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【イベント報告】霧ヶ谷湿原の植生調査:夏

  • 開催日時:2013年6月23日(日) 9:30
  • 講師:大竹邦暁・佐久間智子・白川勝信

今にも雨が降り出しそうな曇り空の中,霧ヶ谷湿原の植生調査が行われました.10名の参加者が高原の自然館に集合し,白川学芸員による,調査の手順や霧ヶ谷湿原の再生事業についての話から始まりました.
次に,霧ヶ谷湿原へ車で移動し,まず,車道に一番近いプロットで実際に調査手順を全員で見学しました.1m四方に区切られた場所(プロット)で,講師が植物の種名を確認し,参加者が植物の高さを測り,記録用紙に記入して行きます.毎回同じ場所で調査をすることで,その場所で,植生がどのように変わっているのかを調べることができます.
調査の手順を教わったあとは,今回の講師である大竹先生,佐久間先生,白川学芸員の班に分かれて調査を開始しました.湿原生の植物が大部分を占有していたり,逆に,水が行き渡らずに外来の植物が多い場所あったりと,プロットによって植生が違うことが見えてきました.途中,講師と交代し,参加者が植物の種名を調べる場面もあり,今回の調査で教わった植物の「見分け方」を実践することができました.
調査を終え,自然館に戻り,今回の調査で感じたことを話し合いました.「再生事業を施行した時と比べると,フランスギクなどの外来の植物が減っている」また「水の流れる場所に生えていたコウガイゼキショウも同様に減っている」との事でした.この事から「湿原の再生事業で土を掘り返した際に数を増やした植物が,霧ヶ谷が湿原に戻るにつれて,数を減らしているのではないか」と,大竹先生や佐久間先生が話されました.
今回の調査だけで結論が出るというわけではありませんが,この調査を毎年続けることで,霧ヶ谷湿原の植生が変化していく様子を知ることができます.去年と同じように見えて,毎年変わっていく霧ヶ谷湿原を実感できた植生調査となりました.[ありみつまさかず]

みなさんの印象に残った物

「調査ってこんなふうにやるんだってことがすこしわかった」「植物が3Dでじん地とりをしていること.植生調査に初めて参加して,その方法が(流れが)興味深かった.ゆっくり観察すると1m四方に多くの植物がいるのにおどろいた.」「背丈を測って記入するなど,普段できないことを体験した」「コウガイゼキショウが見られなかった.水の流れが決まってきたように思う.植物の堆積物で低い植物が生えていない.オオチドメが見られなかった.」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「思っていたのとまたちがうことをしたので(なにも考えてなかったけど)すごくおもしろかった.大竹さんが植物ひとつひとつの話をたくさんしてくださってべんきょうになったしたのしかった」「腰が少々痛くなりました.根気が必要と思った.調査を通して,植物の見る目が変わってきたと思う.」「花の時期以外での見分け方を教えていただきました」「全体に植物はよく繁茂していた」

具体的に

自由記入

「秋の調査も参加したいと思います.」

写真

霧ヶ谷湿原の車道を挟んだ向かい側.工事施工前に水を廻すと湿原に戻るか試みた.
霧ヶ谷湿原の車道を挟んだ向かい側.工事施工前に水を廻すと湿原に戻るか試みた.木道に一番近いプロット.全員で調査を行った.
木道に一番近いプロット.全員で調査を行った.ススキの特徴は,中央の白い筋が通っていることを先生から聞いた.
ススキの特徴は,中央の白い筋が通っていることを先生から聞いた.湿原を訪れていた人も興味深そうに見守る.
湿原を訪れていた人も興味深そうに見守る.こちらのプロットは導水路をまたぐ場所.
こちらのプロットは導水路をまたぐ場所.ミゾソバがほぼ占有している中,大きなアブラガヤが目立つ.
ミゾソバがほぼ占有している中,大きなアブラガヤが目立つ.最後のプロットを調査する大竹先生と白川学芸員.
最後のプロットを調査する大竹先生と白川学芸員.自然館に戻り,調査内容を報告し合った.
自然館に戻り,調査内容を報告し合った.

【イベント案内】霧ヶ谷湿原の植生調査:夏

  • 開催日時:2013年6月23日(日) 9:30
  • 集合場所:高原の自然館
  • 講師:大竹邦暁・佐久間智子・白川勝信・和田秀次
  • 準備:作業セット
  • 定員数:30名
  • 参加費:
    • 一般=300円
    • 賛助会員=100円
    • 正会員・中学生以下=無料

自然再生事業地である霧ヶ谷湿原の植生を調査します.この調査を毎年夏・秋に行なうことにより,植生の変化を知ることができます.調査は専門家の講師と一緒に行ないますので,初心者でも参加できます.また今までの調査でわかった霧ヶ谷湿原の植生や,事業の解説も聞くことができます.

⇒お申し込みはこちらから

【イベント報告】サクラソウ観察会

  • 開催日時:2013年5月6日(月) 9:30
  • 講師:暮町昌保・下杉孝・白川勝信

 遅咲きの桜の花が散る中、美和東文化センターに●名が集まりました。今回は、美和東文化センター近くの休耕田4aに栽培されているサクラソウと「美和のサクラソウ群落(町天然記念物)」と名付けられた北広島町枕地区、熊城山の山麓の自生地での観察会です。
  観察会に先立ち、美和東文化センターで事前の学習が行われました。最初に高原の自然館の白川学芸員から、美和のサクラソウについて次のような説明がありました。
  日本のサクラソウは氷河期、大陸と日本が陸続きの時に、中国大陸から日本にたどりつき、北海道から九州にまで分布し、その土地の環境に適したものが自生している。筑波大学の本城正憲さんが全国の生育地の葉緑体DNA変異を調査した結果、美和のサクラソウは本来の自生であることが分かった。一方、八幡地区のサクラソウは、埼玉県のサクラソウ集団から見いだされたものと同じ遺伝子タイプで、鳥取県日南町を経て八幡に持ち込まれた可能性がある,とのお話でした.
  続いて、自生地の保護活動をしている地元溝口地区の「サクラソウを育てる会」代表の下杉より次のような報告をしました。
  今から40年前に自生地を発見し,以降保護活動を続けている。サクラソウの自生地の中を町道が通ることになったため、町に保護柵を設けてもらった。2000年に「サクラソウを育てる会」を設立、自生地の草刈や美和小学校児童と連携による観察など行っている。また、溝口地区をサクラソウの里にすることにし、2000年に八幡のサクラソウをバイオ技術で増殖したものを美和東文化センター近くの休耕田に約1000本植え付けて管理している。自生地のサクラソウが系統的に見ると貴重な集団であることが判明し、栽培地のサクラソウとの交雑が危惧されるところとなった。当初、栽培したものは各家庭に配り、サクラソウの里づくりを目指していたが,急遽変更し栽培地のサクラソウの持ち出しを禁止、自生地のサクラソウと交雑を避けるよう配意している,といった保全活動の現状を話しました.
  次に植物に詳しい暮町先生が白色のサクラソウを持ってこられ、栽培種の話をされました。
  江戸時代に、サクラソウの栽培ブームがあり様々な品種が作り出されており,この白花のサクラソウは三倍体で一般に、三倍体植物は不稔性で種をつけないので交雑しないとのことでした.
  学習の後は、現地に移動しサクラソウの観察をしました。最初に栽培地の観察です.花は最盛期を迎え、よく咲いていました。花弁は細めで花の色は濃いさくら色で茎の長さも一定でクローンの特質が一見して分かりました。
  続いて自生地に移動、小川沿いの少し湿り気のある場所の柵内に咲いていました。花の色も淡いピンクや紫など様々で,花弁の形も切れ込みの深いものやほとんど切れ込みのないもの、花弁がラメを散らしたように光るものや茎の長短、開花時期の違うものなどを見ることができました。白川学芸員の話によると14種類くらいあると思われるとのことでした。
  参加者は、それぞれ写真におさめたり、双眼鏡で眺めたりしながら五月晴れの朝の一時を楽しみました。(しもすぎ たかし)

みなさんの印象に残った物

「多様なサクラソウの花」「少し自生地が小さくなったのでは」「ミツバチの足跡」「花の時期が丁度よかった」「さくら草の色ちがいが判明(少しづつちがう)が良く分かったこと」「サクラソウのYタイプ」「管理されるのが大変だと強く感じた」「サクラソウの遺伝子とからめた話が興味深かった.その知識で自生地の花を見ると,よく花の違いがどのようにして生じたか,おもしろかった」「サクラソウの自生地で個体差がよくわかりました」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「1種類の植物をじっくりながめていろいろなことがわかった」「がんばって保全しましょう」「サクラソウとトラマルハナバチとモグラやネズミの穴の話がとても好きでした」「皆さん熱心に話を聴いて下さりありがたく思いました.天候に恵まれた」「双眼鏡でマルハナバチ?足跡が自然だとわかった」「同じYタイプでもいろいろ額があるのですネ!」「この自然(サクラソウ)が残っていくことを願う」「短時間ではあったけど,内容が濃かった」「サクラソウの受粉にハチが必要でそのハチが住むためにモグラの穴が必要といった自然界の連鎖がこの小さな空間でもあることがよくわかりました」

具体的に

「座学でのお話がよくわかった.ためになった」「興味を深める知識や,応援したくなる取り組みについて丁寧に説明してもらえたのがとても良かったです」「資料もgoodです」「良い資料をいただきました」「皆さんがサクラソウを守るために努力されていることがよくわかりました」

自由記入

「はじめに説明や資料の提供があり,より理解できた.保護に対する考え方が理解出来た」「自生地の整備をもう少し何度もされては」「また来年も,今年との違いを見てみたいと思いました.ありがとうございました」「いろんな額の状態を絵柄があればより理解しやすかったです.柵外の他の植物も少し説明,観察しかったです」「できることはやりたい.広く皆さんにしらせていただきたい(草刈り等)」「今後とも行事に参加したい」「よくわかりやすく説明していただきありがとうございました」

写真

美和東文化センターで事前学習を行う.三輪地区のサクラソウの歴史を話す白川学芸員.
美和東文化センターで事前学習を行う.三輪地区のサクラソウの歴史を話す白川学芸員.自生地の保護活動を続ける下杉さんから,保護活動の現状を聞かせていただいた.
自生地の保護活動を続ける下杉さんから,保護活動の現状を聞かせていただいた.暮町先生からは,栽培種のサクラソウについてお話を頂いた.
暮町先生からは,栽培種のサクラソウについてお話を頂いた.自生地のサクラソウ.花の白くかすれた部分は,トラマルハナバチの足跡だそう.
自生地のサクラソウ.花の白くかすれた部分は,トラマルハナバチの足跡だそう.栽培地で花を咲かせるサクラソウ.遺伝子の違いからか,乾いた場所でも育つ.
栽培地で花を咲かせるサクラソウ.遺伝子の違いからか,乾いた場所でも育つ.

【イベント報告】霧ヶ谷湿原の植生調査(秋)

  • 開催日時:2012年9月22日(土) 9:30
  • 講師:大竹邦暁・佐久間智子・白川勝信

広島県を中心に湿原再生の事業が進められている霧ヶ谷湿原で,植生調査を実施しました.この調査は,工事が実施された5年前から継続しているもので,再生の効果を判断したり,これからの保全活動を決めたりするために必要なものです.
今回は23人の方たちに調査に参加していただきました.調査を指導するのは大竹先生,佐久間先生,そして白川です.3班で調査するには人数が多いので4班に分かれ,2つの班が大竹先生と佐久間先生の指導のもとに調査を行なっている間,他の2班は白川が一緒に湿原全体の観察をし,観察が終わったところで調査班と観察班が入れ替わりました.
予定どおりの時間に調査を終えた後に,広島県の研究員である山場先生から湿地での調査について解説していただきました.山場先生は,自動操縦で飛ぶ模型飛行機を使って,高画質の空中写真を撮影し,画像から湿原全体の植生を調べる方法を研究されています.この資料と,今回のような詳細な調査の両方を進めることで,より正確かつ全体的に湿原の状態を知ることができるのです.
最後に,二川キャンプ場の駐車場で,大竹先生と佐久間先生に総括をしていただき,解散しました.今年は広島県がモニタリング成果を報告する年です.この調査結果も,その中に盛り込まれることになっています.[しらかわかつのぶ]

みなさんの印象に残った物

「アケボノソウの花弁」「守っていくたには大変な事をされているのだなと思いました」「非常に多くの種類の植物があることに驚いた」「二本立ての内容」「湿原の再生に対しての熱意と努力に感動しました.次世代へ残すべき風景だと思います」「植生の多さにおどろかされた」「名前の知らない草花が多くの種類ある事に驚きました.・ハンノキの命のつなぎ方」「高原一面に秋の気配を感じます」「山野草の花々.自然,湿原(3)」「湿原のうつりかわり」「湿原の再生事業(自然全般)」「確実に霧ヶ谷の植物に詳しい人が増えている」「植物の名前は覚えられなかったけど,色々特徴があるのがおもしろかった」「調査に参加出来た事」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「調査と観察の2本立てはとてもよかった」「説明がわかりやすかった(2)」「参加者が多く,来年以降も来てほしい」「湿原の植生が分かった」「湿原の今後の成り行きを見守りたい」「これからも参加してみたいです.植物種がたくさん外来種もたくさんある」「植生調査でいままでになく若い人たちがたくさんされて良かったです.これからも若い人たちの参加を望みます」「自然があるのは心地よい」「色んな植物(花)がいっぱい」「この調査結果をまとめて下さい」「湿原が分からなかったけど,説明を聞き,興味を持ちました(2)」「色々説明が聞けてたのしかったです(3)」

写真

ミゾソバが優占するプロット.ここにはネナシカズラも見られた.
ミゾソバが優占するプロット.ここにはネナシカズラも見られた.アブラガヤやマアザミが見られるプロット.ハンノキの低木が育っていた.
アブラガヤやマアザミが見られるプロット.ハンノキの低木が育っていた.調査の最後には,山場先生から,広島県が実施している調査について紹介していただいた.
調査の最後には,山場先生から,広島県が実施している調査について紹介していただいた.今回は大勢で調査を行った.
今回は大勢で調査を行った.大竹先生と佐久間先生からの講評.
大竹先生と佐久間先生からの講評.最後のアンケートを書いて頂いて終了.調査と観察会の両方があったのが良かったようだ.
最後のアンケートを書いて頂いて終了.調査と観察会の両方があったのが良かったようだ.

【イベント報告】霧ヶ谷湿原の植生調査(夏)

  • 開催日時:2012年6月24日(日) 9:30
  • 講師:大竹邦暁・佐久間智子・白川勝信・和田秀次

 夏の霧ヶ谷湿原で,植物の調査をしました.この調査は,霧ヶ谷で実施された「八幡湿原自然再生事業」の効果を,植生の回復具合から確認するためのもので,西中国山地自然史研究会では,工事が完了した2009年以来,毎年6月と9月に同じ場所で調査を続けています.工事終了から4年目の今回は,植生調査が初めてというお二人を含む,7人で実施しました.
 現地に行く前に,湿原再生の意味やねらい,その方法などの説明を,高原の自然館で和田先生から聞きました.霧ヶ谷湿原は,かつては地域の人の草刈り場でしたが,戦時中に陸軍の演習地として買い上げられて以来,地元の人による利用はありませんでした.終戦後には,開拓団として入植した方もありましたが,長くは続きませんでした.昭和の中頃には,国が食料自給率を高めるために行った「大規模草地改良事業」の国内第1号地として開発が進められました.霧ヶ谷湿原の環境が大きく変わったのはこの時です.土地を乾燥化させるための排水路が掘られ,本線の水路はコンクリートの三面張りになったため,湿原は失われました.この牧場も,1980年頃には閉鎖になりましたが,排水路は残ったため,湿原はもとには戻りません.再生事業は,人間活動によって失われた自然のしくみを,元通りに戻すとりくみです.
 このような背景を知った上で,現地で調査を行いました.予め設置されている12プロットで,植物の種類や高さを丹念に調べていきます.今回は調査の専門家が3人も参加されているので,初めて参加された方も,花が付いていない株でも見分けることができるようになったようでした.
 植生調査は地道な調査ですが,続けることで見えてくるものがあります.今年は霧ヶ谷湿原の工事を点検する年です.これを機会に,今までのデータもまとめていきたいと思います.[しらかわかつのぶ]

みなさんの印象に残った物

「カヤの種類の多さ」「ハンノキがたくさんあったこと!」

参加したみなさんの感想(抜粋)

「初めてのことなので手間取りました.」「とても勉強になりました.またやらせてもらいたいと思います.」

写真

調査地点は木道に沿っているので,木道に座りながら記録ができる.
調査地点は木道に沿っているので,木道に座りながら記録ができる.調査区内の全ての種を記し,高さを測る.
調査区内の全ての種を記し,高さを測る.プロットを設置している様子.
プロットを設置している様子.4人で1m×1mの調査.1人は記録係.
4人で1m×1mの調査.1人は記録係.ハンノキ林の下は,マアザミ,ヌマガヤ,オニスゲ,ヒメシロネ,クサレダマなど,湿原生の種が多く見られた.
ハンノキ林の下は,マアザミ,ヌマガヤ,オニスゲ,ヒメシロネ,クサレダマなど,湿原生の種が多く見られた.初心者でも,だんだんと調査になれてくる.
初心者でも,だんだんと調査になれてくる.ミゾソバが繁茂した中に,大きなアブラガヤの株が生えている調査区.
ミゾソバが繁茂した中に,大きなアブラガヤの株が生えている調査区.湿原の植物と,ススキや外来種が一緒に生えているプロット.場所によって植生はずいぶん違う.
湿原の植物と,ススキや外来種が一緒に生えているプロット.場所によって植生はずいぶん違う.