北広島町溝口地区の美和東文化センターで,内藤順一先生による「溝口地区に生息するサンショウウオ類」と題した講座が開催されました.参加者は20人で地元住民が大半でしたが,廿日市市からの参加もあり,サンショウウオに対する関心の高さがうかがえました.
サンショウウオの分類のお話から始まりました.オオサンショウウオは日本固有種で,国の特別天然記念物に指定されていること,小型のサンショウウオ類は種が多く,また,日本固有種であること,日本では13種生息しており,その中でも北広島町や溝口地区ではどの種が生息しているかという詳しいお話がありました.
北広島町で確認されたサンショウウオ類(カスミサンショウウオ・ブチサンショウウオ・ヒダサンショウウオ・ハコネサンショウウオ・オオサンショウウオ)については,内藤先生がその場所を地図上で示し,生息環境を写真で説明されました.また,それぞれのサンショウウオの写真や産卵場所,産卵時期についての説明もありました.参加者から「溝口を流れる丁川(ようろがわ)では,近年オオサンショウウオの数が増えたようだ」との話がありましたが,内藤先生によると,「幼生がいないと将来にわたって生息するものとはいいきれないので,安心することはできない」とのことでした.
サンショウウオの生息は,自然環境を計るうえでの尺度でもあり,多様な環境によって種が支えられていることが分かった講座でした.
[しもすぎたかし]
リラックスして,熱心に話を聞かれていた.
熱心に語る内藤先生.
雪の中,地域の方たちが集まった.
止水域に生息する小型のサンショウウオ「カスミサンショウウオ」.
「内藤順一」タグアーカイブ
【イベント報告】ゴギの観察会(大朝)
曇り空の中,10名の参加者が大朝公民館に集合しました.ゴギの観察会は大朝地区では今回が初めてです.どんな観察会になるのかわくわくしながら,まずは室内で内藤先生からお話を聞きました.ゴギとは中国山地の源流に生息するイワナ類で,体に有する瞳大の白い斑紋が頭部まであるのが特長です.資料を見ながら,ゴギの発見,他のイワナ類との区別,名前の由来などのお話を聞きました.続いて,生息地域の様子や,産卵の様子をビデオに撮ってある映像を見ながら,詳しく解説していただきました.メスが産卵床を作るため,流れの淀むような場所を選び,尾びれを使って懸命に砂などを取り除いている場面があり,産卵の準備の様子が大変よくわかりました.オスとペアになってからも,産卵までに長い時間をかけるそうで,内藤先生の撮影は時には10時間にも及ぶと聞きました.そのご苦労のおかげで,産卵の映像も見ることができました.メスが産卵床に尻ビレを埋め込むようにして産卵し,オスがそれにあわせて放精します.オスが産卵を促すために何度も側に行っては離れ・・を繰り返していたのが印象的でした.メスは産卵が終わるとその周りを体をくねらせるようにして泳ぐ「舞の行動」が始まります.現地でもこの様子をみることができ,幸運でした.知識を得た後は,実際のゴギを観察にいきました.紅葉がピークを迎え,とても気持ちのいい空気の中,ゴギに出会うことができました.ゴギが生息できる環境は限られており,小渓流の中でも小さな淀みがあること,ゴギのえさとなる昆虫の棲む広葉樹の森が必要であることと教えていただきました.ゴギが生息していることは,生き物の多様性があるという証だとわかりました.参加者からの質問より,ゴギの寿命はほぼ4年であること,オスが川をパトロールしてメスを探すこと,産卵後オスは次のメスを探しにいくことなど,ゴギの生態を詳しく知ることができ,大変有意義な観察会となりました.「幻の魚ゴギ」といわれるゆえんにも触れることができました.
内藤先生のお話を資料を見ながらじっくりと聞く.
調査中の体験や苦労話など,内藤先生ならではのエピソードもあり興味深かった.
内藤先生作成の資料.種名の考察や地方名などがあげられておりおもしろい.
「あ,おるおる!」と静かに興奮.
そおっと観察.肉眼でも見えるくらい近く,観察にはぴったりの場所だった.
葉の色と似ていてわかりにくいが,ペアのゴギがいる.
寄り添うようにして泳ぐオスとメス.
ゴギの生息環境は小さな渓流で,小さな淀みがあるところ.
取材中のNHKの撮影クルーが水中カメラでゴギを撮影中.水中での様子がよくわかった.
最後にアンケートを実施.いつもご協力ありがとうございます.
【イベント報告】サツキマス保全の試み
毎年続けているサツキマスの産卵行動の観察会は,八幡振興会館での講義から始まりました.内藤先生が資料やプロジェクタを使ってサツキマスについての説明をされました.資料では,アマゴ,サクラマス,ビワマス,ゴギなど,サケ科魚類の分類がどのように整理されてきたのかについて,また広島県での人との関わりなど,丁寧に説明していただきました.その後,たくさんの写真やビデオを使って,様々な産卵のパターンや,産卵前後の行動について見せて頂きました.撮影の苦労話を交えての説明は,臨場感があって興味深いものでした. しっかりと知識を詰め込んだら,いよいよ現地に出発です.今年は観察をするだけでなく,堰に遮られて遡上できないサツキマスを捕獲し,堰より上流に上っていく手助けをする計画です.現地では内藤先生がウェットスーツを,補助の田村さんがウェーダーを着込み,川に入って網を設置していきます.陽射しがあるとはいえ,10月の柴木川は寒そうです.しかし,手伝うことはできないので,ここは見守るばかりです.網を下ろしてほどなく,サツキマスがかかり始めました.20匹以上は見えていたので,メスも4匹くらいは居るはずです.降湖するサツキマスの性比は,オス:メス=2:8だそうです.最終的には24匹を捕獲し,そのうち3匹がオスでした.捕獲した全てのサツキマスについて全長・体重・性別を記録した後,コンテナで堰より上流に運び,すぐに放流しました.放流したサツキマスはすぐに散らばって行きました.後日,見回りをされた内藤先生によると,数箇所で産卵した形跡があったということです.今回の作業をしたことで,サツキマスの産卵場所が分散され,先に産み落とされた卵が,後から来たメスによって掘り起こされる事態が避けられました.ただ,見学者からは「刺し網にかかった小さな魚もなんとか殺さないようにできないものか?」との声もあり,捕獲方法の検討もしていきたいと思います.本当は,堰に魚道が付けられたら良いんでしょうね. 今回は遠くから眺めるだけでなく,重さや長さも計測したので,しっかりと近くで観察できました.サツキマスの運搬にあたっては,八幡の河野文夫さんに軽トラックを貸して頂きました.ありがとうございました.[しらかわかつのぶ]
※サツキマスの捕獲は広島県の許可をとって実施しました.
現地に移動し,堰の下,サツキマスが溜まっているところで網を張る.
サツキマスのメス.今回は3匹.
【イベント報告】可愛川の水生生物観察会
夏休み中の観察会とあって,参加者30人と大人数での開催となりました.まずは千代田公民館で講義からスタートです.今回の講師,内藤先生より“オオサンショウウオについて”という資料をいただき,プロジェクターで映し出される映像を見ながら,日本にはどんな両生類がいるのか,中国地方に生息するサンショウウオの環境,オオサンショウウオの生態などを先生の経験を交えてお話いただきました.オオサンショウウオがどのようなものを食べているかという調査の結果を写真で見せていただきましたが,アユやウグイなどの魚類はもちろんのこと,ガムシやツチガエル,スジエビやアオダイショウ,カワガラスの羽,丸ごと一株の白菜まで出てきたと聞き,オオサンショウウオの貪欲性が大変よく分かりました. 1時間ほどの講義を終え,現地の可愛川の上官井堰(じょうかんいぜき)へ移動しました.天気が良く,川の水も気持ちがいいので参加者はざぶざぶと川へ入ります.水生生物の観察会ということで,子ども達は魚を捕まえ「これは何の魚?」と先生に質問を重ねていました.一方大人の参加者は両川岸のヨシの茂みをのぞき込み,オオサンショウウオを探します.しばらくすると見つかったようで.調査のために次々と浅瀬へ運ばれて来ました.大きいのも小さいのもいます.内藤先生がマーカーを使い,個体ごとのチェックを行います.その結果,今回見つけた13匹のうち,7匹は新しく見つかった個体ということがわかりました.オオサンショウウオをよく見ると,前足の指の数は4本で,後ろ足は5本です.指の形も水中で立っていられるように少し曲がり,支えられる形になっていることを新たに知りました.こうやってオオサンショウウオを詳しく観察できることは,オオサンショウウオが生息できる今の川の環境のおかげです.とても貴重な経験をしたことを嬉しく思い,夏の思い出がまた増えた観察会となりました.
内藤先生による講義の様子.
調査に使うマーカーやチップをみせていただく.
晴れていて気持ちのいい観察会日和.
早速観察モード.準備はいいかーい!?
内藤先生もオオサンショウウオ探しに向かう.
最初の一匹が到着.わりと小型の方かな?
ヨシのしげみの下を探す大人達.
オオサンショウウオと自分の手を比べると・・「指の数がおんなじだぁ」
「このあたりにいそう」とのぞきこむ内藤先生と参加者.
なかなか見ることのできないチャンスなのでじっと観察.
マーカーを使い,個体のチェックをする内藤先生.
うごきまわるオオサンショウウオ.けっこう素早い動き.
これは一番小さい個体だった.
もぐって魚を探すのが楽しい!
ユーモラスな顔つきのヨシノボリ.
調査後,オオサンショウウオをもとにいた場所に連れて行く.
水の中でうごめくオオサンショウウオ.
最後のまとめをする内藤先生.
【イベント報告】カワシンジュガイの観察会
フィールドに出る前に,まず芸北文化ホールで「カワシンジュガイの繁殖生態と保護」と題して,資料・パソコンを使っての講義がありました.カワシンジュガイの分布域や.氷河期の生残りで絶滅危惧種であること.北広島町の天然記念物であることの説明がありました.また.北広島町(旧芸北町)での発見と同定依頼の際の話や,保護・繁殖依頼により研究を続けられた経緯,ほ場整備後の河川の環境指導など,写真を見ながら興味深い話をたくさんしていただきました.発見当時から芸北でずっとカワシンジュガイに関わって来たということで近藤紘史理事長も参加していただいて,昔はこどもの頃から「立ちっ貝」といって川でたくさん見ていた話や,戦時中の食糧難の時代には,おいしくなかったけど食用にした話も聞きました.中国地方での分布・発見の経緯や現状,日本全国での調査研究・参考見学の話もおもしろく聞かせていただきました.実際に繁殖生態の解明や写真説明は個体数が少ない中で,長年の地道な研究で大変な御苦労があったのだろう事が想像されました.アブラボテと「相利共生」と考えられていたが,「片利共生」であったこと,アマゴのエラに4月から2ヶ月寄生してから川底での生活に移行すること,生息域の河川環境やアマゴの生息域,アマゴ解禁の影響などいろいろ考えさせられることの多い話でした.講義質問の終了後,現地へ移動して実際にカワシンジュガイとご対面です.川の水が「冷たい」と実感しながら,流れのある中央ではなく川の端の草の根元の方に意外と簡単にカワシンジュガイを見つけることができて,「ここにも」,「ここにも」,とみなさん大喜びです.周辺を泳いでいるアブラボテの雄の婚姻色を確認したり.カワムツの雄の婚姻色の赤色を観察しました.「久しぶりに見た」とサワガニを捕まえる人,箱眼鏡で水中をのぞきっぱなしの人,石に張り付いているプラナリアを観察する人と,みなさん講義・現地観察とも十分楽しまれたのではないでしょうか.
芸北文化ホールにて,講義の始まり.
カワシンジュガイとアブラボテ
「立ちっ貝」と呼ばれるいろいろな淡水二枚貝の紹介.
「ここらを探してみてください」と言われ懸命に探す参加者.
「いた,いた」とそぉっと観察.
アブラボテの雄の婚姻色.
きたひろネットによる水中撮影.
観察会終了後,内藤先生から補足説明があった.
カワシンジュガイが生息する 河川環境.