差しも強い日だったので汗だくになりつつ調査した.
傍らのノイバラにとまっていた,小さなゾウムシ. 傍らのノイバラにとまっていた,小さなゾウムシ.
最後に各班の様子を発表しあった. 最後に各班の様子を発表しあった.

【イベント報告】カスミサンショウウオの産卵調査

霧ヶ谷湿原に導水路が張り巡らされる工事が終了して,はじめてのモニタリングです.昨年の調査では,補助導水路にたくさんの卵塊が見られました.また,カスミサンショウウオも湿原内に産卵していました.さて,今年はどうでしょうか?高原の自然館でサンショウウオについてのレクチャーを受けた後,3人のキッズを含む10人で調査に向かいました.
はじめに,「カスミサンショウウオの産卵環境」を観察し,どのような場所に,どのような状態で産卵するのかを確認しました.このときに,卵塊を守る親も見ることができました.自然状態での産卵を確認した後は,いよいよ再生事業地での調査開始です.2班に分かれて,川の両岸を上りながら,導水路の中に産み付けられた卵塊を探しました.今回はGPSを使って位置を記録したので,調査票への記入が楽にできました.お昼までに調査した,約1/3程度の範囲では,ヤマアカガエルの幼生とアカガエルの卵塊が多く見られ,アマガエルも産卵していました.ただ,昨年は見られたヒキガエルや,水路内のカスミサンショウウオの卵塊は確認できませんでした.ちなみに,午後から内藤先生,スタッフなど数人で行った補足調査では,ヒキガエルの幼生が確認できました.カスミサンショウウオも,最整地内にできた湿地に,本来の姿で産卵していました.一昨年までならば排水升に落ちて無駄になっていたはずの個体が,再生事業によって,産卵場所を得たというのは嬉しい結果でした.参加した子供達にとってはミズカマキリやオオコオイムシを観察できたことが,卵塊が増えていることよりも嬉しかったようですが・・・.
内藤先生からは,時間はかかるだろうが湿地内へのカスミサンショウウオ個体群の再生も可能だろうというコメントをいただきました.これからも研究会でしっかりと見守っていきましょう.[しらかわ]

高原の自然館で,広島県のサンショウウオについて説明を聞いた.
高原の自然館で,広島県のサンショウウオについて説明を聞いた.
卵塊と親が見つかった.
卵塊と親が見つかった.恐る恐る触ってみる.
恐る恐る触ってみる.
いよいよ調査開始.こちらは左岸チーム
いよいよ調査開始.こちらは左岸チーム
水路をくまなく探していく.
水路をくまなく探していく.
ヤマカガシがいたので,束の間,しっかり観察.
ヤマカガシがいたので,束の間,しっかり観察.
「カスミおったよー」の内藤先生の声に向かう右岸チーム.
「カスミおったよー」の内藤先生の声に向かう右岸チーム.
産み付けられたばかりのニホンアカガエルの卵塊.
産み付けられたばかりのニホンアカガエルの卵塊.
ヒキガエルは,ひも状の卵塊を生む.幼生は尾芽胚の状態で孵化する.
ヒキガエルは,ひも状の卵塊を生む.幼生は尾芽胚の状態で孵化する.
茶色くて大きいのがヤマアカガエル,真っ黒で小さいのがヒキガエル.
茶色くて大きいのがヤマアカガエル,真っ黒で小さいのがヒキガエル.
P4290004
この卵塊は胚が育った状態
最後に各班の状況を報告した.報告中もヤマカガシに見入る子ども達.
最後に各班の状況を報告した.報告中もヤマカガシに見入る子ども達.
卵塊を探しながら,カスミサンショウウオの産卵環境を観察する.
卵塊を探しながら,カスミサンショウウオの産卵環境を観察する.

【イベント報告】霧ヶ谷実験地の植生調査

秋晴れの空のもと,霧ヶ谷実験地の植生調査に14名のみなさんが集まってくださいました.この実験地は,現在行われている霧ヶ谷湿原の自然再生事業を支えてきた重要な場所です.今回で7年目を迎える植生調査となりました.最初に自然館の中で集合し,白川学芸員より,なぜこの調査が始まったのか,またどんな役割を果たしているのか,再生事業地の状況などを,パンフレットをみながら,多岐に渡る説明がありました.植生調査には初参加の方も数名いらっしゃいましたが,みなさん真剣な面持ちで説明に聞き入っていました.調査の前に,去年工事が終了している自然再生事業地を見学しました.水が廻っている様子や,導水路に生き物が生息している様子も見ることができました.子ども達が水の冷たさに驚いていたのが印象的でした.その後実験地に移動し,3班に分かれ,調査開始です.プロット番号の場所を探し,ポールを設置します.1m×1mの範囲の中の植物名をすべて書き出し,高さや状態などを計測します.場所により少しずつ植生が違っていたのが興味深かったです.また,私が調査した場所にはすべてカラコギカエデがあったので,種が良く飛ぶからなのかなと想像しました.ノイバラのとげの痛さと,思った以上の日差しにまいりながらも調査を終えました.その後,今年の工事予定地を見学しました.まだ木を切っただけの為,去年の工事地と比べてみると,ずいぶん殺風景に見えます.これから水を廻すための工事が始まるそうですが,去年の工事地と同様に,湿原化を見守ることのできる貴重な場所です.どんなふうに変化していくのか,楽しみになりました.霧ヶ谷実験地の植生調査を続けてきたことが,自然再生事業につながっていると実感することもできました.今回で実験地の植生調査は一旦終了し,今度は再生事業地を見ていく予定です.調査に協力してくださったみなさま,ありがとうございました.

八幡湿原自然再生事業のパンフレットを見ながら,霧ヶ谷湿原のすがたを確認した.
八幡湿原自然再生事業のパンフレットを見ながら,霧ヶ谷湿原のすがたを確認した.
現地にて調査方法を詳しく教えて頂く.
現地にて調査方法を詳しく教えて頂く.
1班は即席班ながら,すらすらと植物名がでてきて,調査がはかどった.
1班は即席班ながら,すらすらと植物名がでてきて,調査がはかどった.
葉の明点の有無を確認中.
葉の明点の有無を確認中.
このプロットのほとんどが倒れたイに覆われていた.
このプロットのほとんどが倒れたイに覆われていた.
2班の調査はどんどんと進んでいた.
2班の調査はどんどんと進んでいた.
3班の様子.
3班の様子.
鳥の巣を発見.ハンモック状にぶらさがっていた.
鳥の巣を発見.ハンモック状にぶらさがっていた.
全員集合し各班の様子を報告しあう.
全員集合し各班の様子を報告しあう.
調査終了後にみんなで記念撮影.「おつかれさまでしたー」
調査終了後にみんなで記念撮影.「おつかれさまでしたー」
去年の工事地.湿地生の植物や生物の姿をしっかりと見学.
去年の工事地.湿地生の植物や生物の姿をしっかりと見学.
今年の工事地の三面張り水路を見学.ここを取水堰にし,導水路を設置する.
今年の工事地の三面張り水路を見学.ここを取水堰にし,導水路を設置する.

【イベント報告】霧ヶ谷実験地の植生調査

その朝は強い雨と雷で早朝に目が覚めました.雨だけならなんとかなるのですが,雷がひどく続くようなら中止も考えないといけません.そもそも参加者の方達が来られないかもしれません.それでも,研究会の携帯電話は鳴りませんでした.集合時間が近づくにつれ,次第に雨脚も弱くなり,参加者のみなさんも集まってきました.事務局の心配を余所に,みなさんはやる気満々です.まず,昨年までの経過について,学会で発表した内容を佐久間さんが紹介してくれました.再生事業の現場を見るのもはじめて,という方もあったので,まずは実際に再生が行われている現場を観察してから,3班に分かれて調査を開始しました.今回の調査でも,ずいぶんと湿地の植物が増えているような印象でした.また,実験地内のカラコギカエデが弱っていることが,目に見えて分かりました.水をまわしただけでも,湿地の植生に近づいていることが実感できました.実験地のまわりでは,ヒメシジミが飛び交い,冬虫夏草(?)も見ることができました.実際の事業地も変化が見られ,今後も霧ヶ谷から目が放せません.

調査を始める前に,館内でこれまでの経過を聞いた.
調査を始める前に,館内でこれまでの経過を聞いた.
再生事業地で堰などを見学した.
再生事業地で堰などを見学した.
水がたくさん流れる再生事業地.
水がたくさん流れる再生事業地.
全ての種の高さを測る.
全ての種の高さを測る.
雨だったので,雨野帳を使った.
雨だったので,雨野帳を使った.
冬虫夏草になるのかな?
冬虫夏草になるのかな?
まずは写真撮影から.
まずは写真撮影から.以前のデータと比較して確認.
以前のデータと比較して確認.
プロットを探して調査開始.
プロットを探して調査開始.
ヒメシジミは雄が多かった.
ヒメシジミは雄が多かった.
調査を終えて,記念撮影.
調査を終えて,記念撮影.

【イベント報告】霧ヶ谷湿原の植生調査

広島市内などでは豪雨の所もあったようですが,八幡高原では晴れ間も覗くお天気でした.今回の調査に集まったのは11人.4つの班に分かれて調査を行いました.各班3~5のプロットを調査したのですが,手際よく調査が進められ,お昼前には調査が終了しました.今年からは「ダンポール」という目印を立てておいたので,調査プロットを見つけやすくなったことも早かった要因だと思います.これについては,かなり前から指摘があったのですが,やっと方法が定着しました.これまでに参加したみなさん,手間をおかけしました.実験地の反対側では,薮が切り開かれ,自然再生工事が進んでいました.見晴らしが良くなった霧ヶ谷を見ると,なんだか感慨深いものがあります.こうして実験地の調査を続けてきたことが再生事業に繋がったことを思うと,これからも続けていかないといけないと改めて感じました.
自然館に戻り,調査のまとめをしました.初めて参加した方は,ほんのわずかの面積にたくさんの植物が生育していることや,調査の専門家の知識に驚かれていたようです.今回は現地で同定できなかった種はほんの数種だったので,午前中で解散しました.お昼ごはんを食べ終わるころには雨になり,今回もお天道様が味方してくれたんだな,と思いました.
調査指導をし,写真を提供してくださった大竹さん,渡邉さん,佐久間さん,小宮さん,ありがとうございました.

実験地と反対側にある,工事中の自然再生事業地を眺める.木が伐採されて,すっかり風景が変わった.
実験地と反対側にある,工事中の自然再生事業地を眺める.木が伐採されて,すっかり風景が変わった.
調査を始める前のレクチャー.
調査を始める前のレクチャー.
今回は4班に分かれて調査をした.
今回は4班に分かれて調査をした.
導水したプロットで,ヨシ,コバギボウシ,ヒメシロネなど,多様な湿地生植物が見られた.
導水したプロットで,ヨシ,コバギボウシ,ヒメシロネなど,多様な湿地生植物が見られた.
このプロットではイが優占していた.
このプロットではイが優占していた.
調査を終え,自然館の前でまとめをした.
調査を終え,自然館の前でまとめをした.
八幡湿原自然再生事業は,公園整備でも河川改修でもなく,湿原を再生する工事.
八幡湿原自然再生事業は,公園整備でも河川改修でもなく,湿原を再生する工事.
氾濫原を再現するために,コンクリートの側壁が壊され,河川の構造が変えられていく.
氾濫原を再現するために,コンクリートの側壁が壊され,河川の構造が変えられていく.