初夏の八幡高原。雨あがりの朝、歩いていると、葉のかげにひっそりとつぼみをつけたウリノキを見つけました。
それから数日後、同じ場所を訪ねると、美しい花が咲いていました。
今回は、そんなウリノキのつぼみと開花の様子をレポートします。
ウリノキは、湿った森の中や川沿いなどのやや暗い環境を好む落葉低木です。
6月ごろになると、葉の付け根から細長く白い花を咲かせます。
この日見つけたのは、まだつぼみの状態でした。葉のかげに隠れるようにして、静かに咲く準備をしているように見えました。
咲くと花びらは外側に巻きこみ、雄しべ雌しべがよく見えるようになります。
ウリノキの葉はとても特徴的で、掌(てのひら)を広げたような形をしています。
広い葉にへこみがあり、3つか5つに切れ込んで手のひらのように広がります。
食用のウリの葉に似ていることからウリノキと名付けられました。
この独特な葉の形は、ウリノキを見分けるときの大きな手がかりになります。
また、ウリノキの樹皮は、若いころは滑らかで薄い灰色をしていますが、成長すると縦に細かな割れ目が入り、少しざらついた質感になるそうです。
木の成長とともにその様子も変わっていくのが観察の楽しみですね。
それから3日後の朝、同じ場所を再び訪ねると、ウリノキの花が咲いていました。
ウリノキの花は細く巻いた花びらの奥に、長く突き出すようにおしべとめしべが垂れ下がっています。
その姿は七夕飾りのようにも見え、花全体が重力に逆らわずぶら下がるような構造になっています。
風にゆれるこの形には、受粉のしくみに関係する意味があるのかもしれません。
花は大きな葉の下に垂れ下がるように咲き、地面には落ちた花がいくつも見られました。
拾い上げて触ってみると、花びらのカールは思った以上にしっかりとしており、形が崩れにくいのも印象的でした。
白い花弁に、ほんのり黄色がアクセントとして入っており、楚々とした美しさがあります。
その造形はまるでアクセサリーのようで、自然の造形の巧みさに感嘆させられます。
花の下には鮮やかな緑の葉、そして雨上がりのやわらかな光。
そんな情景が広がっていました。この一瞬の美しさを、いつまでも見ていたくなる——そんな朝でした。
ウリノキの花は、ひっそりと咲き、知らなければ通り過ぎてしまいそうな存在です。
しかし、観察してみると、その生態や造形の一つひとつに驚きや発見があり、自然の奥深さを感じることができます。
次は果実の季節にいってみようかな。