- 開催日時:2013年3月9日(土) 10:00
- 講師:上野吉雄・暮町昌保・浄謙彰文・下杉孝
空は青く澄み渡り,雪もすっかり溶けて春の息吹が感じられる朝,北広島町川小田でブッポウソウの巣箱づくりが行われました.参加者は,西中国山地自然史研究会の有志6名です.
暮町先生より巣箱づくりを指導いただき,板や釘などの材料のほか,槌やのこぎり,電動のこぎりなど必要な工具一式も用意してくださいました.
参加者は予め用意された設計図を見ながら,巣箱づくりに取りかかりました.巣箱の底板の四隅を少しカットして雨水が入っても抜け落ちるようにしました.巣箱を架ける時に,おがくずを敷くとの説明がありました.約1時間半で予定していた11個の巣箱が完成.巣箱を前に記念写真を撮りました.
その後,上野先生より,ブッポウソウの生態について次のように説明がありました.
ブッポウソウは渡り鳥で,日本には4月下旬から5月の初旬にかけて特にボルネオ島を中心とする東南アジアからはるばる4,000Km飛来する夏鳥である.繁殖形態は卵生で5月から6月にかけて行なわれる.1回に4〜6個の卵を産み,抱卵日数は20日で孵化する.巣の中には貝殻,プルタブ,瀬戸物のかけらや小石などがある.この習性はヒナがこれらの堅いものを飲み込み,筋胃(消化器官の砂嚢)に入れておき,昆虫の堅い殻をすりつぶすために親鳥がヒナにこれらを与えている.ブッポウソウが巣箱の中で死んだ場合,骨と共に筋胃のみが残っていることからもその胃の強靱さが分かる.ちなみに,何万年も前,雑食恐竜. 獣脚類( じゅうきゃくるい )の一部には,堅いクチバシは持つものの歯の無い恐竜がおり,これが進化して鳥になったとも言われている.食性は動物食で主にトンボ類,セミ類,カゲロウ類,甲虫類などの昆虫類等だそうです.こうした昆虫類の多くなる季節にブッポウソウがやってくる.また,ブッポウソウの特色として,飛翔しながら獲物を捕食するいわゆるフライイングキャッチが見られる.
東南アジアから日本まで何を頼りにやってくるのかが謎だが,星座を見る本能が備わっており,星座を読みながら渡ってくると言われている.島々で羽根を休めながら,はるばる遠い距離を渡ってくる.雛鳥が飛翔するようになると9月頃親鳥が先に東南アジアを目指して飛んで行き,雛鳥は独力で渡っていく.
生息域内では平地から山地まで分布し,水辺近い森林に生息する.寺や宮などの大きな木の樹洞や木製の電柱等を利用することもあるが,近年電柱はコンクリート製や鋼管製に変わり,巣にする適当なものが無くなっているため,ブッポウソウの生息数が激減している(環境省レッドリスト絶滅危惧ⅠB類(EN)指定).絶滅に瀕しているブッポウソウの繁殖を手助けするため,私たちが巣箱作りをしている.
以上のようなお話を,参加者は熱心に聞き入りました.
作製した巣箱は,4月14日(日)に,川小田周辺や芸北地域内に架ける予定です.鋼管柱かコンクリート柱に架けます.
暮町先生の用意周到な準備により,効率的に巣箱づくりが進み,玄人はだしとはこのことだと目を見張るものがありました.長年の経験と智恵をフルに活かし,材料と時間の無駄を排除,ブッポウソウが健やかに育つよう配慮され,きれいに出来上がった巣箱に感嘆しました.
上野先生の知見による専門分野の話は,尽きることなく豊富で,楽しいものでした.ブッポウソウに本能として星座読む能力が備わっている話には,自然界の不思議さを感じずにはいられませんでした.
次回の巣箱架けに続いて,プリズム様の羽根で急降下する姿を見る日を楽しみにしています.(しもすぎたかし)
写真
上野先生も一緒に制作.
効率よく巣箱を作っていく.
出来具合を確認しながら作業する.
完成した巣箱と記念撮影.
しっかりとした出来具合に満足.