霧ヶ谷湿原の保全」カテゴリーアーカイブ

【イベント報告】自然再生勉強会

2007年から始まった広島県による自然再生事業の工事が完了しました.この機会に自然再生事業の全容や現地の様子,湿原の動植物についての勉強会を開催しました.47名の参加者のみなさんと,高原の自然館を出発し,水口谷湿原を通り,一旦道路にでて霧ヶ谷湿原のオープニングセレモニーに参加し,霧ヶ谷湿原の木道を歩くというコースで歩きました.昆虫担当の岩見先生は,湿地になっているところや,水路にザルをいれ,水中にすむいきものを紹介してくださいました.中でもサナエトンボとオニヤンマのヤゴが印象的でした.両生類・魚類担当の内藤先生からは,カスミサンショウウオの卵塊やヤマアカガエルのオタマジャクシを教えていただいたり,シマヘビやジムグリの赤ちゃんをつかまえ,生態を教えていただきました.ヘビにさわっているときの子どもたちの瞳は真剣で.きらきらと輝いていました.動物担当の上野先生からは,湿原の上を飛ぶハイタカを教えていただきました.植物担当の暮町先生,佐久間先生,和田先生からは,歩きながら見ることのできた,植物の名前や生態を教えていただきました.高原の自然館の白川学芸員は,工事による場所の変化やいきものの生息の変化など,自然再生事業全体のお話や,湿原の成り立ちやそこにすむいきものの生態など多くのことを説明しました.途中に雨が降り,大変寒い中での勉強会となりましたが,それぞれの専門の先生から.興味深いお話が聞けたり,寒い中だからこそ春を感じることができたりと,湿原の恵みを大いに体感しました.途中で参加したオープニングセレモニーでは,霧ヶ谷湿原の入り口のテープカットも行われ,完成した喜びをみんなで分かち合いました.様々な方に楽しんでもらえる場所,さらには湿原や自然について考えたり感じたりできる場所であり続けるよう,みんなで知恵と力を出し合い.この霧ヶ谷湿原を見守っていきたいと願います.

水口谷湿原へいく道から,急にお天気が崩れ,カサやカッパが必要となった. 水口谷湿原へいく道から,急にお天気が崩れ,カサやカッパが必要となった.
ハンカイソウのつぼみが少しだけ. ハンカイソウのつぼみが少しだけ.
ハンノキ林の中で,ハンノキや湿原性の植物について説明があった. ハンノキ林の中で,ハンノキや湿原性の植物について説明があった.
細い木道を歩ききったところで,ヤドリキを見つけ観察した. 細い木道を歩ききったところで,ヤドリキを見つけ観察した.
カスミサンショウウオの卵塊を発見. カスミサンショウウオの卵塊を発見.
霧ヶ谷湿原の観察路入り口のササのなかから,内藤先生が見つけた,シマヘビの幼蛇.ウロコの数を数えたり,模様をじっくり眺めたり,ちらちら出ている舌先が二つに分かれているのを確認したりと,子どもたちは大忙しだった. 霧ヶ谷湿原の観察路入り口のササのなかから,内藤先生が見つけた,シマヘビの幼蛇.ウロコの数を数えたり,模様をじっくり眺めたり,ちらちら出ている舌先が二つに分かれているのを確認したりと,子どもたちは大忙しだった.
オープニングセレモニー会場に着くと,あたたかい甘酒が迎えてくれた.かりお茶屋にて販売中. オープニングセレモニー会場に着くと,あたたかい甘酒が迎えてくれた.かりお茶屋にて販売中.
霧ヶ谷湿原の完成を祝って,テープカット.大きな拍手がわきあがった. 霧ヶ谷湿原の完成を祝って,テープカット.大きな拍手がわきあがった.
霧ヶ谷湿原の広い木道をすすんでゆく.全体が見渡せるよい場所だ. 霧ヶ谷湿原の広い木道をすすんでゆく.全体が見渡せるよい場所だ.
はらっぱーバッジも発見!近々仲間が増えるとか!? はらっぱーバッジも発見!近々仲間が増えるとか!?
岩見先生がザルを使って水の中をすくうと・・トビケラが見つかった.「見た目には何もいないかのように見えますが,実は水の中には多くのいきものがいるんですよ」と岩見先生. 岩見先生がザルを使って水の中をすくうと・・トビケラが見つかった.「見た目には何もいないかのように見えますが,実は水の中には多くのいきものがいるんですよ」と岩見先生.
まだ動きの鈍いカナヘビ. まだ動きの鈍いカナヘビ.
主水路の上流では,堰をつくり,土砂の流出を防ぐ工夫がされている.自然再生事業にてどのような工法が使われたのかを白川学芸員が説明中. 主水路の上流では,堰をつくり,土砂の流出を防ぐ工夫がされている.自然再生事業にてどのような工法が使われたのかを白川学芸員が説明中.
水辺をザルですくってみると,ヤゴを発見.大きい方がオニヤンマ.小さい方がサナエトンボ. 水辺をザルですくってみると,ヤゴを発見.大きい方がオニヤンマ.小さい方がサナエトンボ.
ジムグリの幼蛇.成体と比べると色が鮮やかだ. ジムグリの幼蛇.成体と比べると色が鮮やかだ.
丘の上から千町原を望む.気持ちのいい場所だ. 丘の上から千町原を望む.気持ちのいい場所だ.

【イベント案内】霧ヶ谷湿原の植生モニタリング 秋

前日の観察会では「寒い寒い」という声も聞かれましたが,調査の日はお日様が覗きました.今回の調査には,初めての人3人を含む7人が集まりました.まずは高原の自然館に集合し,再生事業の経過や,西中国山地自然史研究会の関わり,これまでの調査で分かったことなどを確認しました.基礎知識を共有したところで,霧ヶ谷に出発しました. 今回は,広島県が実施する遊歩道設置工事の最中なので,全員がヘルメットを被り,3斑に別れて調査地に向かいます.1m×1mの中に,どんな植物がどのくらい生育しているのか,見落としの無いように植生を調査していきました.遊歩道沿いに点々と設置された調査地には,夏の調査の際にダンポールを立てているので,簡単に見つかります.1区画の調査が終わった班は前に進み,次の調査地を調べる,という風に,追い越し・追い越されながら進んでいきました.調査地の中には,湿原生の植物が多いところもあれば,外来種ばかりのところ,種数が極端に少ないところなど,場所によって環境も植生も違うことが実感できました.お昼頃には調査を終え,調査結果の概要を報告しあいました.やはり,場所によって種組成に大きく違いがあり,外来種もたくさん見られるようでした.今後,アメリカセンダングサをはじめとする水田雑草が繁茂する場所ができるかもしれません.モニタリングを続けることが大事だと感じました.ともあれ,調査地を歩く間には,アケボノソウの群生や,たくさんのオオコオイムシも見ることができました.少しずつではありますが,ノイバラの薮だった場所が,湿原の性質を取り戻していると実感できました.

はじめに,高原の自然館で調査方法やこれまでの経緯を確認. はじめに,高原の自然館で調査方法やこれまでの経緯を確認.
再生が進む霧ヶ谷. 再生が進む霧ヶ谷.
ヘルメットを被って,いざ出発. ヘルメットを被って,いざ出発.
河川敷のような場所.湿地の植物は少ないが,種数は多い. 河川敷のような場所.湿地の植物は少ないが,種数は多い.
湿原が回復している場所.マアザミ,アブラガヤなどが生育していた. 湿原が回復している場所.マアザミ,アブラガヤなどが生育していた.
1班の調査風景. 1班の調査風景.
2班の調査風景.そして3班の様子は写していませんでした... 2班の調査風景.そして3班の様子は写していませんでした...
最後に,全員で調査結果を確認. 最後に,全員で調査結果を確認.
この日は中国新聞からも取材に来ていただきました. この日は中国新聞からも取材に来ていただきました.

【イベント報告】霧ヶ谷の観察会 秋のいきもの観察会

早朝から激しい雨が降る中,17名の参加者が自然館に集合しました.夏の観察会に続き,植物担当の和田先生,昆虫の岩見先生が講師です.自然館で湿原の概要についてお話頂いた後,霧ヶ谷湿原へ移動し,今年度の工事予定地で木道をつけるルートを歩きました.雨が降っているため,歩きにくい場所もありましたが,目に入ってくる植物や昆虫の説明を聞いていると,時間が経つのがとても早く感じました.ツリフネソウの蜜を吸うマルハナバチと花のつくりとの関係や,アケボノソウの蜜線が花びらにあることなど,植物と昆虫の密接な関係をユーモアを交えてのお話で,楽しみながら観察することができました.葉の裏でトンボが休んでいたり,しずくが付いたカンボクの実を眺めたりと,雨の中ならではの発見があった観察会となりました.夏と秋の観察会で,霧ヶ谷湿原の中を歩いてみると,湿地生の植物や動物が増えていることを感じることができました.来年には観察路が完成する予定なので,霧ヶ谷湿原はもっと身近な場所になることと思います.帰り道に見たオオヘリカメムシの匂いは,思った以上にいい匂いで驚きました.[こうのやよい]

最初に自然館の中で,自然再生事業についての説明があった.
最初に自然館の中で,自然再生事業についての説明があった.
霧ヶ谷湿原は工事中のため,ヘルメットを着用した.
霧ヶ谷湿原は工事中のため,ヘルメットを着用した.
雨の中イザ出発!
雨の中イザ出発!
雨で増水した水路.ごうごうと音をたてていた.
雨で増水した水路.ごうごうと音をたてていた.
キセルアザミの名前の由来「煙管」を実演しながら説明する和田先生.
キセルアザミの名前の由来「煙管」を実演しながら説明する和田先生.
ネナシカズラ!
ネナシカズラ!
強めの雨の中,活動している虫もわずかながら観察できた.
強めの雨の中,活動している虫もわずかながら観察できた.
イナゴにのど仏があることを初めて知った.
イナゴにのど仏があることを初めて知った.
サクラバハンノキの幼木.
サクラバハンノキの幼木.ヘラオオバコの葉は,本当にへらのようだ.
ヘラオオバコの葉は,本当にへらのようだ.ウナギをつかめるトゲがある、アキノウナギツカミ.みんなでトゲをさわってみた.
ウナギをつかめるトゲがある、アキノウナギツカミ.みんなでトゲをさわってみた.
ツリフネソウの花の中を観察する.雨宿りをしている虫もいた.
ツリフネソウの花の中を観察する.雨宿りをしている虫もいた.
真っ赤な実を多数つけたカンボク.雨の中で映える赤色.
真っ赤な実を多数つけたカンボク.雨の中で映える赤色.ミヤコグサの花.図鑑で調べると「脈根草」が名前の由来だった.
ミヤコグサの花.図鑑で調べると「脈根草」が名前の由来だった.
虫がとまると花粉がつくのか,ハギの花をさわって実験してみる.
虫がとまると花粉がつくのか,ハギの花をさわって実験してみる.
青リンゴのように甘酸っぱい香りがしたオオヘリカメムシ
青リンゴのように甘酸っぱい香りがしたオオヘリカメムシ
最後に,芸北で開催される草原サミットのご説明があった.
最後に,芸北で開催される草原サミットのご説明があった.

【イベント報告】霧ヶ谷湿原の植生モニタリング 夏

霧ヶ谷湿原の再生地で行う,はじめての植生モニタリングには,6人の参加者が集いました.調査に入る前に,高原の自然館内で,これまでの調査結果や,今日の調査目的を確認しました.参加者の認識を共有した後,快晴の空の下,現地に向かい,打合せをした後で,3つの班に分かれました.少人数だったこともあり,慣れた調子で調査を進めました.今回の調査は,秋以降も,年2回の頻度で続けていく予定なので,散策道の設置が予定されているルートに添って,行われました.これは,工事完了後も,湿地にできるだけ踏み込まずに調査ができるように,という配慮からです. 13時近くに,予定していた14地点の調査を終えました.各班の状況を報告し,それぞれの印象を発表しました.イが優占する場所や,工事後のような場所でも,見た目よりもかなり種数が多いことが分かりました.全ての班を通じて,最も種数が多い地点では,1m×1mの中に26種が確認されました.一方,最も種数が少なかったミゾソバの群落では,わずか6種が確認されたのみでした.実際に調査してみると,実験地とも状況がかなり異なることが分かりました.特に,工事の際に重機で土を動かした場所ではイが繁茂し,土を動かさずに水が廻った場所ではマアザミ群落に近づいていることが分かりました.今後も,どのように植生が変化していくか楽しみです.第1回の調査として,良い調査ができたと感じました.

ミゾソバが占有していたプロット. ミゾソバが占有していたプロット.
フランス菊のお花畑.外来種の強さに驚く.見た目はきれいでも,思いは複雑. フランス菊のお花畑.外来種の強さに驚く.見た目はきれいでも,思いは複雑.
水辺には,工事の影響が見られた. 水辺には,工事の影響が見られた.
1m×1mの中にある植物を,全て記録した. 1m×1mの中にある植物を,全て記録した.
右側が1班,左側が2班のメンバー.気温が高く,日差しも強い日だったので汗だくになりつつ調査した. 右側が1班,左側が2班のメンバー.気温が高く,日差しも強い日だったので汗だくになりつつ調査した.
傍らのノイバラにとまっていた,小さなゾウムシ. 傍らのノイバラにとまっていた,小さなゾウムシ.
最後に各班の様子を発表しあった. 最後に各班の様子を発表しあった.

【イベント報告】カスミサンショウウオの産卵調査

霧ヶ谷湿原に導水路が張り巡らされる工事が終了して,はじめてのモニタリングです.昨年の調査では,補助導水路にたくさんの卵塊が見られました.また,カスミサンショウウオも湿原内に産卵していました.さて,今年はどうでしょうか?高原の自然館でサンショウウオについてのレクチャーを受けた後,3人のキッズを含む10人で調査に向かいました.
はじめに,「カスミサンショウウオの産卵環境」を観察し,どのような場所に,どのような状態で産卵するのかを確認しました.このときに,卵塊を守る親も見ることができました.自然状態での産卵を確認した後は,いよいよ再生事業地での調査開始です.2班に分かれて,川の両岸を上りながら,導水路の中に産み付けられた卵塊を探しました.今回はGPSを使って位置を記録したので,調査票への記入が楽にできました.お昼までに調査した,約1/3程度の範囲では,ヤマアカガエルの幼生とアカガエルの卵塊が多く見られ,アマガエルも産卵していました.ただ,昨年は見られたヒキガエルや,水路内のカスミサンショウウオの卵塊は確認できませんでした.ちなみに,午後から内藤先生,スタッフなど数人で行った補足調査では,ヒキガエルの幼生が確認できました.カスミサンショウウオも,最整地内にできた湿地に,本来の姿で産卵していました.一昨年までならば排水升に落ちて無駄になっていたはずの個体が,再生事業によって,産卵場所を得たというのは嬉しい結果でした.参加した子供達にとってはミズカマキリやオオコオイムシを観察できたことが,卵塊が増えていることよりも嬉しかったようですが・・・.
内藤先生からは,時間はかかるだろうが湿地内へのカスミサンショウウオ個体群の再生も可能だろうというコメントをいただきました.これからも研究会でしっかりと見守っていきましょう.[しらかわ]

高原の自然館で,広島県のサンショウウオについて説明を聞いた.
高原の自然館で,広島県のサンショウウオについて説明を聞いた.
卵塊と親が見つかった.
卵塊と親が見つかった.恐る恐る触ってみる.
恐る恐る触ってみる.
いよいよ調査開始.こちらは左岸チーム
いよいよ調査開始.こちらは左岸チーム
水路をくまなく探していく.
水路をくまなく探していく.
ヤマカガシがいたので,束の間,しっかり観察.
ヤマカガシがいたので,束の間,しっかり観察.
「カスミおったよー」の内藤先生の声に向かう右岸チーム.
「カスミおったよー」の内藤先生の声に向かう右岸チーム.
産み付けられたばかりのニホンアカガエルの卵塊.
産み付けられたばかりのニホンアカガエルの卵塊.
ヒキガエルは,ひも状の卵塊を生む.幼生は尾芽胚の状態で孵化する.
ヒキガエルは,ひも状の卵塊を生む.幼生は尾芽胚の状態で孵化する.
茶色くて大きいのがヤマアカガエル,真っ黒で小さいのがヒキガエル.
茶色くて大きいのがヤマアカガエル,真っ黒で小さいのがヒキガエル.
P4290004
この卵塊は胚が育った状態
最後に各班の状況を報告した.報告中もヤマカガシに見入る子ども達.
最後に各班の状況を報告した.報告中もヤマカガシに見入る子ども達.
卵塊を探しながら,カスミサンショウウオの産卵環境を観察する.
卵塊を探しながら,カスミサンショウウオの産卵環境を観察する.