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【イベント報告】湿原の昆虫観察会

  • 開催日時:2012年6月23日(土) 10:00
  • 講師:岩見潤治・松田賢

 梅雨の真ん中で雨も心配された6月23日,昆虫観察会が開かれました.幸い雨も止み,虫たちも動き出しそうな天気でした.参加者は5名でした.
 観察場所は主に霧ヶ谷としていましたが,自然館から歩き出すとすぐ動けなくなってしまいました.満開のウツギに何やらたくさんのハチが集まっています.ウツギヒメハナバチです.このハチはウツギの花粉を集め,土中の巣に置いて産卵し,幼虫の餌にするそうで,たくさんの親蜂が花に出入りしていました.このハチは巣に戻る能力が高く,3km離れた巣にもちゃんと戻るということです.水口谷入口から霧ヶ谷湿原の南の入口に行くまでに,オオヘリカメムシ,ツマキヘリカメムシ,ヒメシジミ,ムラサキシジミ,イシガケチョウ,クロヒカゲ,アサヒナカワトンボなどがみられました.特にノイバラとヨモギが群生している明るい場所にヒメシジミが多数みられました.
 霧ヶ谷の木道に入ると,蝶やトンボの仲間が目立ちます.カラスアゲハ,ヒメシジミ,ヒメクロサナエ,ミヤマカワトンボ,アサヒナカワトンボ,ヒロシマサナエなどがみられました.ヒロシマサナエは,一時期国内で八幡でしか確認されていなかった八幡湿原の代表的なトンボです.これが10個体以上みられ,湿原再生が順調に進んでいることを感じました.ヒメシジミもノイバラで吸蜜しているなどあちこちでみられました.松田先生が捕まえたアサヒナカワトンボの羽に何かダニのようなものが付いています.寄生しているトンボダニカの仲間です.ダニカとありますがハエの仲間だそうです.水たまりのまわりにはモリアオガエルの卵塊もありました.さらにコンクリート橋付近では一瞬カラフトゴマフトビケラも確認され,参加者皆が興奮していました.
 霧ヶ谷湿原からの帰り道,車道のへりでヘビを見つけました.よく見ると何匹もいます.種類もシマヘビ,アオダイショウ,ヤマカガシ,マムシと役者がそろっています.どうやらヘビのアパートのようです.道路の端が丈の低い草むらで,道路脇の石垣にはコンクリートの割れ目があります.この環境がヘビにとってちょうどいいようです.
 霧ヶ谷湿原でヒメシジミやヒロシマサナエがたくさんみられたことや,カラフトゴマフトビケラが確認されたことは,湿原再生が進んでいることの証であり,望ましい方向であると考えられます.これからも霧ヶ谷湿原の移り変わりを観察していきたいと思います.[わだしゅうじ]

みなさんの印象に残った物

「カワトンボでアサヒナカワトンボとニホンカワトンボの2種あることに驚いた.」「ヘビが石垣にたくさんいたこと」「ヒロシマサナエ,カラフトゴマフトビゲラ,トンボダニ,ヘビのねじろ(アオダイショウ,シマヘビ,マムシ,ヤマカガシ)」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「参加者が少数で,話や昆虫の名前等が良く聞くことが出来た」「沢山の種類のチョウやトンボが見ることができてよかったです」「参加者が少なくて残念」

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オオヘリカメムシは,青リンゴのようないい香り.
オオヘリカメムシは,青リンゴのようないい香り.アサヒナカワトンボの羽に寄生するトンボダニカの仲間.
アサヒナカワトンボの羽に寄生するトンボダニカの仲間.ヘビのアパートを覗き込む参加者.
ヘビのアパートを覗き込む参加者.羽を広げて休むヒメシジミ.
羽を広げて休むヒメシジミ.よい香りがするスイカズラも.
よい香りがするスイカズラも.広々とした木道から観察する.
広々とした木道から観察する.ヒロシマサナエがいた!
ヒロシマサナエがいた!

【イベント報告】ブッポウソウの観察会

  • 開催日時:2011年7月16日(土) 9:30
  • 講師:上野吉雄

絶滅危惧種にも指定されているブッポウソウの観察会に10名が参加しました.今回の講師は上野先生と松田先生です.まずは会場内の研修室で,ブッポウソウについて講義を行いました.昔は,木製の電柱に営巣していたが,コンクリート製の電柱が増えて,巣を作れなくなっていること.ヒナ鳥には主にコガネムシなどの甲虫を与えるため,餌やりの回数は夕暮れ時が一番多いことなど,観察するだけでは分からないことも講義していただきました.
講義を終えて,フィールドに出て観察を始めることにしました.あらかじめ,何カ所か巣箱を設置しておいた場所のうちの,2カ所を観察することになりました.1カ所目は,人の行き来が多く,時々大きな音や声が響き渡る場所でした.上野先生によると「このような場所の方が,カラスやテンなどの天敵が,人を警戒して近寄って来ないため,かえって安全に子育てが出来る」と説明されました.しばらく観察していると,巣箱の中から何か出ているのが見えました.ヒナ鳥です.餌を催促するために入り口に近づいたのでした.親は,それをみると素早く入口まで飛んで行き,餌を与えてまた飛び立って行きました.あっと言う間の出来事でしたが,親からヒナ餌やりを見れた参加者からは歓声があがっていました.
続いて2カ所目に移動します.そこは,車の通りも少ない,静かな田園風景が広がっていました.また,巣箱は樹木ではなく,コンクリート製の電柱にかかっていました.実は,1カ所目でもそうだったのですが,そのことを先生達に聞いてみると「樹木より,電柱にかけた方が,天敵の1つであるヘビが登りにくい,これも安全に子育てをしてもらうための工夫の1つ」と解説されました.観察していると,突然「ピックィー,ピックィー」と高い鳴き声が聞こえました.周りを見渡してみると.枯れた松の木にサシバがとまっていました.「農薬散布や乾田化などで,カエルやそれを食べるヘビが少なくなっているため,それらを食べるサシバも減少してきている」と絶滅危惧種にまで指定されていることを教えていただきました.
巣箱に視線を戻すと,親鳥が餌を与えるために巣箱へと飛んで行きました.ですが,1カ所目と違い中に入ったまま出てきません.「雛鳥がまだ小さいため,餌を与えた後,抱きかかえている」との説明がありました.
今回の観察会を通して,人にとっては小さな生活の変化でも,他の生き物へ,大きな影響を与えているということを感じました.[ありみつまさかず]

みなさんの印象に残った物

「ブッポウソウが,高い山ではなくて,里山に来ること」「ブッポウソウの子育ての様子が見れたこと(2)」「ブッポウソウの飛ぶ姿」「ブッポウソウに会えたこと(3)」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「人が横で活動していても,平気で巣に出入りするのに驚いた」「もう少し近くで見ることができたら最高です」「幅広いお話で概略もよく分かり,現地で実際に見れてよかったです」「きれいな青い色やサシバも見れてよかった」「ブッポウソウとサシバが生息出来る里山を体験できてよかった(2)」「人家に近い場所での巣箱に驚き!」

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ブッポウソウの営巣場所や保護活動について話をする上野先生.
ブッポウソウの営巣場所や保護活動について話をする上野先生.続いて松田先生が教壇に.ヒナ鳥の餌の内容や時間帯について説明があった.
続いて松田先生が教壇に.ヒナ鳥の餌の内容や時間帯について説明があった.外に出て観察場所へと向かう.近くからは,人の活動する音が聞こえてくる.
外に出て観察場所へと向かう.近くからは,人の活動する音が聞こえてくる.電柱の上から辺りを見回すブッポウソウ.日に反射したきれいな青色の姿にくちばしの橙色が映える.
電柱の上から辺りを見回すブッポウソウ.日に反射したきれいな青色の姿にくちばしの橙色が映える.ヒナに餌を与える親鳥.一瞬の出来事だった.
ヒナに餌を与える親鳥.一瞬の出来事だった.場所を移して観察を再開.まずは親鳥を探す.
場所を移して観察を再開.まずは親鳥を探す.木の上にとまっているサシバ.ゆっくりと旋回しながら山の向こうへと飛んでいった.
木の上にとまっているサシバ.ゆっくりと旋回しながら山の向こうへと飛んでいった.巣箱の中へと入る親鳥.中でヒナを抱いていたため,再び飛び立つまでに時間がかかった.
巣箱の中へと入る親鳥.中でヒナを抱いていたため,再び飛び立つまでに時間がかかった.