- 開催日時:2012年1月15日(日) 10:00
- 講師:上野吉雄
新年最初の観察会となる「冬を生きる動物達の生態」の観察会が実施されました.天候は曇りでしたが,高めの気温に弱い風と,歩きやすい一日になりました.高原の自然館に14名の方が集合し,講師である上野先生に今回の観察会のポイントなどを教わりました.今回は自然館の裏手から“おーいの丘”を通って千町原まで行き,道路に出て自然館の正面へと戻る,というコースを歩きます.雪の深さは60cmほどで,しばらく雪が降らなかったためか雪の上もしっかりとしていました,かんじきやスノーシューを履いて歩き始めるとすぐに痕跡を見つける事が出来ました.上野先生に見ていただくと,テンのものであることが分かりました.そのそばにはフンもあり,フンを見ると何を食べているのか知る事ができます,このテンは植物の実を食べていたことが分かりました.自然館の裏手を登っていくとウサギの痕跡を発見しました.後足と前足の跡がそれぞれ特徴的で,足跡を見ればどの方向に進んでいたか分かります.進んでいる方向には背の低い木があり,その枝には食痕がありました.ウサギが枝を食べるとその先が鋭く尖るため,すぐにウサギによるものだと分かるそうです.山道に入るとネズミの足跡を見つけました.上野先生は「足跡に混じって真ん中に一本,線が通っているのが分かる.これは長い尻尾が引きずられてついたもので,八幡の山に住む尻尾が長いネズミとなると,この足跡はアカネズミのものだろう」と話されました.アカネズミは木の根元の,雪が積もっていない場所に続いていて,昨晩はそこを寝床にしていたことがわかりました.冬に活動しているのは哺乳類だけではありません.雪の上でよく眼を凝らすと,トビムシの仲間が跳びはねているのが分かります.他には雪の上を歩き回るクロカワゲラの仲間や,ガガンボなどの小さな昆虫達を観察することができました.「食べ物が少ない冬だけど,そのかわり天敵も少なく,寒さなどに適応が出来れば以外と過ごしやすいのかもしれない」ということを昆虫達を眺めながら考えました.千町原を歩いているとどこからか鳥のさえずる声が聞こえてきました,辺りを見回してみるとツグミの群れを見つけました.「例年ならカラ類などの冬鳥がたくさんさえずっているが,今年の冬はそれが聞こえない.一昨年の猛暑で木の実ができず,その年の冬の豪雪と春の到来の遅さが重なって,木の実を主食とする冬鳥と留鳥が多く命を落とした.50年鳥の観察を続けているが,こんなに静かな冬山は初めて」と上野先生が話されました.じっと息を潜めて春を待つようなイメージがある冬ですが,実際は様々な生き物達が活動をし,またその痕跡をはっきりと見られ,生き物達の様子を理解しやすい季節であると感じた観察会でした[ありみつまさかず]
みなさんの印象に残った物
「うさぎが多いこと」「色々な足あとを見れた」「重歯目のウサギの鋭角の食痕,おしっこのあと.親ウサギは1.5m位飛んだ足跡」「鳥が非常に少なかった事.気候が大変影響する事だと思いました」「ネズミの足跡を見たこと」「テンの足が5本なのがわかりました(2)」
参加したみなさんの感想(抜粋)
「楽しかったけどつかれました」「楽しかった(3)」「テン,ウサギ,アカネズミ,ヤマドリ等の足跡の観察が良く出来た事」「鳥が一昨年の猛暑が原因で死んで,今日もほとんど見れなくて残念でした(2)」「1本の体操,頭の体操に良かったと思います」「下りがたのしかったです」
写真
雪に埋もれる山麓庵.屋根の雪が落ちて周囲に高く積もっている.
かんじきやスノーシュー,クロスカントリー用のスキー板と,雪の上を歩くための道具が勢揃いした.
ウサギの食痕.先端が鋭く斜めに尖っているのが特徴.
雪山を登る.途中では色々な生き物が活動している痕跡を発見できた.
八幡に自生する常緑樹の1つのエゾユズリハ.色々な生き物がその葉を食べる.
「おーいの丘」から千町原へと下る.スキー板の出番!
実を多数残しているツルウメモドキ.実を食べる野鳥が少ないためかこのような木があちこちで見つかった.
ヤマドリが舞い降りたあと.その足跡を辿ると,先ほどのツルウメモドキまで続いていた.
ヤマウサギの足跡.右の参加者の足元から,中央の上野先生までの距離を一足で跳んでいる.
雪の上を歩き回るカワゲラの仲間.
トレッキング終了後に感想を言い合う.