【イベント報告】霧ヶ谷湿原のいきものハイキング

再生事業が進んでいる霧ヶ谷湿原で,いきものハイキングが行われました.夏らしい青空のもと,21名のみなさんと二川キャンプ場に集合しました.植物担当の和田先生,昆虫担当の岩見先生が今回のハイキングの案内役です.再生事業地の現在の状況を見たり,「いきもののつながり」を意識して観察しましょうということをふたりの先生がお話されました.それから霧ヶ谷湿原に向かって歩き始めました.
道路の脇には花が咲き,虫が飛んでいるので,目に付いたものからどんどん質問が出ます.最初の観察は,植物ではハンカイソウ,昆虫ではオナガアゲハだったように思います.少し遠い場所だったので双眼鏡で観察するとよく見えました.観察会には必需品ですね.昆虫が幼虫時にえさとする植物を「食草(しょくそう)というそうです.ヒメシジミはヨモギやマアザミを,スジグロシロチョウはハルザキヤマガラシを食草にしており,今回は幸運なことにスジグロシロチョウがハルザキヤマガラシの葉の裏に産みつけたばかりの卵を見ることができました.昆虫に詳しい参加者の方が,「メスが産卵場所を探しているときの独特の飛び方があるから,チョウを見ていれば産卵するかどうかわかる」というお話をされ,興味深く聞きました.そうしているうちに,すぐ目の前の葉を指さし,「あっ,また産んだ!」と言われるので,葉の裏を確認すると,卵がぽつんとひとつだけついていました.思ったより卵が小さくてびっくりしました.こんな風に実際に見ることができるのは,観察会ならではだなぁと嬉しく思いました.
また別の場所ではノアザミから吸蜜していたトラマルハナバチを観察しながら,岩見先生より,このハチの体のしくみを聞きました.トラマルハナバチは後ろ足に花粉かごと呼ばれる部分があり,そこに花粉をためて巣に持ってかえります.その時に体毛に付いた花粉が,植物の受粉にも役立っているそうです.花と虫が互いに利点があることがおもしろく,ここでもいきもののつながりを深く感じることができました.木の葉にいたマイマイガの幼虫や,きれいな色のアオクチブトカメムシ,花にとまって花粉を舐めるツマグロキンバエなど,身近に観察できる昆虫を見たり,再生地の水辺では希少種のトンボを2種類も見つけたりと,たくさんの昆虫を観察しました.ほんの一瞬でしたが「キョロ,キョロ・・」と鳴きながら飛ぶアカショウビンが登場したのも嬉しい出来事でした.
また和田先生からは,植物のお話の他にも,再生事業の工事方法や進行具合,変化が見られるようになった植生のことなど,具体的な説明がありました.再生事業の工事によって,この湿原の風景は大幅に変わりました.手法としては,ノイバラやハルガヤが生い茂る乾燥したやぶを切り開き,そこに水を廻すことによって,湿原化を図っています.去年の同じ時期と比べると,草丈の低い湿原が広がり,全く異なる風景になっています.また,早い段階からこの湿原の変化を見ている和田先生は,工事が終わって間もないのに,イの草原のようになっている部分が多いことに驚いていました.
実際に湿原の中を歩き,観察してみると,思った以上のたくさんのいきものが生息していることがわかりました.この湿原は工事も進み,これからも変化を続けることでしょう.どんな変化をするのか,不安もありますが,楽しみでもあります.みんなでこの霧が谷湿原を見守っていくことができればいいなと思ったハイキングでした.[こうのやよい]

岩見先生より,訂正および追加情報です.
「私がヒロシマサナエと言ったのは,ヒメサナエの間違いでした.ほかに保留しておいた種名は,マメハンミョウ(毒あり)とマイマイガでした.」

最初のあいさつをされる和田先生と岩見先生.植物と昆虫の組み合わせの観察会は毎年人気が高い.
最初のあいさつをされる和田先生と岩見先生.植物と昆虫の組み合わせの観察会は毎年人気が高い.
歩き進んでいくと,はみ(マムシ)を発見.その後アカショウビンが道路を横切るように飛んでゆき,参加者からは喜びの声があがった.
歩き進んでいくと,はみ(マムシ)を発見.その後アカショウビンが道路を横切るように飛んでゆき,参加者からは喜びの声があがった.
二川キャンプ場からしばらく歩き,ぱっと開けた場所にでたらそこが霧ヶ谷湿原.双眼鏡で鳥を見ているのかな!?
二川キャンプ場からしばらく歩き,ぱっと開けた場所にでたらそこが霧ヶ谷湿原.双眼鏡で鳥を見ているのかな!?
水辺を飛んでいたトンボの体のしくみや生息地について説明する岩見先生.参加者からは次々と質問があがったり,トンボの姿を熱心にカメラにおさめていた.
水辺を飛んでいたトンボの体のしくみや生息地について説明する岩見先生.参加者からは次々と質問があがったり,トンボの姿を熱心にカメラにおさめていた.
マメ科の植物クララの写真を撮る和田先生.覚え方は「くらくらクララ」だそう.
マメ科の植物クララの写真を撮る和田先生.覚え方は「くらくらクララ」だそう.
きれいな緑色のアオクチブトカメムシ.おそるおそる匂いをかいでみると,意外にも匂いはなかった.
きれいな緑色のアオクチブトカメムシ.おそるおそる匂いをかいでみると,意外にも匂いはなかった.
黒いスーツを着て赤いサングラスをかけたちょいワルな風貌のマメハンミョウ.体液にカンタリジンという毒を持っているので,要注意.
黒いスーツを着て赤いサングラスをかけたちょいワルな風貌のマメハンミョウ.体液にカンタリジンという毒を持っているので,要注意.
雅な名前のミヤコグサ.岩見先生に「脈根草(みゃっこんぐさ)」という別名がありますよ,と教えていただいた.
雅な名前のミヤコグサ.岩見先生に「脈根草(みゃっこんぐさ)」という別名がありますよ,と教えていただいた.
春先に黄色い花を咲かせるハルザキヤマガラシ.スジグロシロチョウの食草となる.霧ヶ谷湿原の中でたくさんみかけた.
春先に黄色い花を咲かせるハルザキヤマガラシ.スジグロシロチョウの食草となる.霧ヶ谷湿原の中でたくさんみかけた.
モリアオガエルのオタマジャクシかな!?ぷっくりした姿が可愛らしい.
モリアオガエルのオタマジャクシかな!?ぷっくりした姿が可愛らしい.
よぉーく見ると・・ハルザキヤマガラシの葉の裏にひとつだけ産みつけられたスジグロシロチョウの卵.成虫は幼虫にとってよさそうな葉を選ぶらしい.
よぉーく見ると・・ハルザキヤマガラシの葉の裏にひとつだけ産みつけられたスジグロシロチョウの卵.成虫は幼虫にとってよさそうな葉を選ぶらしい.
熱心にメモをとる参加者.さて今日はどんないきものが現れてくれるかな?と期待がふくらむ.
熱心にメモをとる参加者.さて今日はどんないきものが現れてくれるかな?と期待がふくらむ.
ハンノキの葉にとまる毛虫の説明をされる岩見先生.
ハンノキの葉にとまる毛虫の説明をされる岩見先生.
トンボを見つめて何思う??
トンボを見つめて何思う??