- 開催日時:2011年7月16日(土) 9:30
- 講師:上野吉雄
絶滅危惧種にも指定されているブッポウソウの観察会に10名が参加しました.今回の講師は上野先生と松田先生です.まずは会場内の研修室で,ブッポウソウについて講義を行いました.昔は,木製の電柱に営巣していたが,コンクリート製の電柱が増えて,巣を作れなくなっていること.ヒナ鳥には主にコガネムシなどの甲虫を与えるため,餌やりの回数は夕暮れ時が一番多いことなど,観察するだけでは分からないことも講義していただきました.
講義を終えて,フィールドに出て観察を始めることにしました.あらかじめ,何カ所か巣箱を設置しておいた場所のうちの,2カ所を観察することになりました.1カ所目は,人の行き来が多く,時々大きな音や声が響き渡る場所でした.上野先生によると「このような場所の方が,カラスやテンなどの天敵が,人を警戒して近寄って来ないため,かえって安全に子育てが出来る」と説明されました.しばらく観察していると,巣箱の中から何か出ているのが見えました.ヒナ鳥です.餌を催促するために入り口に近づいたのでした.親は,それをみると素早く入口まで飛んで行き,餌を与えてまた飛び立って行きました.あっと言う間の出来事でしたが,親からヒナ餌やりを見れた参加者からは歓声があがっていました.
続いて2カ所目に移動します.そこは,車の通りも少ない,静かな田園風景が広がっていました.また,巣箱は樹木ではなく,コンクリート製の電柱にかかっていました.実は,1カ所目でもそうだったのですが,そのことを先生達に聞いてみると「樹木より,電柱にかけた方が,天敵の1つであるヘビが登りにくい,これも安全に子育てをしてもらうための工夫の1つ」と解説されました.観察していると,突然「ピックィー,ピックィー」と高い鳴き声が聞こえました.周りを見渡してみると.枯れた松の木にサシバがとまっていました.「農薬散布や乾田化などで,カエルやそれを食べるヘビが少なくなっているため,それらを食べるサシバも減少してきている」と絶滅危惧種にまで指定されていることを教えていただきました.
巣箱に視線を戻すと,親鳥が餌を与えるために巣箱へと飛んで行きました.ですが,1カ所目と違い中に入ったまま出てきません.「雛鳥がまだ小さいため,餌を与えた後,抱きかかえている」との説明がありました.
今回の観察会を通して,人にとっては小さな生活の変化でも,他の生き物へ,大きな影響を与えているということを感じました.[ありみつまさかず]
みなさんの印象に残った物
「ブッポウソウが,高い山ではなくて,里山に来ること」「ブッポウソウの子育ての様子が見れたこと(2)」「ブッポウソウの飛ぶ姿」「ブッポウソウに会えたこと(3)」
参加したみなさんの感想(抜粋)
「人が横で活動していても,平気で巣に出入りするのに驚いた」「もう少し近くで見ることができたら最高です」「幅広いお話で概略もよく分かり,現地で実際に見れてよかったです」「きれいな青い色やサシバも見れてよかった」「ブッポウソウとサシバが生息出来る里山を体験できてよかった(2)」「人家に近い場所での巣箱に驚き!」
写真
ブッポウソウの営巣場所や保護活動について話をする上野先生.
続いて松田先生が教壇に.ヒナ鳥の餌の内容や時間帯について説明があった.
外に出て観察場所へと向かう.近くからは,人の活動する音が聞こえてくる.
電柱の上から辺りを見回すブッポウソウ.日に反射したきれいな青色の姿にくちばしの橙色が映える.
ヒナに餌を与える親鳥.一瞬の出来事だった.
場所を移して観察を再開.まずは親鳥を探す.
木の上にとまっているサシバ.ゆっくりと旋回しながら山の向こうへと飛んでいった.
巣箱の中へと入る親鳥.中でヒナを抱いていたため,再び飛び立つまでに時間がかかった.